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第7回

マグニマー・パスファインダーロッジ宛
ルーン・シーカーズのケルダです。今回の冒険の原稿を送ります。こういうのを書くのは初めてなので、()書きでいろいろコメントをつけています。どうか校正をお願いします。

 ルーン・シーカーズの受難 第七話:恐怖の鬼鈎 第一稿


ルーン・シーカーズのメンバー
ミリヒ:ショアンティのバーバリアンで、優しくも気丈で勇敢な娘。
ファロン:エルフの魔法戦士。華麗な剣捌きと魔術で敵を圧倒する。(不潔なことは伏せておいたほうが売れますよね?)
リリーデズナの熱心な信徒で回復の技にも長けているが、実は魔法少女でもある。今回はマスコットを手に入れるが…。(この人も性格など問題あるので脚色してます)
ハワード:パーティーの二枚目。偵察や罠の解除などを引き受ける、縁の下の力持ち。
ガム:クールなドルイド。いつもは冷たい反応ばかりだが、その心は正義と森を愛する心で燃えている。
ケルダ:この物語の書き手にして、魔法の使い手。巧妙な呪いで状況を打開する。

〜前回までのおさらい〜

マグニマーの市長から依頼を受けたルーン・シーカーズは、有名なレンジャー部隊、ブラックアローに起きた異変を確認するため、タートルバック・フェリーに来ていた。
町の近くに住むオーガ・キンからブラックアローのレンジャー達を助けた一行は、ブラックアローがオーガの群れに襲われ、壊滅状態にあることを知ったのだった…。

1.チャム・ザ・フェアリー

我々はオーガ・キンの家で、これからどうするかを相談していた。一度タートル・バック・フェリーに帰るか、ブラックアローの砦に行ってみるか。ブラックアロー副隊長のデイル・テムロスが言うには、砦の裏に秘密の武器庫があって、そこから砦の地下へと道が続いているらしい。そして、その武器庫であれば休息を取っても安全なようだ。雨に濡れながら野営をする必要が無さそうなので、このまま砦に向かうと言うことで皆の意見は一致した。
そんな相談をしていた時、シャルが叫んだ。
「あ、なんかいる!」
見ると、シャルの頭の上が不自然にへこんでいる。そこで私は透明なものたちを見る呪文を唱えた。
そこにいたのは、小さな小さな人間だった。これが噂に聞く妖精というやつであろうか。その妖精は空中でなぜか蛙跳びをしている(本当はもっと気持ち悪い感じだったのですが、まぁそういう描写はいらないですよね)。
「あなたは誰ですか?」と尋ねると、そいつは「チャム」と名乗った。
チャムの要領を得ない話をまとめるとこうだ。チャムはブラックアローの隊長であるラマタールを、森の女王の命で探しているらしい。だが、チャムには人間の区別が余りつかないため、よく分からないそうだ。
それなら、と言うことで協力を申し出ると、一緒についてくるということになった。
ところでリリーは、前々から魔法少女のたしなみの一つであるマスコットが欲しかった。そこで、このかわいらしい妖精にお願いしてみる。
「あなた、私のマスコットにならない?」
すると、チャムはリリーの信仰を聞いてくる。デズナだと答えると、なにやら喜んで、いいかも、などと言っている。そしてさらに、
「女王から守ってくれるか?」と聞いてきた。なんでも森の女王は大変に機嫌が悪く、もしラマタールが死んでしまうと、女王が怒って危ないので、それから守って欲しいと言うことらしい。リリーはそのことを請負い、ついに念願のマスコットを手に入れた。
ところで、このチャムはなかなか強力で様々な魔法を使いこなす妖精なのだが、まだリリーのことを認めていないのか、全然言うことを聞いてくれないのであった。

2.秘密の武器庫へ

レンジャー達に先導して貰って雨の中を歩くこと5時間、「5〜時間で5回(ランダムエンカウンターを)振る〜」という恐ろしい童謡を思い出したりしながらも、無事砦までつくことが出来た。時刻はもう夕方だった。
砦を遠巻きに観察していると、巨大な人型の生き物がたくさん出てきた。オーガだ。
全部で15匹もいただろうか、それぞれオーガフックや杭、金槌などを持っている。レンジャー達が言うには、彼らが向かったのは上流のダム、スカルズクロッシングのようだ。何をしに行ったのだろうか。
かなりの数が出ていったので、砦は空になったかもしれないと思っていたが、どうやら攻めてきたオーガは50人くらい、いくらかはレンジャー達に倒されたかもしれないが、まだ中にも結構な数が残っていそうだ。
そこで、範囲透明化のまじないをかけ、こっそり砦の裏に回ることにした。レンジャー達は最初は疑わしそうだったが、オーガがこちらに気がつかないことに驚き、私を賞賛の眼差しで見るのだった。
雨音に助けられ、無事見つからずに砦の裏、堀につながる小さな川の水源までやってきた。ここには崖の上から水が小さな滝となって落ちてきており、砦の水補給場所らしい。が、そこは酷い有様だった。レンジャーやオーガ達の死体が泉に放り込まれ、滝の下まで歩いていけるような死体の道が造られていたのだ。あまりに凄惨な光景にチャムはぽつりと「かわいそう…」と言った(本当はわりと明るく「かわいそう、へへ」って言ったんですけどね。さすがに脚色しました)。
埋めてあげたかったが、そのようなことをする時間も余裕もなく、彼らをそのままにして我々はロープで崖を少し登り、ついに秘密の武器庫へたどり着いた。
武器庫はオーガ達に気がつかれなかったようで、奴らが入った形跡はない。入ってすぐのところにはロングソードやロングボウがたくさん置いてある。デイルは矢の入った樽をいくつかあさり、油布に大事そうに包まれた数本の矢を取り出した。
「これは隊長の魔法の矢で、これを射かけられるとだいたいのやつは死んでしまうんだ」とデイルは言う。矢の先は稲妻のような形になっており、調べると確かに魔法がかかっていた。これは、とりあえずファロンが借り受けることになった。
武器庫には奥へ続く道が2つと、隠し扉が一つあった。隠し扉のほうは、崖の岩だなにある見張り所に続いているらしい。ハワードがこっそりと確認してきて、外を徘徊するオーガは3、4人だということを突き止めてきた。
残る二つの道は、洞窟内にあるレンジャー達の墓所と、砦地下につながっているらしい。まだ数回の戦いしかこなしておらず元気だった我々は、地下から砦を急襲することにした。
洞窟の道をレンジャー達を先頭にずんずんと歩いていると、岩陰に何匹もの目の赤いピ○チュウのようなトカゲが隠れているのを見つけた。デイルが、
「刺激すると危ない。静かに通るんだ」と指示したので、ガム以外は一人ずつトカゲの脇をそろそろと通り抜ける。だが、ガムはドルイドの能力を生かしてトカゲたちに話しかけた。
「よう」
「ヨウヨウヨウヨウヨウヨウヨウ…」一斉にしゃべるトカゲ。
「お前達のボスは誰なんだ?」
すると、一匹のトカゲが前に出てきた。
「オレダ」
「俺はガムって言うんだ。仲良くやろうぜ」
「ジャアナンカクイモノクレ」
そこで、ガムは干し肉を一切れ投げてやる。むしゃむしゃと食うトカゲボス。
「ウマイ!モットクレ」
そこで今度は、秘伝のドルイド団子を与えてみる。むしゃむしゃと食うトカゲボス。
「アンマリウマクナイ!モットクレナイト、オマエノニクヲタベチャウゾ…?」
ガムがどん欲な奴だなぁと言いつつ何切れかの干し肉を与えると、物陰からたくさんのトカゲ出てきて、肉に群がり始めた。その隙に抜け出すガム
ファロンによれば、赤い目のトカゲはショッカーリザードといって、電気を放つ危険なトカゲらしい。無事回避できて良かったということか。
ショッカーリザード達を通り過ぎると、そこには扉があった。この向こうが砦の地下につながっているらしい…。

3.ランニック砦の虐殺

扉の向こうは、地下牢獄だった。ここには普段捕まえたオーガやオーガキンを入れておくのだが、今は誰もいない。人が捕らえられている形跡もなかった。もっとも、牢獄の床にある乾いた血溜まりが何を意味しているかは明らかだった。
ここの扉は、砦側からは隠し扉になっているので、オーガ達を襲った後またここに戻ってくることにする。砦の通路は大人数で歩くには少し狭いらしいので、レンジャー達にはここで待っていてもらうことにした。
上の階に行き、私はインヴィジビリティ・スフィアを再び唱えた。透明のままオーガ達の不意を突く作戦だ。呪文は長くは保たないので、適当に端から扉を開けることにする。そして、最初に開けた扉の向こうには、巨大な人間がいた。
…いや、あれはオーガだ。だが、オーガにしては身なりがまともで、化け物というよりただの大きな人間に見える。だがしかし、そいつが開いた扉を不審に思ってこちらを向くと、やはり化け物であることが明らかになった。なんと、顔の半分が刃物か何かでそぎ落とされているのだ。歯の一部がむき出しになっており、酷い顔になっている。だがしかし、オーガが作業していた何かはもっと酷いものだった。何かのオブジェのように見えたそれは、よくよく見ると手足を切り落とされた人間の死体だった。腹をさばかれ、そこに切り取った手足を突っ込んである。(グロ表現は受けないですかね?マグニマーだったらけっこう受けそうですけど)
怒りに燃えたファロンが、透明状態からオーガに攻撃を仕掛けた。すると透明化の魔法は解け、オーガはファロンに気がつく。続いてハワードがオーガに急所攻撃を仕掛けるも外れる。そして、オーガは脇にあった巨大なオーガ・フックをつかみ、ファロンに斬りかかった。ばっさりと大きな傷が口を開け、痛みにうめくファロン。他のメンバー攻撃を仕掛けるが、あまり利いている様子はない。
一度下がったファロンガムが癒すが、今度はそのガムにオーガフックが振り下ろされた。…そして、その力のこもった一撃はガムを袈裟懸けに切り下ろし、さらに、傷口から抜く時に鈎になった部分で腹を切り裂いた。ばったりと倒れるガム。その体は半分に切り開かれ、内臓が飛び散っている(やっぱりグロ禁止ですかね…)。恐るべき破壊力!オーガフックは当たり所が悪ければ致命的なダメージを与える武器のようだ。
仲間を殺されたファロンは、その怒りを力に変えて、普段はうまく使うことの出来ないクイック・キャストを試みる。これによってトゥルー・ストライクを唱えたファロンは、全力で剣をたたきつけ、ようやく顔のそがれた見た目の良いオーガは動かなくなった。
が、その時、通路の向こうから他のオーガ達がやってくる。このオーガが持っているのはただの棍棒であり、体格も先ほどの奴よりは貧弱だ。これはやれる、と思ったミリヒファロンは通路に立ちふさがった。リリーと私の呪文で力を奪われたオーガの攻撃は、先ほどの化け物とは比べものにならないほど弱かった。すかさずミリヒファロンが攻撃し、オーガはよろよろとよろけている。
と、後ろから「邪魔だ、どけ」という声がし、オーガの頭に棍棒がたたきつけられた。倒れ込むオーガ、そして、その向こうからやってきたのは、先ほどのオーガに勝るとも劣らぬ体格で、オーガフックを持っている。その攻撃はやはり強力で、ミリヒファロンは苦痛に顔をゆがめている。残念ながら私の目つぶしの呪文も残っておらず、もはや退却かと皆でちらちらと目線をやり取りしていたその時、オーガは目の前のファロンを無視し、手を伸ばして後ろにいたリリーを殴った。ルーン・シーカーズの中で最も繊細なリリーはこの攻撃に耐えられず、力なく地面に倒れた。その白い(本当は黒ですが)ローブは真っ赤に染まっている。
私は霧を出す呪文を唱え、ファロンミリヒもうまくオーガから抜け出した。ハワードは先にガムの死体を抱えて後退しており、さらにリリーの体も持っていってくれた。こうして、2人の仲間が命を失い、我々はオーガ2体を倒したのみで意気消沈して洞窟へと逃げ帰った。

4.ブラックアローの影

墓地に続く道には奈落があり、橋が架かっているらしい。橋は不安定なので、その奥なら万一隠し扉が見つかってもオーガは襲ってこないだろうとデイルが言うので、とりあえずそこで休憩することにした。オーガに比べれば、墓地で寝ることくらいどうってことはない。
墓地で2つの死体を前に我々が途方に暮れていると、チャムが言った。
「女王様にお願いしてみたら、この人たちを生き返らせてくれるかも」
妖精だったらそういうこともあるかもしれないとは思ったが、今は皆満身創痍。とりあえず一晩寝て、翌日森に行くことになった。
オーガが来ると問題なので、見張りを立てることにする。私とファロンが見張りに立っている時、私は薄ら寒いものを感じた。私は霊感体質で、霊が近くにいると気がつくことが出来るのだ。
果たして振り返ると、墓地から出てきたらしいレンジャーの霊が、ケイヴンにのしかかって首を絞めている。あわてて剣を抜いたファロンが斬りかかるが、手応えがない。私も魔法のワンドを使って攻撃を開始した。
物音を聞いて皆が起きてきた。そして、デイルが叫んだ。
「お前はローガス・フェンケル!なぜ!」
「復讐だ…。死ね、ケイヴン…」
「ま、まて、やめろ!俺はやってない。見ていただけなんだ〜!」
と弱々しく言うケイヴン。その顔はもう真っ白だ。霊に命を吸われてるいるのだ。
「そんな…まさか、噂は本当だったのか。だがローガス、おまえまで仲間殺しに陥るのはやめろ!」
デイルの言葉はしかしローガスには届かず、ケイヴンはぐったりとなった。そして、ローガスは今度はデイルに襲いかかってくる。
「ろくに調べもしなかったお前も同罪だ…!」
が、デイルを吸い尽くす前に、ファロンの魔法の剣によってローガスの亡霊は切り裂かれて消滅した。
デイルに聞くと、ローガスは生前いやな奴で、隊員達から非常に嫌われていた。ある時森でパトロール中に熊に襲われて死んだのだが、一緒に行った仲間が殺したのだという噂もあった。なにせ、傷が剣の傷だったから。が、隊長は特に調べることもしなかったため、その件は無かったことになった。
「くそ、本当に仲間殺しがあったなんて…」とデイルは苦い表情になっていた。
そんな話を聞いていると、死んだはずのケイヴンが目を開けて、立ち上がった。ただし、体を下に残したまま。そして言った。
「デイル、許してくれ。俺が悪かったんだ」
「ローガスのことか?」
「いや、違う。実は俺がオーガを手引きしたんだ。うその情報を流して隊員を出動させ、その隙にオーガに襲わせたんだ」
「なんだと!?」
「俺はパラダイスで借金を重ねていたんだ。もう駄目だったんだ。それに、パラダイスの女主人の目には逆らえなかった。すまなかった。許してくれないだろうか?」
「貴様、なんてことを…。死者を責めるのには意味はない。だが、許すことはまた別だ。ケイヴン、お前を許すことは出来ない。そして、お前をこの名誉あるブラックアローの墓地に埋葬することも出来ない」
「そんな…許してもらえないのか。…しかたない、隊長のところに行こう、隊長に許してもらおう…」
ケイヴンの霊はそういって、砦のほうへと消えていった。
ブラックアローの名誉と言いつつも、連続してその不名誉を目の当たりにしたデイルはやるせない表情でブラックアローの記章を外し、地面にたたきつけた。
その後は何事もなく、夜が明けた。

5.森の女王

翌朝、森の女王ミリアナのところに向かう。砦の前をこそこそと通り過ぎると、疲弊したオーガ達が戻ってくるところに遭遇した。スカル・クロッシングでなにをしているのだろうか…。
森に入り、チャムの後について歩いていくと不思議なことが起きた。一歩歩く度に、森の様子が変わるのだ。レンジャー達も、「足跡が残っていない…」と不思議がっていた。こうしてしばらく歩いていくと、いつの間にか見たこともないような森の中に来ていた。
チャムは「女王様!」と呼ぶ。そして、「女王様はとても美人で目がつぶれちゃうから、男の人は下向いていたほうがいいよ」と皆に警告した。
向こうから、信じられないくらい美しい女の人がやってきた。我々は跪いた。
「チャム。あの人は見つかりましたか?」
「見つかりませんでした!代わりに、探してくれる人を探してきました!」
「チャム。私はそれを頼んだんじゃないのよ?」
「女王様!探してくれる人たちは傷ついています。どうか治してあげて下さい」
ミリアナはリリーガムの死体を見て言った。
「あなたたちは、まるであの人を失った私の魂のよう。傷つき、壊れている。いいでしょう、あなたたちを癒しましょう。代わりに、あの人の体を持ってきて下さいね」
そういってミリアナが何かの呪文を唱えると、ガムリリーの体が輝いた。その体は光となって消え、そしてその光がまた凝集し、新たな体となる。だが、その体は以前と同じではなかった。
ガムは目を覚ますと、体が鱗に覆われているのに気がついた。心なしか、寒い。
「あ、リザードフォークになったのか」
ドルイドはこういうことに慣れているのか、あまり衝撃を受けないガムだった。
一方リリーは違った。起きて泉を覗き込むと…。
牙が生えていた。
耳が少しとがっていた。
鼻がつぶれていた。
なんだか筋肉ついて太っていた。
リリーは叫んだ。「イャーーーーー!」
ミリヒと私はそれを見て、しばらくはリリーに優しくして上げようと思ったのだった。
女王は、去り際に一句詠んだ。
「空から振る小さな雨も積もり積もれば大海になる」
後に、この句がこれから起きる凶事を現していることに気がつくのだが、この時点では俳句の才能は無いのかしら、と思った我々であった。
再び砦に向かうが、ガムリリーは死からの復活で疲れている。そこで、チャムにお願いして森で少し休憩することにした。
チャムが連れてきてくれたのは、非常に大きな葉っぱの下だった。直径30ftはあっただろうか。ここなら確かに雨宿りが出来る。まだ、雨は降り続けていた。だが奇妙なことに、雨の音が違う。しとしと、ではなく、ぼとぼと、という音だ。
上を見ると、落ちてくる水滴の大きさが尋常ではない。もしかして、これは、大きな葉っぱなのではなく、我々が縮んだのだろうか。しかし、深くは気にしないことにしてガムリリーの回復を待った。

6.再突入

そして夕方、オーガが出払った頃合いを見計らい、もう一度裏口から突入する。昨日殺したオーガの死体はそのままだった。レンジャー達に案内され、兵舎の扉を開ける。
中には、オーガフックを持っていないオーガが4体いた。警告の声を上げ、後ろの口から逃げていくオーガが2匹。残った2匹のうち1匹は、グリッターダストで目をつぶされた。やはり、この魔法の有る無しは大きい。我々は全員部屋の中に入り、あっさりと二匹を沈めた。そこに、昨日撤退を余儀なくされたフック持ちのエリートオーガが通路からやってきた。1回だけ殴られるが、その後グリッターダストでやはり目をつぶされる。
その時、2階のほうから野太い声が何か聞こえてきた。階段から下りてきたのは、上半身の筋肉が異様にふくらんだオーガ。もちろん、得物はオーガフックだ。このベルトは隊長の持ち物のはず。ということは、こいつがオーガのボスか。
オーガボスの攻撃は凄まじかった。まずミリヒが一撃をうけ、瀕死に。後退したその隙間を埋めるため、ガムが呼び出した隊長10フィートもあろうかという巨大な狼が近寄るが、その瞬間に体を真っ二つにされて、死亡。さらに、先ほど逃げていった雑魚オーガ達が逃げた扉からやってきて、ボスから逃げていた私やリリーなどの後衛陣を襲い始めた。さらに、ボスが何か叫ぶと、2階から「ハーイ」という返事が。まだ敵が来るのか。
もはや絶体絶命かと誰もが思ったが、ヘイストがかかったファロンミリヒの決死の攻撃で、ボスを倒すことに成功した。その後私は気絶してしまったが、リリーに治されて復活する。追加でやってきたのはこの前逃げたオーガキンの女だったが、サイレンスで無力化、ボスにポーションを飲ませようとするが、取り出した時に殴られて自分の方が瀕死になってしまったため、自分で飲んでいた…が、直後に死亡。後ろのオーガはハワードが処理し、最後に目が見えないままだったエリートオーガを倒し、我々は勝利した。
オーガボスやオーガエリートに2、3回殴られれば、誰でも100%即死していただろう。恐ろしい戦いであった。

7.闇のレイディ

満身創痍の我々は、残ったオーガに会ったら危険だと言うことで、また透明になって撤退することにした。しかし、通路の途中で、こちらをじっと見る一人の女性に出会う。
何故こんなところに、貴族風の格好をした女性が一人でいるのだろう?そしてなぜ、透明であるはずの我々に気がついているのだろう?
私はいやな予感がして、口を開かずにいたが、向こうから話しかけてきた。
「皆さんがルーン・シーカーズって言うんでしょ?強いわねぇ」
もしかしたら普通の人かもしれない、と思って、ミリヒは答えた。
「あなたはどうしてこんなところにいるんですか?ここはオーガがいっぱいいます。危ないですよ」
が、女はそれには答えず名乗った。
「私はルークレシア。モクムリアン様に仕え、世の悪を正すための活動をしているの
「世の中には欲の張った人や、喧嘩っ早い乱暴者、そんな死んだ方がいい人達がたくさんいるわ。私たちは、そういう人たちを掃除することで世直しをしているの。あなたたち強いし、一緒にやらない?
「例えば今は、スカル・クロッシングダムを決壊させて、タートル・バック・フェリーを全滅させようとしているの。…この計画はあんまりスマートじゃないわよね。私ならやらないんだけど。
「私のはもっとエレガント。そう、例えば、パラダイスってカジノ船を作るわけ。そこには、欲深い人がいっぱい集まってくるの。そしてそこに火を付けて沈めてやったのよ。
「あ、そうそう、リリーっていうのは誰?」
リリーは答えなかったが、みなついリリーの方を見てしまった。
「あなたがリリーなの。じゃあミリヒっていうのは?」
同じように、みなついミリヒの方を見てしまう。ルクレシアはじっとミリヒをみて、言った。
「あなたがミリヒね。なるほど、でもごめんなさい、ミリヒ。あなたにはここで死んで貰わなくては。」
そういって、腰のレイピアとダガーを抜き、ルークレシアはこちらに走ってきた。
私は直感的にやばいものを感じ、とりあえず仲間にヘイストをかけ、部屋の中へ逃げた。直後にルークレシアガムに接敵し、攻撃してくる。ルークレシアに攻撃されたガムは、なんだか頭がぼんやりとするの感じた。判断力が弱まるような何かをしてくるらしい。ハワードも近づき、傍目から見ても改心の一撃を見舞うが、ルークレシアはそれをなんなく避ける。驚くハワード。それを見てミリヒは、「逃げるよ!」と言って、ヘイストの速度を生かし、さらにショアンティの足捌きを駆使してルークレシアから一気に60フィート以上逃げ去った。あわてて逃げ始める他の面々。私とリリールークレシアを通り過ぎる自信がないため、正門から抜け出すことにした。正門にはオーガがいるが、透明であれば問題ない。
しかし、ハワードルークレシアに攻撃していたため、逃げ遅れた。ルークレシアはターゲットがいなくなったため、しかたなくハワードを切り刻む。ハワードは悲鳴を上げて倒れた。その音を聞いたリリーは、
「助けに行かなきゃ」と私に言って、戻っていった。透明であっても、ルークレシアには見えるというのに。
ハワードを回復して血を止めると、ルークレシアが近づいてきて言った。
「あらあら、リリー、だめよ、そんな命を無駄に捨てるようなことをしちゃ。でも、私はあなたを守る役目があるから今は大丈夫。ただ、これからあなたの他の仲間にも刺客が送られることがあると思うの。そういう時、今回みたいなことをしたら駄目よ。あなたは死んではならないのですから…」
そして、余計な一言を付け足した。
「あらリリー、あなた、どうしてお鼻が少し上を向いているのかしら?」
顔をのことを指摘され、リリーは泣きながらハワードを引っ張ってその場から逃げ去った。

砦の外で我々は落ち合った。どうにかして、スカル・クロッシングダムの決壊を止めなければならない。だが、ルークレシアにはとても勝てそうにない。相談して、とりあえず、翌日の夜まで休憩し、デイルに先導して貰ってオーガ達の後を追うことにした。シャルなどには町に帰って貰って、ダム崩壊の危険性を伝えて貰うことにした。すると、ガムが言った。
「俺こんな姿になっちゃったからこれから一緒に冒険して人の町とかにはいるわけにはいかないし、命も惜しいからサンドポイントに帰るわ。いろいろありがとな。じゃ。」
そう言って、ガムは鳥の姿に変じて西の方へ飛んでいった。
我々はまたチャムにお願いして、葉っぱの下で休んだ。雨は降り続いていた。

8.スカル・クロッシングにて

夜になると、オーガが集まっていた。そして、ルークレシアが傘を持ってその先頭に立ち、なにか指示を与えいる。
「みなさーん、これからダムを壊しに行きます。これが終わったらバール・ブレイクボーンのところに武器を運ぶ必要があるので、死んだり、食べられないように気をつけて下さいねー」
ルークレシアは、傘を差していても服が水に濡れるので非常にいらついているようだ。本当に貴族なのかもしれない。
オーガ達は、スカルクロッシングダムに向けて一直線に歩いていった。我々は先回りをしようと頑張ったが、オーガ達は進路上の木などをなぎ倒しながら本当に一直線に進んでいて、とても先回りは出来なかった。3時間ほど歩いて、ダムに到着した。
ダムは幅数百フィートもあり、暗くてよくは見えなかったが非常に巨大な構造物だった。そして、その水は限界に近いくらいたまっているのに、ダムは壁面に取り付けられた髑髏の目からちょろちょろと水を出すだけで、明らかにまともに機能していない。
ルークレシアはオーガ達に仕事を始めさせると自分はさらに山の上に方に登っていった。
ルークレシアがいなくなったのでこれ幸いと、我々はダムの上でくさびなどをうっているオーガ達に近づく。ダンシング・ライトを飛ばし、オーガ達を弓で撃つことにした。
ところが、オーガ達がこちらに向かってくるよりも早く、オーガの騒ぐ音を聞きつけてダムの主がやってきた。巨大な触手が、ダムをつかむ。1本、2本…。そして、巨大な体が、口が、オーガ達を頂こうとダムから出てきた。
が、その時、オーガの作業で弱くなっていたその区画は怪物の体重を支えきれず、部分的に崩壊した。オーガと、その怪獣は大量の水と共に下流に流されていく…。水の量はまださほどでもないため、タートル・バック・フェリーが水害でどうにかなることはないが、あの怪物は街で暴れるかもしれない。だが、このままここを放っておくと、弱ったところからダム全体が決壊する可能性もある。そもそも、濁流にのまれて流れていった怪物に徒歩で追いつけるわけがない。我々は、ダムを調べることにした。
塔に文字。


ダムで作業しているオーガを弓で撃っていると、恐ろしい化け物が出てきてオーガをくい、その衝撃でダムの一部が決壊した。

9.パパ・グラズールの恐怖

ダムの真ん中あたりに、明らかに怪しい塔がある。塔に刻まれた文字を魔法で読むとそこには、
「この下にパパ・グラズールが住む。称えよ、水のしたたるグラズール。」と書いてあった。そして、その脇には扉が。何かのコントロール装置(と宝)があるかもしれないと期待して、我々は階段を下って中に入った。
そこには部屋があって、部屋の真ん中に濁った水たまりがあった。水たまりの中から魔法の反応がする。だがそれを詳しく調べる前に、水たまりの中から巨大な化け物が、さすまたを持って出てきた。もしや、こいつがパパ・グラズールか。
ファロンが攻撃しに行くが、グラズールの攻撃はオーガ以上に強力で、一撃でファロンはふらふらになった。私は前に出てファロンにディスプレイスメントをかけるが、パパは今度は私に攻撃してくる。あの攻撃をあと1回くらったら、確実にお陀仏だ。
だが、仲間思いのルーン・シーカーズは、自分の身の危険も顧みず、全員前に出てきてパパの前に整列し、攻撃した。全員が全員、1回か2回で倒れてしまうというのに。私は友情に感謝し、そそくさと後ろに逃げた。そして、ヘイストの呪文をかける。パパは先ほど最もダメージを出したファロンに攻撃した。だが、ディスプレイスメントのおかげでその攻撃は全て外れ。その後並んだ前衛陣の攻撃で、パパは水の中に沈んでいった。
パパが使っていたのは魔法の武器のようだった。ファロンはパパと一緒に沈んでいった武器を取りに行ったが、なんとパパは水の中で体を再生しており、ファロンを爪で引き裂いた。幸いロープに結んであったため、異常を感じたミリヒが引き上げ、事なきを得た。だが、早く探索しないとパパがもう一度出てくることは必定。今度こそ誰かが命を落とすかもしれない。
ハワードが他の扉を探すが、その向こうの部屋には特に何もなかった。が、最後の部屋、入り口から見て真正面の扉の向こうには2つの牢獄があり、うち一つには赤い巨大な何かが閉じこめられていた。いやな雰囲気を感じて、見なかったことにするハワード
「どうしよう、向こうになんか閉じこめられてるよ?」
この言葉に反応したのは、自由と解放を愛するリリーだった。リリーは扉を開き、中の人物と会話する。…厳密には、中にいたのは悪魔だった。
「俺は昔、タッシロンの魔法使いに召喚されて、以来ここに縛られているのだ。
「俺の役目は電池だ。このダムに水がたまってくると、この部屋が俺にエナジードレインを撃つ。そうして、俺から吸収したエネルギーでダムを動かし、水を安全なレベルにまで排水するのだ
「実はこのシステムが動くにはもう一人必要だ。向こうの檻を見ろ、空っぽだろ?あそこに昔は相棒がいたんだよ。でも数千年の時の中で、あいつもついにエナジードレインへの抵抗に失敗し、死んでしまったんだよ。
「酷い話だろ?どうか助けてくれないか。水を放出したいなら、あと1回だけはやるからさ」
これを聞いて、デイルが名乗りを上げ、もう一つ檻に入った。すると壁から黒い光線が飛んできて悪魔とデイルにあたり、同時にゴトン、という音と、水が流れる音が聞こえてきた。私が外に出て確認すると、たしかに水が放出されている。
そこでリリーは、悪魔を封じている魔方陣を消し、悪魔を解放した。
「ありがとう。お礼に願いを一つ叶えてやろう」
「人間に戻して!」
「我願う、汝の人間たらんことを!」
こう言って悪魔は消え、リリーは牙が消え、鼻が元に戻っていることに気がついたのだった。
部屋から全員が抜け出そうとすると、やはりパパがまた出てきた。が、私が階段のところからあわてず騒がずグリッターダストをかけるとパパは目が見えなくなり、その隙に他のメンバーは塔から脱出した。

10.次なる目的地へ

砦に戻ってみると、そこはもぬけの殻だった。オーガは一人も残っていない。そしてもちろん、隊長の死体も。どうやら、ブラックアローは二人残して全滅したようだった。
また、砦にはルークレシアからの手紙が置いてあった。そこには、サンドポイントを襲おうとしている、と書いてあった。
そして翌日、街に戻ってみる。街は水没こそしていなかったが、あちこちをモンスターに破壊されていた。だが、復興出来ないほどではないだろう。
デイルは、ルークレシアが向かったのはオーガの住処ではないかと言う。オーガの住処はダムから北西の方に行った山奥にあるのだそうだ。
我々の次なる目的地は定まった。ルークレシアがサンドポイントに向けて出発する前にどうにかして食い止めなければならない。