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第十一回

空目島沖海戦に神風が吹いた


 船団集め

Isle of Black Towerから帰ってきたカミカゼ海賊団の一行は、いよいよ迫りつつあるハリガンとの決戦に向けて戦力の拡充を図ろうとしていた。
バハンガはIsle of Black Towerで傘下となったアイガーのもとを訪れ、カミカゼ船長の偉大さを吹き込んで忠誠心を高めようとした。彼が率いる帆船3隻は貴重な戦力なのだ。もっともその効果の程はどのくらいあったかわからなかったが。そもそもアイガーは完全に下についたつもりはなく、むしろ同格の同盟のつもりでいたようだし。
一方、カミカゼのもとにベスマラ神官のサンダラから提案があった。彼女の伝手でベスマラ神殿の船団を借りれるかもしれないということだ。どうもベスマラ神殿は傭兵のようなことをしているらしく、十分な報酬さえ払えば味方になってくれるらしい。サンダラには今までも散々助けられてきたカミカゼだ。一も二もなくその言葉を信用すると、必要なだけ予算を出すようにフレアに命じたのだった。
 
さて、後は自分たちで船を買って戦力を集めるしかないと考えていたカミカゼのもとに一人の客人が訪れた。客人の名はチャンブロス。海賊情報に詳しいネリネによれば、彼はヘルハーバーの領主、エンディミオンの御座船であるキラヌスのファーストメイトである。かなりの大物だ。そんな人物がわざわざ訪ねてくるとは、カミカゼ海賊団も偉くなったものである。
チャンブロスの用件は1つ。エンディミオンがカミカゼ船長に会いたいということだった。
エンディミオンと言えば、元シェリアックスの軍人でありながら、艦隊ごと脱走して海賊になり、ヘルハーバーを占拠して領主になったという曰くつきの人物である。表立ってはシェリアックスと敵対しているが、実際には裏でつながっているのでは?という噂は絶えたことがない。シェリアックスの大攻勢が予想される現在、最も注意が必要と目される人物である。テッサの指示でシェリアックスのスパイを調査しているカミカゼ海賊団としては、ホイホイと会うのはちょっと躊躇われる相手であった。
とは言え、ここで誘いを断ったら、我々はあなたを疑っていますと言ったも同然だし、そもそも逃げたように思われるのは癪である。会う以外の選択肢はなかった。心づけも受取っちゃったしな。
さて、実際にエンディミオンと会うと、内心はどうあれ大変に友好的だった。
彼曰く、自分がシェリアックスのスパイとして疑われているのは知っているが、それは事実無根で、自分とシェリアックスは不倶戴天の敵同士だと言うことだった。まあ、そりゃそう言うわな。ところが、彼の悪い噂を流している者たちがいて、人々の目を本当の裏切者からそらしているのだという。その連中は大胆不敵にもエンディミオンのおひざ元、ヘルハーバーでエンディミオンをディスるような内容の演劇を公演しているらしい。無論、エンディミオンの権力を使えば、その劇を禁止することはたやすい。しかし、それではまるでエンディミオンにとって都合の悪い内容だと自ら認めるようなもの。ここぞとばかりに噂が広がるだろうと。
要するに、カミカゼ海賊団にその劇団をつぶしてほしいようだった。無論、はっきりと口にはしなかったが。もし、残念なことにその劇が中止されるようなことになったら、エンディミオン麾下の船団を1つ、カミカゼ海賊団に出向させることも吝かではないという。
無論、目の前に餌をぶら下げられたら食いつかずにはいられないのがカミカゼ海賊団である。当然のように仕事を引き受けたのだった。あ、もちろん、はっきり口に出したりしてないけどね。
 

 ヘルハーバーにて

その後、さっそくヘルハーバーに向かったカミカゼ海賊団。港に着くとまずはDivinationで調査という慎重派のフレアとヴァンリートをよそに、とりあえず行動あるのみとカミカゼバハンガホブノブの3人は問題の劇場へ向かってしまった。劇場と言っても買い取った酒場を改造したものであったが、劇はかなり人気があるらしく結構な観客が入っている。劇の内容はありふれた冒険ものだったが、敵役があからさまにエンディミオンを模しているなど、ちょっと露骨なぐらいであった。
そんな中3人は持ち込んだ酒を飲んだり、ヤジを飛ばしたり、果ては爆睡するなど悪い意味で目立ちまくり、劇団側に思い切り存在をアピールしたのだった。役者は明らかにこちらを睨んでおり、おそらくこちらの正体も見破ったと思われた。
さて、ケンカを売って満足したカミカゼバハンガはそのまま船に戻ることにしたが、ホブノブはもう少し様子を伺っていくことにした。Invisibilityをかけて再び劇場に引き返すホブノブ。中に入っていくとおそらく控室として使っているのだろう部屋から声が聞こえる。こっそり中をのぞき込むとそこでは3人の人物が話をしていた。
そのうち2人は先ほどの劇に出演していた人間の男と女だったが、最後の1人は人間ではなかった。体つきは人間とほぼ同じだが、体が半ば透けており、骨や内臓が見えている。クラゲのようだ。ホブノブにはわからなかったが、どうやらOutsiderらしい。
3人はInvisiを見破ることはできないようで、ホブノブにはまだ気が付いていない。しばらく聞いていると彼らはカミカゼが何しに来たのか話し合っているようだ。ただ、さほど重要視はしていないらしく、まあ、邪魔になるようなら始末しようという結論になった。
そこで、何を思ったかホブノブは3人に声をかけた。何かの交渉をするつもりだったのかもしれないが、それは甘い考えだった。3人は一瞬で戦闘態勢にうつると有無を言わさず攻撃を開始したのだ。
 
まずは人間の女性からGlitterdustが飛ぶ。なんとか目つぶしは避けたものの姿が現れてしまったホブノブを、更にDominate Personが襲う。しかしこれもなんとか耐え、ケープ・オブ・マウンティバンクの力を使って何とか逃げ出すのに成功したのだった。
 
急いで船まで逃げたホブノブは見聞きしたことをある事ない事報告した。特に連中がカミカゼ海賊団を軽視していた部分は大袈裟に。いきなり攻撃してくるような奴は悪人なので、カミカゼ海賊団を利用してぶっつぶすのはホブノブ的ジャスティスなのだ。
案の定、思考がヤの付く職業に近いカミカゼバハンガが、面子を傷つけられたと激昂し、すぐさまカチコミをかけることに決定する。一行は引き連れていった部下たちに人払いをさせた後、おら、てめぇらカミカゼ海賊団なめてんじゃねぇぞ、と劇場に突入したのであった。どうみてもヤ○○である。
劇団員の3人は援軍としてバーブド・デヴィルを呼び出しており、更にエレメンタルを呼び出したりして抵抗したものの、主砲フレアから乱射されるMiximized Acidballの力押しに押し切られて倒れたのだった。いやー、あれは敵に回したくないわー。
その後、劇場内を漁ったところ、多少の財宝と多数の偽造書類や計画書が見つかった。計画書によるとエンディミオンに疑いをかけることでシャックルズ内に不和をまく事になっており、エンディイオンに不利な証拠をねつ造する計画などがいろいろ書かれていた。正直、ここまで都合よくエンディミオンの無実を示す証拠が出てくるのは都合良すぎる気がしなくもないが、あんまり深く探るのはめんどくさいのでとりあえず信じておくことになった。念のため役者を船に連れて行って尋問したものの、どうも大した事を話してくれないようだったので、面倒になって始末した。
 
その後、カミカゼ達はエンディミオンの居城に向かい、何食わぬ顔で「どうやら劇場で何か騒ぎがあったようですな」などとのたまった。すると迎えに出てきたチャンブロスは負けず劣らず何食わぬ顔で「それは大変なことだ。ところで現場で火災など起こっていませんでしたかな?もしそんな事になっていると犯人捜しはまず不可能ですからな。」と言ったのだった。
それを聞いたフレアは「ちょっと確認してきます」と言って出ていき、何度かの爆発音の後で戻ってくると、「残念ながら火災によって現場は滅茶苦茶になっていました」と報告した。それを聞いたチャンブロスとカミカゼ海賊団は「それは残念だなぁ。犯人は一体誰なんだろう」と口々に言いあった。
その後、カミカゼはエンディミオンと会談し、ウォーシップ5隻を借り受ける約束と、ハリガンに反目したロッドグラムという海賊がDagon's Jawと呼ばれる難所に潜んでいるらしいという情報を得たのだった。
 

 Dagon's Jawにて

一行は協議の結果ロッドグラムがハリガンと反目しているのであれば、味方につけられるかもしれないということでDagon's Jawに行ってみることにした。Dagon's Jawというのは有名な難所で、近くを通る船が何隻も遭難しているらしい。珍しく慎重になったカミカゼ海賊団は、まずはフレアのPrying Eyesで偵察することにした。Dagon's Jawは大小2つの島で構成されており、見ようによっては何かの顎に見えなくもない。とりあえずPrying Eyesで見つかったもので目ぼしいものは4つ。神秘的な泉、謎の石像、難民キャンプのような集落、そして水生生物っぽい人型種族が多数と難破船らしき船が詰まった洞窟である。よく分からないが、難破船を根城にしている状況からみて、あの怪しげな水生生物どもがここを難所にしている可能性は大だ。先手を打って危険になりそうな水生生物どもをつぶそうかという案もあったが、結局はもっともロッドグラムと接触できそうなキャンプに行ってみることになった。
難民キャンプは崖の上にあって船で行くのは難しそうだったので、近くまで行った後、魔法で空を飛んで近づくことにした。これならもし敵対的な連中が居ても有利に戦えるし。
 
さて、難民キャンプの上空にやってくると、それを見た連中がテントから出てきてこちらを指さしている。人数は10人ぐらい。みな、海賊風の格好をしているが、服はかなりくたびれており、いかにも難民という感じだ。
その中から一人の女性が進み出て、こちらに声をかけてきた。「貴様達、何者だ。命が惜しければおとなしく降伏して我々に船を明け渡せ!」
あんまりな要求に唖然とする一行。海賊たちは一応クロスボウを取り出してきて構えているようだが、控えめに言っても彼我の戦力差は圧倒的に思える。この状況で上から発言をかますとは、その胆力はある意味大したものだ。
目的はロッドグラムの情報を得ることなので、なんとか彼らの態度を軟化させなければいけない。どうしたものかと思っていると、いつもながらトリガーのやたらと軽い主砲様が動いた。いきなりFireballをぶっ放してテントの一つを吹き飛ばしたのだ。面倒なのでとっとと力の差を分からせて土下座させようと思ったようだ。しかし、これは逆効果だったようで、むしろ破れかぶれの反撃に出ようとする海賊達。しかし、当然空を飛ぶ手段もなく、バハンガのかけたFickle Windsの効果でクロスボウも通用しない。彼らの勝ち目は0に等しいのだが…。
あわや虐殺かという場面を収めたのはカミカゼだった。冷静に自分たちがハリガンと敵対するものであることを告げると、海賊達は話を聞く気になったようだ。どうやらこちらをハリガンの手の者と思い込んでいたらしい。
彼らの話では、彼らはロッドグラムの部下だったが、ハリガンに追われてDagon's Jawまで逃げてきたところで謎の水生生物に襲われてあえなく沈没。ロッドグラムは殺されて、今はアリスという女性がまとめ役をやっているということだった。襲ってきた水生生物というのは、やはり例の洞窟にいた連中のようだ。
ロッドグラムが既に死んでいた事に落胆するも、アリスの話では彼がハリガンの弱点などをメモしていた手帳があり、今は水生生物に奪われてしまったという。それがあればハリガンと闘う時の参考になるかもしれない。どの道、連中がガメたであろう難破船の財宝を狙って奴らのねぐらを襲撃するつもりだった一行は、ついでに手帳も探すことにしたのだった。
そうと決まれば善は急げ。さっそく連中の洞窟を襲撃することにする。アリスから聞いた話から推測するに、連中はアンデッドの一種で、やつらに殺されたものもまたアンデッドになってしまう恐ろしい相手らしい。となれば数で押すのは愚策。部下達は船に残し、少数精鋭でWater Walkをかけて突入することにした。
突入してみると噂の海アンデッドが10体弱に加えて、連中にアンデッド化されたと思しき死体がこれまた10体程とかなりの数だった。当然ここは主砲様の出番かと思われたが、海アンデッドのほうには呪文抵抗があり、呪文抵抗が苦手な主砲様が思ったより猛威を振るわない。とは言え、特にこれといった特殊攻撃も持たない海アンデッド達には空からFireballを撃ちまくる主砲を何とかする手段があるはずもなく、結局は攻撃魔法の嵐できれいさっぱり片づけられたのだった。
その後、洞窟内を探索したところ、目当ての財宝や積み荷のほかに、思わぬ収穫があった。ここに浮かんでいた船の損傷は思ったほど大きくなく、修理さえすればまだ十分に使えそうな船が4隻もあったのである。艦隊結成のために船を必要としていたカミカゼ海賊団に取ってはありがたい話だった。なお、この船4隻は後にアリスが指揮する事になった。
また、ロッドグラムが残したメモも無事見つかった。その中身の大半はハリガンに対する愚痴や妄言の類で何の役にも立たなかったが、ハリガンのアジトへの侵入経路だけは何かの役に立ちそうだった。
 
これでここに来た目的は果たしたわけだが、フレアの主張により謎の石像も調べていくことにした。最近忘れ去られかけていた遺跡探検家の血が騒いだらしい。
石像に近づくとテレパシーで警告が来る。どうも近づくなと言っているらしいが当然無視して近づいていく。すると石像の中から機械仕掛けの人間のようなものが出てきた。イネヴィタブルである。こいつは高いACとDRを持ち、Enervation, Vampiric Touch と言った疑似呪文能力を使いこなす強敵だったが、その力を発揮する間もなく、ネリネの唱えたHold Monsterで麻痺したところを討ち取られた。ネリネはこのOutsiderの魂を食らって宝石に変えてしまった。自慢げに見せびらかしていたが、他の者たちはドン引きだった。
結局石像を調べても強力な魔法の力を持っていることぐらいしかわからず、諦めて島を去ることにした。万が一、またイネヴィタブルが出てきたら面倒だし。
 

 空目島沖海戦

カミカゼ海賊団がDagon's JawからIsle of Empty Eyesに帰ると、既にDagon's Jaw攻略の噂は広まっており、多数の船乗りが海賊団に加わろうと詰めかけてきていた。彼らは直ちに迎え入れられ、Dagon's Jawで手に入れた4隻の帆船や、ホブノブが自腹で購入した帆船の乗組員として編成された。一方、古参の水夫達は、Singing Storm号を旗艦にヘルハーバーで購入した帆船4隻で構成された親衛艦隊に集中的に配置された。
戦力はそれだけではない。キャプテン・アイガー率いる3隻の帆船に、ヘルハーバーから派遣されてきた5隻の軍船。サンダラも首尾よくベスマラ神殿から5隻の軍船を借り出してきていた。また、思わぬ援軍もあった。かつてSinging Storm号の船出を祝ってくれたキャプテン・メリルが4隻の帆船を率いて駆けつけてきてくれたのだ。そう言えばメリルはハリガンが好きではないみたいなこと言ってたなぁ。まあ、思惑はどうあれ、援軍は大歓迎だ。
こうして、寄せ集めとは言え、6船団、27隻もの船がズラリと並ぶのは、まことに壮観であった。わずか数か月前には海賊船の下っ端としてMr.プラッグに虐められていたことを思えば、とんでもないスピード出世である。何人もの海賊がその尻馬に乗ろうと押し寄せるのも無理はない。
 
さて、こうしてハリガンとの戦いの準備も十分に整ったある日、ついにハリガンの艦隊がIsle of Empty Eyesに襲来した。船団は4つと少ないが、その分1つの船団を構成する船の数はこちらより多い。軍艦6隻で編成された船団が2つと帆船8隻から構成された船団が2つ。船の数では28隻と向こうが上である。ここが正念場である。カミカゼ海賊団の各船団は次々と出航した。カミカゼが後方にとどまることを嫌ったため、全体の指揮を執るのは航海術に優れたバハンガである。それ以外のメンバーはそれぞれが連絡役兼指揮官として各船団に分散配置されている。
 
戦いが始まると、たちまち寄せ集めであるカミカゼ艦隊の弱点が露呈した。お互いの連携ができておらず、明らかに兵の練度でハリガン艦隊に劣っていたのである。各船団に散った幹部達の叱咤激励により何とか渡り合うも、そんなものは長続きしない。徐々に押し込まれていく。
それだけではない。艦隊の主力として期待していたヘルハーバー海軍が、わずかな損傷を機にさっさと後退してしまったのである。元々忠誠心は期待していなかったが、ここまで露骨に被害を避けられるといっそ天晴と言いたくなる程である。
苦境はまだまだ続く。カミカゼ艦隊の油断をついて、魔法で姿を隠していた伏兵が不意を衝いて突撃してきたのである。この攻撃をまともに受けたアイガー船団は、一矢も報いることなく壊滅してしまったのであった。
こうして練度戦略で負け、数の上でも大きく劣勢となったカミカゼ艦隊だったが、それでも諦めずに戦い続けた。一隻、また一隻と轟沈する中、必死の反撃で敵船を撃破していく。なかでもカミカゼが直接指揮する親衛船団のしぶとさは特筆ものであった。普通なら疾うに逃げ出しているような被害を受けているというのに、最前線で狂ったように闘い続けるカミカゼに引きずられたのか、水夫達まで満身創痍で突撃を繰り返す様は、まるで恐怖を知らないゾンビを相手にしているようなものだった。
とは言え、そうそう奇跡は起きない。ハリガン艦隊の多数を道連れにしたものの、ついにカミカゼの乗るSinging Storm号ただ一隻を残してカミカゼ艦隊は壊滅してしまった。一方のハリガン艦隊も損害は大きいとはいえ、いまだ最強戦力である軍艦6隻が残っている。6対1。絶望的な戦力差である。後方のバハンガが慌てて逃げ支度をしているところ、Singing Storm号が動き出した。敵艦隊に向かって。もはや無謀というのも言葉が足りまい。単なる自殺行為である。誰もがカミカゼは屈辱の撤退より名誉ある戦死を選んだのだと思った。
だが、その時奇跡が起こった。カミカゼの死をも恐れぬ突撃に臆病風を吹かせたハリガン艦隊の何人かが口にしてしまったのだ。すなわち、敵将カミカゼは不死身の男だという巷の噂を。無論、それは単に噂に尾鰭がついただけのなのだが、カミカゼ艦の死をも恐れぬ突撃を説明するには偶々都合がよかったのである。迷信深い海賊達は、結局不死身のカミカゼというただの噂に恐れをなし、算を乱して逃走してしまったのである。誰もが予想だにしなかった結末であった。
 
なぜ敵が急に撤退していったのかさっぱりわからず唖然としたカミカゼ海賊団であったが、とりあえず生き残ったと言う事で集結した。と言ってももはや海に浮かんでいるのはSinging Storm号と旗艦として後方に控えていたDancing Flame号の2隻だけだったが。
と、そこに撤退していくほかの船を尻目にSinging Storm号に向かってくる船がある。ハリガン艦隊の旗艦であった、今となっては懐かしいと言えなくもない、因縁のWormwood号である。ついにハリガンと決戦かと思いきや、その船首で仁王立ちしているのは、ハリガンの腹心であり、砲手長であるWizardのリアリスである。まあ、これだけの艦隊を率いて負けて帰っては、彼女の立場はないのであろう。だが、同情する余裕はこちらにもない。奇跡的に拾った勝利をここで逃すわけにはいかないのだ。
船が接近するまでの時間にお互いに強化呪文を掛け合い、ついにこの日最後の戦いの幕が開いた。だが、戦いはあっけなく幕を下ろすことになった。リアリスの恐るべきPrismatic Sprayの洗礼を浴びたものの、これに耐えたカミカゼ海賊団は、ネリネが高笑いとともに放ったFeeblemindで見事にリアリスを無力化。戦力の要たるリアリスを失ったハリガン側に勝ち目はなく、全員、壮絶な戦死を遂げたのであった。
こうして、後に空目島沖海戦と呼ばれる戦いは、カミカゼ艦隊奇跡の勝利で幕を閉じたのであった。
 

 ハリガンの砦へ

なんとか海戦に勝利したものの、肝心のハリガンはまだ健在である。このままでは枕を高くして眠ることができない。とにかくハリガンが体勢を立て直す前に、こちらから逆襲に出る必要があると言う事で皆の意見は一致していた。
作戦はこうである。まず拿捕したハリガン艦隊の船を使ってハリガン艦隊に偽装し、ハリガンの砦に近づく。この偽装艦隊が砦の気を引いている間に、精鋭部隊がロッドグラムのメモにあった隠し洞窟をたどって砦に潜入。邪悪な魔術でリアリスの体を乗っ取って若返ったネリネを先頭に敵をごまかしながらハリガンを直接襲撃する。ハリガンを倒し、ハリガン艦隊の敗北を知れば、ハリガンの部下の戦意はくじけ、最小限の苦労で勝利を手にすることができるだろう。
 
そんなわけで、拿捕したハリガン艦の応急修理と偽装が完了次第出撃することになった。例によってカミカゼが自分で突入部隊を率いると言い張ったので、艦隊の指揮はサンダラに任されることになった。Telepathic Bondでサンダラとの連絡手段を確保した後、Water WalkとInvisibiity Sphearを駆使してこっそりと目的の洞窟に向かう一行。果たしてロッドグラムのメモの通りの洞窟があった。サンダラに攻撃開始の合図を送り、洞窟に侵入する。海上では偽装を解いた艦隊が砦の気を引くべく威嚇射撃を開始する。
作戦は順調かに見えたが、ここで大きな誤算が発生した。
いざという時の脱出路であるはずのこの洞窟。実はまったく安全ではなかったのである。洞窟は少し進むと広くなっており、そこに岩に擬態した超巨大イソギンチャクが住み着いていたのであった。
イソギンチャクは自分の捕食範囲に入ってきた餌をとらえるべくいそいそと動き出し、まったく擬態に気が付いていなかった一行の不意を衝いてヴァンリートを捕えるとあっさりと呑み込んでしまった。無論、この超巨体である。ヴァンリート一人で満足するわけもなく、残りのメンバーにも次々と触手が襲い掛かる。せっかく念願の若い体を乗っ取ったというのに、ネリネの新しい体はあっさりと死んでしまった。フレアとホブノブはDimension Doorで触手の範囲外に逃げ出したものの、そこには超大型海サソリが待ち構えており、イソギンチャクのおこぼれを狙って襲い掛かってきたのだった。
しかし、2人が空を飛んで壁から離れてしまえば海サソリになすすべはなく、超巨大イソギンチャクもホブノブのSlowで動きが鈍ったところを総攻撃して、何とか倒したのであった。
 
思わぬところでリソースを消費してしまったが、こんな事で止まっているわけにはいかない。少しだけ休憩をとった一行は先に進むことにした。ネリネは死んだと思いきや、使い魔の怪しいボール状生物(カコデーモン)の中に魂を移して健在らしい。なんとか新しい体を乗っ取ることができれば、とか気色悪いことを言っている。皆、いろいろと葛藤があったようだが、とりあえずなるべく関わり合いにならない方向にしたようだった。
どうやら天井に砦に続く穴があるようだ。Flyなどを使用して次々と穴をくぐる一行。しかし、ここで第二の誤算があった。なんと、穴の外には普通に見張りがいたのである。おい、ロッドグラム。肝心なことに限って書き忘れてんじゃねーよ!
ロッドグラムが生きていれば思い知らせてやるのだが、とりあえず今は目の前の見張りを何とかするしかない。この見張り達、なぜこんな暇そうな場所に配置されているのかよく分からないのだが、全員がそこそこのレベルのClericだった。あ、むしろ強いからこんな楽そうな部署を独占していたのかもしれない。
とにかく、敵4人からConfusion x4が飛び、戦線はあっという間にグダグダになった。何しろ突入した6人中4人が混乱してしまったのだ。なんとか耐えたのはカミカゼバハンガだけだった。混乱した4人はフレアとヴァンリートが殺し合い、ホブノブは何か変なことを呟いている。ネリネに至ってはどうやら自傷したいようなのだが、カコデーモンには自分を傷つける腕も口もないので、しかたなく壁に体当たりしている有様だ。
その上、次々と増援のClericが出てくる。そのうち1人はちょっと偉そうで二刀流の女だった。しかも剣士かと思いきやいきなりバハンガにHarmをかける。その戦闘スタイルでClericかよ!しかし、Harm後のQuicken Inflict Moderate Woundsにかろうじて耐えたバハンガは、女神官に二刀流で攻撃されながらも呪文やChannelで粘り、二刀流ペナルティのせいで案の定結構外した女神官の攻撃に耐え続けた。その間にカミカゼと事前に呼び出してあったSpiritual Allyが地道にダメージを与えていった。女神官は最後には敵とみなされることを覚悟でConfusionしている連中も巻き込んでFlame Strikeで逆転を狙ったものの、結局誰も倒せず、その後の集中攻撃で倒れたのであった。
 
正直、もう帰りたいぐらい消耗してしまったカミカゼ一行であったが、ここで帰っては折角高まったカミカゼ海賊団の名声も地に墜ちる。傷を癒した一行は再びハリガンの居室を目指すのであった。