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第五回

タイド・ウォーター・ロックの攻防


 ブラッドコーブ脱出

カミカゼ海賊団はブラッドコーブに滞在して次の目的地を物色していた。と言ってもまじめに情報収集をしていたのはごく一部のまじめな人だけで、大半のメンバーは毎日飲み歩いたり、怪しい薬を作ったりとろくに役に立っていなかったのだが。
それで結局ホブノブが収集してきた情報に従って南のセンガー港に向かうことに決定。ホブノブが言うには、その女海賊は最近頭角を現してきている海賊で、カミカゼ海賊団が踏み台にするには都合がいいということ。本拠地は良く分かっていないが、最近、南の方で目撃されたらしい(もっとも、この目撃情報は一行を振り回すためのホブノブの嘘なのだが)。
 
じゃあ、そろそろ出港しようかという雰囲気になったところで、手下の一人が血相変えて飛び込んできた。
曰く、港の方にシェリアックスの大型軍艦がやってきたらしい。連中は港の中で海賊狩りをすることも厭わない物騒な連中だ。その絶大な武力を背景にしているので誰も文句が言えない。
カミカゼ海賊団はまだまだ駆け出しの取るに足らない存在だが、見逃してもらえる保証はない。君子危うきに近づかず、三十六計逃げるにしかずとも言う。即刻逃げ出すことに決定した。
しかし、ただ逃げ出すのも難しい。今のところ、連中はカミカゼ海賊団に気づいていないようだが、出港する時にはすぐ傍を通らねばならず、その時に気づかれる恐れは高い。
そこで、一行は一計を案じた。
偶然にもAspis連合の麻薬貿易船もブラッドコーブに停泊していたので、これの情報をシェリアックスにタレこむ事にしたのだった。連中はAspis連合とも折り合いが悪いから、そうなればおそらく麻薬貿易船の検挙に乗り出すに違いない。その騒ぎに乗じてひっそりと逃げ出すという計画だ。
 
密告役を買って出たのはバハンガだった。辻説法を装ってシェリアックスの兵隊に接触する事に成功した。というか、怪しいおっさんがウロウロしてたので職質を受けたのだが。
最初は怪しまれていたものの、そこを口先三寸でうまく丸め込み、やや強引に麻薬船の情報を密告する事に成功。情報を信じたシェリアックス兵はあわただしく活動を開始し、それを見届けたバハンガはいつの間にか姿を消していたのだった。
 
こうして、計画はうまくいき、Singing Storm号は無事にブラッドコーブを後にすることに成功した。ただ、Aspis連合のお膝元で連合の船を売ったのはやはり良くなかったらしく、一行はAspis連合に睨まれてしまった。しかし、一行は楽天的というか将来のことを考えない人ばかりだったので、あまり気にしていなかった。

 

 伝説の幽霊捕鯨船

Singing Storm号はセンガー港に向かって順調に南下していた。
しかし、ある晩、ヴァンリートが見張りにたっていた夜、不思議な事が起こった。真夜中に怪しい船を発見したのだが、ほんの少し目を放した隙にすっと消えてしまったのだ。遠くてよく見えなかったが、雰囲気もいかにも、という感じでなんとも不吉な予感がする出来事だった。
一行の願いをよそに事態はますます悪化した。翌日フレアが当直をしていたとき、船を怪しげな霧が包んだのだ。そして霧の向こうから重々しい鐘の音が近づいてきて、霧の中から突然船が現れた。その船体はひどく痛んでおり、その甲板で蠢く人影もおそらくは生きてはいまい。いわゆる幽霊船という奴か。幸い船はしばらくたつと霧の中に消えていってしまったが、その時、船名が見えた。「デス・ネル」号というらしい。
 
フィッシュガッツが言うには「デス・ネル」号というのは昔の伝説的な捕鯨船で、鯨を追い駆けて無理な航海を行い、食糧不足とか反乱とかいろいろ会った挙句、鯨にぶつかって沈没するという締まらない結末を迎えたらしい。まあ、その辺りはどうでもいいが、伝説では「デス・ネル」号は獲物と定めた船にまずは姿を見せておびえさせた後、3日目に襲い掛かってくるらしい。つまり、今晩襲い掛かってくるという事か。まったく厄介な話だ。
 
あんなどこからともなく現れる超常存在相手に逃げ切るのは現実的ではないので、準備万端整えて迎え撃つ事にする。煌々とかがり火を焚き、船員総出で臨戦態勢で待ち構える。
果たして、夜になると再び怪しげな霧が辺りを覆い、「デス・ネル」号が襲い掛かってきたのだった。
戦いはカミカゼ海賊団が優勢に進めた。ひときわやばそうだった敵の船長はホブノブの挑発に乗ってホブノブを執拗に狙うものの、ホブノブはのらりくらりとその攻撃をかわす。その間に雑魚アンデッドをバハンガのチャネル・エナジーが蹴散らし、ちょっと手ごわい連中はヴァンリートとカミカゼが協力して一体ずつ潰していった。
一方、敵船長はフレアの魔法によりゴリゴリと体力を削られ、部下がいなくなるのとほぼ同時に2度目の死を向かえたのだった。
ちなみに、ネリネ婆さんは「アンデッド相手なんてどうしろってんだい」と不貞腐れて船室で寝ていた。
 
結局、水夫達に数人の犠牲は出たものの、思ったよりも少ない被害で幽霊船の撃退に成功し、あまつさえ幽霊船からお宝も頂戴できた一行は割りとホクホク顔だった。

 

 タイド・ウォーター・ロックへ

その後は何事もなくセンガー港についた一行は女海賊イザベラの情報を求めたが、さっぱり情報は集まらなかった。まあ、目撃情報はホブノブの出まかせなので当たり前ではある。
どうしたものかと思っていると、再びホブノブが情報を持ってきた。
今度は「デス・ネル」号から持ち出してきた積荷を整理していた時に手紙入りの小瓶を発見したというのだ。
その中にはタイド・ウォーター・ロックの主アガスタからの助けを求める手紙が入っており、無事助け出した暁には褒美は望みのままらしい(褒美の部分はホブノブの捏造だったが)。
正直言って怪しい事この上ないが、ちょうどやる事もないし、もともとタイド・ウォーター・ロックには関心があったので、とりあえず行ってみることになった。
どうも戦いがまっていそうなので兵力補充に水夫を集めに行ったバハンガが、そのまま酒盛りに突入して応募用紙をなくして帰ってくるなど一悶着はあったものの、いつものように真面目なヴァンリートやカミカゼがフォローして、なんとか出港したのだった。
 
今回は特に何事もなくタイドウォーター・ロックに到着した。タイドウォーター・ロックは非常に小さい上、起伏のほとんどない島で、中央にちょっとした砦があり、あとは申し訳程度に港らしきものがくっついているだけだった。なんか、もっとファンタジックなものを想像していた者はちょっぴりがっかりした。
しかし、近づいていくとどうも様子がおかしい。人の気配がしない。やむを得ず上陸したものの、やはり港には人がいないようだ。しかたないので砦に行ってみることにする。
砦に近づいてもやはり人の気配はしない。見たところ荒れ果てているわけでもなく、既に放棄されたという感じではないが……
しかし、そこは海賊的思考を発揮し、誰も使っていないなら俺達がもらってもいいじゃん、というわけで中に押し入る事に。
カミカゼの蹴り一発で頑丈そうな扉が吹き飛ぶ。そこで先客と目があった。
鱗に覆われた体に異様に大きな頭部。ぎょろりとした魚のような目。そこにいたのはサハギンであった。
サハギン達は「イントルーダー!」と叫び、有無を言わさず戦闘が始まったものの、カミカゼやヴァンリートが突入してバキバキなぐるとあっさりとけりがついた。
 
どうやらこの砦はサハギンに占拠されているらしい。アガスタの手紙は本当だったのか。手遅れだったらお宝は全部俺達のものだなーとか不謹慎な事を考えつつ奥へと進む一行。砦の中は狭いため、部下達は外で待機させておくことに。いつもの人海戦術が使えないのは若干不安だがやむを得まい。
とちゅう、梯子の上で待ち伏せしていたサハギンをネリネばあさんのサモン・スウォームで排除したり、ガードルームに潜んでいたサハギン達を次々とカミカゼが殴り倒したりしつつどんどん進む。サハギンはやはり地上では調子が出ないのかなんとも手ごたえがない。
 
更に進んでいくとなにやらこれ以上ないぐらい露出度の高い姉ちゃんがいた。つうか、露出しかないというか。なんとも怪しいものの一応人間っぽいので話しかけてみると、自分がアガスタだと言う。助けてくれた御礼をするからついて来いとか何とか。
完全に目が泳いでいるし明らかに怪しい。どうしたものかと逡巡していると敵に先手を取られた。
そこらに隠れていたサハギンたちが奇襲してきたのだ。サハギン達は突然変異なのか腕が4本あり4回攻撃してくる凶悪な連中だった。ネリネがボコられてぶっ倒れたものの、フレアのカラースプレーをくらった4本腕サハギンたちがばたばたと昏倒し、形勢は逆転した。
結局、そのままカミカゼ海賊団が押し切り、なぞの裸姉ちゃんは捕虜となった。どうもこの姉ちゃんも突然変異のサハギンで、どういうわけかエルフの姿をしているものの、中身は完全にサハギンらしい。なぜかこの姉ちゃんを気に入ったらしきネリネがこのまま連れて行くと主張し、なんか水中活動とか得意そうだし手下にしたら便利じゃね?という意見もあったため、なんとなくそのまま連れて行くことになった。ネリネは早速麻薬を注射して中毒患者にしようとしていたが、他の連中は見てみぬ振りをした。あんまり関わりあいたくなかったのだ。
 
その後、最後の部屋で砦を預かるボスサハギンも撃破。これにて砦内のサハギンの駆逐に成功した。
砦内を捜索すると、今度こそ本物のアガスタとその家臣が捕まっているのを発見、解放する事に。
アガスタは非常に感謝したが、まだ問題は解決していないとの事。今は留守にしているが、今晩にもサハギン達を従えている女海賊イザベラが戻ってくるという。イザベラは強力な雷の魔法の使い手で、まともに戦ってはどれほど被害が出るか分からない。
ちょっぴり怖気づいた一行からは、お宝を全部持って逃げるという案も出たが、アガスタは先祖伝来のこの砦を守らないといけないと言い張る。結局、もともとイザベラを倒して名を売る目的で来たのだから、とイザベラと一戦交える事になった。

 女海賊イザベラ

しかし、イザベラと一戦交えるといってもまともに正面からぶつかるような殊勝な奴は一行の中にはいない。騎士様じゃあるまいし、海賊が正々堂々戦う義理などないのだ。
一行はイザベラは上陸後、砦に向かうと想定して、逆に海岸に潜んでおく事にした。もちろん、Singing Storm号を見られてはバレバレなので、部下に命じて遠くに隠れさせておく。これでイザベラが部下を砦に派遣すれば、手薄になったところを強襲し、もし、自分で砦に向かうようであれば、砦に残ったアガスタ達と挟撃する作戦だった。
 
はたして夜になると2隻のボートに乗ったイザベラとその一味がやってきた。人数はかなり多い。こちらも部下の水夫達を潜ませているが、まとめて相手するとなると厄介な事になりそうだ。
一行が息を潜めていると、ボートで来た人間達とは別に海中から次々とサハギン達が上陸して来た。そう言えば手を組んでいるんだった。ますます増えた敵にだんだん顔が青くなって来る一行。しかも、サハギン達の鋭い嗅覚にあえなく発見されてしまい、そのまま戦闘になだれ込んでしまったのだった。
 
戦端はまず先行して上陸していたサハギンとの間で開かれた。ホブノブカミカゼ、ヴァンリートが部下の水夫達を率いてサハギンに襲い掛かりそのまま戦線を構築する。
一方、フレア、ネリネの魔法使い勢は側面に展開し、魔法による攻撃を試みる。更に暗闇の中から太い矢が飛来する。砦のアガスタ達がバリスタで援護射撃をしているのだ。バリスタは思った以上に効果を発揮し、次々とイザベラ配下の海賊を射抜き、イザベラにもクリーンヒットを与える事に成功した。
ここまで優勢に見えたが、ここでイザベラが動いた。お得意のライトニングがほとばしる。その威力はなんと9d6!!。カミカゼ海賊団の誰もが一撃で昇天しかねない威力だ。
狙われたカミカゼはかろうじてよける事に成功したものの、あおりを食った部下達や、巻き込まれたイザベラの部下が次々と黒焦げになる。一行に戦慄が走る。
そこで我らが船長カミカゼは、とにかくあのイザベラを何とかしなければいけないと決意した。イザベラの部下達がライトニングに巻き込まれないように横に寄ったのを好機とばかり一直線にイザベラに向かう。慌ててイザベラを護ろうと駆けつける海賊達を、Singing Storm号の水夫達が食い止めているうちにカミカゼはイザベラと接近戦に持ち込む事に成功したのだ。
この日のカミカゼは神がかっていた。
再び放たれたライトニングをまたも紙一重でかわし、次々と重い拳を打ち込んでいく。慌てふためいたイザベラがFlyで空に逃げることに思い至った時には既に遅く、満身創痍だったイザベラはフレアのMagic Missileで止めを刺されたのだった。
 
こうして一行はタイドウォーター・ロックを支配下におさめた。アガスタはここに残って領主を続けるのかと思いきや、実は海賊にあこがれていたとかでカミカゼ海賊団に加わった。
いつの間にかサハギン娘もヤク漬けにされてネリネの手下になっており、だんだん、海賊団もにぎやかになっていくのだった。
なお、イザベラは噂どおりその背中に宝の地図を刺青していた。カミカゼ海賊団の次の行動はこの地図を元に宝を探しにいくことに決定したのだった。