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第1回

燔祭 part1 (ケルダの手記)

 五年ぶりの再開

五年間ザラのもとで冒険者としての訓練を積み、私は帰ってきた、この懐かしのオールド・ライトに。思い返せば辛い日々だった。嘘をつかれたり、嘘をつかれたり、嘘をつかれたり…。だが、その嘘も無駄ではなかったと信じよう。私は冒険者として名をなし、あのパスファインダーになるのだ。
クインクさんの家の前で、他のみんなと再会した。一番変わっていたのは、アドレーだろうか。変な白い服を着て、頭をそっていた。あの昔変な青い家に住んでいた人と同じ修行を積んだらしい。ミリヒも頭をそって、入れ墨をしており、ショアンティ人らしくなっていた。デーブはすごく太って、凶暴そうな犬を連れていた。聞けばベジタリアンになったと言うが野菜だけでどうしてあんなに太れるのだろうか。ハワードはどうやら盗賊として修行を積んだらしい。同じにおいを感じる。まぁ、遺跡の罠は危険だから男の子のハワードに何とかしてもらうとしよう。ビガイラーの最初の教えは、自分の出来ることをひけらかさないことだからな。リリーは、どうやらウィザードの元でしっかりと修行を積んで魔法使いになったようだ。まぁ、魔法もリリーに任せておけばいいだろう。ああ、みんな便利になったなぁ…。
お互いの経験談など話していると、クインクさんが言った。
「君たち、立派な冒険者になったんだろう、空とか飛べたりするんだよね?」
すいません、飛べませんクインクさん。
幸い、師匠達がツッコミを入れてくれたのでその場は収まった。高いお金を投資したのは分かるが、あまり期待をされても困る。私たちはまだヒヨッコだからな。
その後、クインクさんに案内されていくと、なんと焼けたはずの(トービンナリアの魂に安らぎあれ)あの教会が建て直されていた。が、ここの再建費も我々持ちらしい。
家があるのはいいけれど、教会って街の人も礼拝するんだし…と思わなくはないが、もはや借金が大金過ぎてどうでもよくなってきた。
教会にはザンタスという新しいデズナの神官がやってきていた。そして、なんと今日はあのデズナの蝶々祭りらしい。クインクさんにすすめられて、祭りに行くことにした。…私を除いて。

 アゲハチョウの祭り

お祭りなどに興味はない。私は新しく覚えた隠し扉を見つける呪文を試したくて、チョッパーズアイルに行った。オールド・ライトへとつながる通路はあまり遠くには無いに違いない。この島は妙な位置にあり、なんとも怪しく見える。それに、ここはあのジャービスが住んでいた島。何もないわけは無いだろう。
…が、私の探索は失敗に終わった。うーん。
クインクさんの家に戻ると、なにやら町の方が騒がしい。喧噪と悲鳴が聞こえる。乱闘でも起こったのかな、と思ってクインクさんと話していると、扉がばたんと開いて、血だらけになったデーブを担いでみんなが入ってきた。
聞いてみると、こういう話のようだ。
みながアゲハチョウの祭りを楽しんでいると、アドレーが変な生き物が隠れていることに気がついた(ゴブリンは、攻撃してくるまでアドレーにしか見えないらしい)。カボチャのような頭の化け物だ。よく分からないが、アドレーはお祭りに来ているのかな、と思ったらしい。だが、その化け物は突然アドレー達に襲いかかってきた。噂に聞くゴブリンという化け物だったのだ。教会の二階の窓から見ていたリリー以外は、ゴブリン達と接敵して戦ったそうだ。ゴブリンは犬が嫌いらしく、デーブの犬を執拗に攻撃してきた。だが、逃げようとして殴り倒された仲間を見て笑い転げたり、地面に落ちていたミミズを拾って食べたり、戦っている最中にふざけまくっていたそうだ。ふざけていると言えば、リリーもスリープを一発撃った後、寝たやつにとどめを刺そうとして二階の窓から飛び降り、こけて頭を打って気絶したとか。これは大いにゴブリン達にウケ、まねをするやつが続出したと言うからまぁ結果としては良かったのか。
その後、歌を歌う鞭を持ったゴブリンを倒し、別の所で犬に襲いかかっている犬に乗ったゴブリン(正確には犬ではなくてゴブリンドッグと言うそうだが)と戦うことになったらしい。で、その周りに取り巻きゴブリンが4匹ほどいたのだが、デーブがその真ん中に突進して、果敢に戦うもついに倒れてしまったそうだ。しかも、ゴブリンは倒れたデーブをおもしろ半分に殴り、それでデーブは致命傷を受けてしまったらしい。怒った他のみんなによって残りのゴブリン共は倒され、襲われていた犬の持ち主も助かったが、デーブはもう息がなかった。それで、なんとかならないかとここに担ぎ込まれてきたというわけだ。
クインクさんは難しい顔をして、死んだ人を生き返らせる魔法があると教えてくれた。そして、師匠達のつてで、それを使える人を呼べるかもしれないと。正直言って信じられなかったが、5000gpでデーブが助かるなら、とお願いしてみることにした。
その翌々日、馬で偉そうな司祭様がやってきて、デーブの死体を前に一心に祈り始めた。

「ささやき、いのり、えいしょう、ねんじろ!」 --しっぱいしました。

司祭様が言うには、普通はこれで生き返るらしいが、デーブが生き返るのを拒んだらしい。正直言って、司祭の言が本当か嘘かは分からないが、とにかく、もうデーブが戻ってくることは無いのだろう。デーブの魂に安らぎあれ。
デーブの死体を埋めに森に行くと、マダム・ンバシティが一緒に来てくれた。そして、見慣れない背の高い男を紹介してくれた。彼の名はガムデーブの兄弟弟子らしい。そして、何か困ったことがあったらガムが協力してくれるように取りはからってくれた。ガムデーブとは違って、険しい感じのある男だったが、またゴブリン達の襲撃があるかもしれないことを考えると頼もしい。

 消えたダンナ

アドレー達はお祭りの時のゴブリン対峙の活躍で、町の有名人になっていた。おなかが空いていそうな顔をするだけで食べ物がもらえる。お財布が空いていそうな顔をしても、やっぱり食べ物がもらえるそうだ。ま、私は有名になるよりも、有名になった友人にたかるほうがいいな。名が売れるのには良い面と悪い面があるからな。
で、その悪い面がさっそく働いて、アメルさんという女の人がやっかいごとを持ち込んできた。なんでも、彼女の息子の部屋でアゲハチョウの祭り以後変な物音がするということで、彼女の旦那さんがそれを調べに行ったらしい。ところが、調べに部屋に入ったきり、綺麗さっぱり消えてしまったそうなのだ。
見たところ、彼女はあまり裕福そうではない。正直気は乗らなかったが、一人1gpで依頼を受け、彼女の家に向かった。
件の部屋に入ると、リリーがクローゼットの中から音がするのを聞きつけた(たしか)。で、不審に思ってそこを開けて奥を除くと、小さな、と行っても直径2フィート程度の穴が空いている。奥は暗くてよく見えないが、ミリヒが手を突っ込むと、なにかに触った。よく見ると、人間の足のようだ。…ここに、埋まってるのか?
いやな予感がした私は、空気読めないリリーがうかつな真実を言わないうちにアメルさんを部屋の外に連れ出し、旦那さんの話を詳しく聞くふりをして誤魔化した。で、その間にミリヒが引っ張ってみると、ビンゴというかなんというか、上半身が綺麗に骨になった男の死体が出てきた。
死体を見てちょっとみんなが硬直していた時、穴からゴブリンが一匹出てくるのをアドレーは見た。そこで、無言で扉の前まで行って、出口をふさぐ。仕方なしにゴブリンはアドレーに殴りかかったが、逆にアドレーに非致傷で殴られて、気絶してしまった。
アメルさんからロープを借りてゴブリンを縛り、私はゴブリン語でそいつに話しかけた。そいつの話を要約すると、こんな感じになる。

  • 俺はシスルトップのゴブリン
  • 祭りの時の襲撃でやってきた
  • 窓が開いていたのでこの家に入ったが、気がつくと閉まっていて出られなくなった。
  • そうこうしているうちに人が来たので、クローゼットの中で穴を掘って隠れた
  • 男がやってきて、襲われたので、穴の中に逃げ込んだら、男が追ってきた
  • 男は詰まって抜けなくなって、困った。でもおなかが空いてきたから、食えるところは食った
  • 今回の町の襲撃はすねの長いやつが企画した
  • そいつは神出鬼没
  • そいつがいろんなゴブリンの部族をまとめて指揮している

なんと、ゴブリンを指揮している奴らがいるのか。そいつを倒せば町への襲撃は完全に止められるかもしれないが、神出鬼没ではどうしようもない。
色々教えてくれたゴブリンは、森まで連れて行って処分した。いつまでも隠してはおれないので、アメルさんには真実を話して6gpもらった。
うーむ、この気持ちのやるせなさは1gpぽっちでは満たされん。冒険者とは死と隣り合わせの仕事であると理解はしていたが、己の命の危険ではなく、周りで死んでいく人間がいるというは辛いものだ。

 作戦会議

祭りのときに助けた自称「ほんの貴族」フォックスグローブ(この町とマグニマーの間あたりにある屋敷に住んでいるらしい)に鹿狩りに誘われたりもしたが、このゴブリンが活発になっている時勢に森へ行くとか何を言っているんだと断った。
で、我々がやったことはオールド・ライトの発掘!…まぁ、穴を掘っただけなんだが。クインクさん曰く「子供なら出来ないかもしれないが、大人なら何とかなるかもしれない」。先日の冒険者に対する期待のしようとは打って変わって我々のことを単純肉体労働者だと考え直したのだろうか。クインクさん、正直、我々に投資した額で人夫雇った方がいいと思いますよ。
それで日がな一日穴を掘っていると、シェリフのヘムロックがやってきた。
「君たちがゴブリン退治の英雄だね、話がある」
そう言われて行ったのは市役所のデブリンのところ。そこには昔にも会ったこのとある、森のゴブリンハンターがやってきていて、ゴブリンについていろいろ教えてくれた。名前はシェレルー。ゴブリンマニアらしいその人は熱狂的に語ってくれたが、私は正直バードクランチ族だろうが、セブントゥース族だろうが、どうでもいいと思う。あまつさえ、それぞれの部族のヒーローの名前とか、そんなこと調べてる暇あったら退治しろよと思った。
とにかく、我々は一応デブリンさんに雇われて、指示待ちと言うことになった。

 衝撃の再開

そんなある日、教会になんとかという宿屋の人がやってきた。この宿屋は、あのツトのお姉さんのアメイコが経営しているという宿だ。その人が言うには、お姉さんが突然いなくなってしまったらしい。しかも、なんとも不穏な手紙を持ってきた。(ハンドアウト1)
リリーハワードが読んで言うには、なんでもツトのお父さんがゴブリンを町に呼び寄せた人で、ツトはそのことをお姉さんに知らせようと手紙を書いたらしい。そして、夜ガラス工房で会おうとも。
お父さんは貴族で権力者なので、おおっぴらに行動するのは大変まずいような気がしたが、お姉さんが先走ってお父さんの所に行ったりしていれば、命にかかわるかもしれない。報酬も期待できそうだし、ガムの犬ににおいをかがせてお姉さんの後を追跡した。すると、ついた先はツト父のガラス工房。だが、今日はお休みのようで灯りはともっていない。煙は出ているので炉に火は入っているようだが…。
表は鍵がかかっていたので、中に誰かいないかぐるぐる見回っていると、ミリヒは誰かが中で動くのを見た。そこで表口をどんどん叩いて、「中に誰かいらっしゃいますよね、開けてください」と叫ぶと、扉が開いた。そしてそこから顔を出したのは、ツトだった。
とりあえず中に入ってツトと話をする。彼曰く、ツト父は狂っており、ツトの母を浮気を理由に殺してしまったらしい。そして、今回はなんの目的か分からないが、サンドポイントをゴブリンに襲撃させようとしているというのだ。それで、この町は危険だから、という理由でしきりに逃げることを勧めてくる。お姉さんのことを聞くと、お姉さんにも逃げるように勧めているのだが、頑固で言うことを聞いてくれないと言う。言っていることはまともなようだが、どうにも怪しい気もする。ツト父はこの町の権力者で土地も利権も持っているというのに、意味もなくゴブリンに襲撃させたりするだろうか。
ガムがしきりに逃げようぜなどと言う中、他のみんなはどうしようか悩んで沈黙していた。すると、リリーの耳が奥の方から聞こえる。か細い、高い声を聞きつける。リリーは、「私たちも依頼だからとにかくお姉さんに一目会わせてよ」と主張するが、ツトは承知しない。そこでガムが再び犬に追跡を命ずると、犬は奥の方へ向かってかけだしていった。そして、閉まっている扉をかりかりとひっかく。一緒について行ったリリーハワードが扉を開けると、そこにはロープで縛られたお姉さんが。あわてて私とミリヒツトもついて行くと、猿ぐつわを外されたお姉さんが叫んだ。
ツトを逃がさないで。あと、危ない!」
あと、って何?と思っていると、彼女の近くに寄っていたリリーハワード目掛けてゴブリンが3匹ずつ突進して飛びついてきた。何がしたいのだろうか。
他にも二匹ほど出てきて犬を殴りにかかる。お姉さんの言葉もあったし、ビガイラーの勘がツトは黒だと言っているので、「ツトごめん」といいながらカラースプレーでゴブリンごとツトを気絶させようとしたが、ツトは耐えやがった。畜生。その時犬も一緒に巻き込んだら、ガムが血走った目で寄ってきて怖かった。いつも自分はしかって蹴ったりしてるくせに、よくわからんな、ドルイドって奴らは。
で、他のゴブリン達を始末しているうちにツトは逃げてしまった。助け出したお姉さんから話を聞くと、どうやらツトこそゴブリンの襲撃を指揮している人物らしい(お父さんは近くで頭からガラスをかけられて人間ガラス細工になっているのが見つかった。ゴブリン達は、リリーとかも同じようにしたかったらしい)。
ミリヒは衝撃を受けていた。小さい頃ツトと仲良かったもんな。あんだけ探し回って、それで再会がこれじゃあ、ね。
だがしかし、衝撃はそれだけではなかった。ツトが残していったらしい手紙や地図、メモにはもっと恐ろしいことが示唆されていた。(ハンドアウト2)
まず、先日の襲撃はただのおとりだった。あの襲撃の真の目的は、教会からトービンの死体を運び出すことにあったらしい。しかも、あれはゴブリン軍のほんの一部にすぎないという。
また、ツトの彼女に関する記述があった。どうやら、ツトはその彼女の復讐を手伝っているだけだのようだ。その女はパズズの奥さんであるラマシュトゥという悪魔を信仰しており、何らかの儀式を行ってその手はおぞましいものに変化しているらしい(儀式が進んでサキュバスみたいにならないかな、などとのんきなことも書いてあった)。
そして、その力はアザミ岩で養父の死体を神に捧げることで手にしたという記述も見つかった。
トービンを養父とする人物、それは私たちの知る限り、ナリアお姉ちゃんしかない…。

 ガラス工房の地下へ

我々はショックで頭がもうろうとしながらも、とりあえずこの事態を伝えるため、ツト姉と一緒にデブリンの所へ向かった。ツトの持っていた地図などから検討して、我々がやれることは二つ。
一つ目は、ガラス工房の地下にある密輸業者のトンネルを探索に行くこと。どうやら、ここからも襲撃しようと考えているらしい。
もう一つは、例のアザミ野の岩の所に行ってみるということ。そこに行けば、おね…ナリアに会えるかもしれない。
結局、アザミ野は遠いと言うことで、とりあえず地下を偵察に行こう、という話になった。地図に書いてあったクアジット、という言葉を深く考えることもなく…。
とりあえずデブリンから前金100gpを貰って、買い物などをしてから地下に入った。すると、数百メートル自然洞窟のような通路が続いていた。そして、行き止まり。明らかに行き止まりな訳はないので、ちょっと探すと隠し扉が見つかった。その先に進むと、続く通路とは別に部屋のようなスペースが見える。アドレーがちょっと見に行くと、そこにいたのはなんとも表現しがたい不気味な生き物だった。毛のない血管の浮いた肌色の体、そしてその口は縦に割れている。
アドレーが警告を発し、ミリヒハワードが前に出てそいつは無事殴り倒された。爪二回と噛みつき攻撃をしてくるなかなかやっかいなやつのようだ。アドレーは先行偵察に行って今後も殴られることが予想されるので、おまじない、と偽ってメイジアーマーをかけた。
その先、分かれ道を右に進むと、自然洞窟ではなくて人の手が入った通路に変わり、そしてその先には祭壇らしい空間があった。ホーリーシンボルなどは無いのでなんなのかは分からなかったが、アドレーが「悪魔に決まっている」などと言って祭壇に供えられていた水をあたりにぶちまけたりしていた。イロリ信徒は過激なんだな。
そこには扉が一つあって、その先に進むと、暗くてよく分からないが、広い空間に出た。奥の方にプラットフォームがあって、その上にオレンジ色に光る何かが見える。アドレーがほいほいと奥に行ってみると、そこにあったのは三角形で、水がオレンジ色の泉だった。私がその魔法を調べたりしているうちに、アドレーはクォータースタッフをつっこんでいた。すると、クォータースタッフを通じて氷のツタのようなものがアドレーに到達し、アドレーはあわててスタッフを手放した。すると、宙から甲高い声がする。
「ナントカ様の神殿に足を踏み入れるとは罰当たりなやつらめ!」
声はすれでも姿は見えず、きょろきょろしていると、なんと先ほどの気持ち悪い化け物がアドレーを両脇から挟んで殴りかかっているではないか。どこに隠れていたんだ。一回噛まれてしまったアドレーは、怒りで顔を真っ赤にしていた。一応高いACで耐えているようだが、あと一回当たれば倒れそうだ。我々もプラットフォームの上に急いだ。
と、空中から小さな人のようなコウモリのような化け物が姿を現し、ミリヒに向かってペッとつばを吐いてきた。が、外れた。お返しにリリーがそいつにクロスボウを撃つ。その一撃は確かに化け物を貫いたかに見えたが、矢は貫通することなく、そのままずるずると抜け落ちた。傷ついている様子はない。その化け物は、「無駄だ、お前達は勝てない」と喚き、ナイフで手を切り、自分の血を一滴、オレンジ色の泉に垂らした。すると、なんとアドレーを挟んでいる化けものがもう一匹泉から這い出てきたのだ。驚くアドレーを脇にいた化け物が殴り、そしてアドレーはぱったりと倒れた。
もはやこれまで、とリリーが真っ先に逃げ出した。続くガム。アドレーは私の10フィート向こうで倒れている。まだ息はある。だが、私の目の前にはあの化け物がいた。
ごめん…、アドレー。私は泣きそうになるのをこらえ、逃げ出した。その後コウモリのような化け物にコーズフィアーを撃たれ、怖くなって、その後のことは良く覚えていない。だが、気がつくと私は他のみんなと一緒にガラス工房にいた。

 新しい仲間

疲労困憊していた我々は、一応デブリンに報告した後、教会に戻って眠った。
夢で、私はアドレーと一緒にまた殺人鬼に出会っていた。殺人鬼が我々の方に手を置くと、肩が真っ赤に染まった。そしてアドレーの方を見ると、肩だけではなく、来ている白い服全身が真っ赤に染まっている。そして殺人鬼の顔は、あの不気味な化け物の顔になっているのだった…。
翌朝は、みんなふさぎ込んでいた。いつもと変わらないのは、ガムリリーくらいだろうか。とにかく、あのコウモリのような生き物とオレンジ色の泉をどうにかしなければならないと言うことで、クインクと、リリーの師匠エルメランの所に相談に行った。エルメラン曰く、コウモリ化け物はクアジットと言って、悪魔らしい。なんでも、冷たい鉄と呼ばれる特殊な金属か、パラディンが長い年月使い込んだ武器でなければ倒せないらしい。と言われても、この町にはそんなものは無い。
また、あのオレンジ色の泉は、あのタッシリオンの遺物で、ルーンウェルと言うらしい。ディテクトマジックでエヴォケーションだったことを報告したら、怒りのルーンウェルだと言われた。怒りのルーンウェルからは、怒りのシンスポーン(Sin Spawn)が生み出されるらしい。ウェルにはチャージがあって、怒りを持った人間が死ぬとチャージが貯まり、スポーンが生み出されたり、アドレーがやったように生き物が触れたりするとチャージが減るそうだ。とりあえず、ネズミをたくさん捕まえてきてウェルに放り込む案などが出されたが、果たしてそれでよいのだろうか。
色々悩んでいると、デブリンが剣士風の身なりの人物を連れてきた。彼はたまたまこの町に逗留していた傭兵で、我々同様雇われたらしい。アドレーの代わりになるわけではないが、一人でも戦力は欲しい。次は彼を連れてガラス工房地下へ向かうことにしよう。
…この一週間は本当に辛かった。ゴブリンの襲撃、デーブとの別れ、抜けられなくなったアメルの亭主、ツトと、それにナリアのなれの果て、そしてアドレー。私は冒険者というのはもっと楽しい仕事かと思っていた。遺跡に行って、危険な目には会うけれど、化け物を倒して、宝を手に入れて…。だが、現実は甘くは無いようだ。果たして、これから先私はどれだけ冒険者を続けられるのだろうか。そしてどれだけの死に出会うのだろうか。
でも、私にはタッシロンの遺跡を発掘してパスファインダーになるという夢がある。この夢と借金がある限り、私は冒険者を続けるだろう。