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第3回

燔祭 part3(ミリヒの思い出)

 

 アザミ岩再突入

 一夜明け、村の危機にもかかわらず非協力的な村の人々に少し悲しくなりつつ私たちが船でアザミ岩の下まで来ると昨日苦労して垂らしたロープは無くなっており、代わりにつり橋が架けなおしてあった。登攀用に用意したロープやピトンが心なしか重く感じられた。
 
 内部に侵入した私たちは中庭にまず向かった。そこには前回来た時と同様にゴブリンドッグがおり襲いかかってきた。ゴブリンドッグはさしたる苦労もなく制圧できたが、その戦闘の最中突如としてファロンの脊に矢が突き刺さった。どうやら見えない敵がまだ他にもいたようだ。よくよく目を凝らすと隅のあたりにバグベアがいた。そのバグベアは私たちが反撃しようとすると逃走したため、追撃戦が始まった。妖精眼を持つファロンやbindsenseのあるハワードはまだしも他の面子にはそのバグベアの姿を捉えることは難しく結局逃がしてしまったが、その過程で私たちは地下への階段を発見した。
 

 ラマシュトゥの神殿

 地下へと降りた私たちは怪しげなダブルドアを発見し、その先へと進んだ。そこは天井が高く、柱が整然と並んだ空間で奥には祭壇とラマシュトゥの像(狼の頭と猛禽類のような足をした両の手にククリを持った懐胎した女性の像)があり、さらには私たちの持つ明りを反射して怪しく光る四つの目があった。吠え声とともに暗闇から襲いかかってきたのは二匹のイースハウンドであった。
 
 その吠え声は聞く者の心を打ち砕く力があり、耐えきれなかったハワードファロンはパニックに陥りその場から逃走してしまったが、ケルダのカラースプレーとリリーのスリープが立て続けに決まり戦況は決したかに思えた。しかし、次の瞬間に私が無防備な姿をさらす一匹に対してとどめの一撃を行うとそのイースハウンドはなんとそれに耐えたのである。手ごたえからしてこのイースハウンドもサンドポイントの地下で戦ったクォジットのように適切な手段でないと十分なダメージを与えられないようだ。不利を悟った私たちは潔く一時退散することにした。
 
 残ったリソースを鑑みて私たちは未探索の地上部分を探索して街へと帰ることにした。地上部分には敵はおらず、ただ、前回倒したゴブリンボスが乗騎にしようとしていた馬を発見したので解放してやった。つり橋を堂々と渡って去っていく馬の姿はなかなか恰好よかった。
 

 リベンジ

 翌日、三度目の正直とアザミ岩攻略へ向かった私たちは森で子連れのクマと出会った。お腹を空かしているらしいクマ達に対して保存食をあげて立ち去ってもらおうとしたが、クマ達は納得いかない様子。動物と会話できるガムによれば一人食わせろとのこと。私たちは武器を抜いて撃退することにした。母グマの一撃は重く自然の力強さを改めて感じる戦闘であったがカラースプレーでスタンしている間に皆で協力して打ち倒すことができた。なお、ファロンはクマの生肉を食料と言って一部持っていくことにし、リリーはクマの手と胆のうを珍味と言って採取していた。いったいリリーはどこでそのような知識を得てくるのだろうか?
 
 クマ以降は問題なく進んだ私たちはラマシュトゥを祭った部屋の手前で準備をした。私たちの作戦はリリーのスリープでイースハウンドを眠らせ、そこをscytheを装備した者たちがとどめの一撃をさすというものであった。6人中4人がscytheを構えた私たちの姿は傍から見たらさぞ壮観であったことだろう。
 
 準備の後、扉を開け戦闘は開始された。予想はしていたが、やはり厳しいっ戦いとなった。スリープには抵抗され、カラースプレーも片方のイースハウンドには効かず乱戦状態になり、さらには昨日とり逃したバグベアまでもが戦闘に参加してきたためである。バグベアと一騎討ち状態になってしまったハワードが倒れあわやという瞬間もあったが、以前手に入れたフレイミングスフィアーのスクロールを使用するなどしてどうにかバグベアとイースハウンド一匹を倒して私たちはまたも退却した。
 
 結局、まったく作戦通りには行かず、イースハウンドも一匹残してしまったがまずまずの戦果だった。
 
(たしかこの後だったと思う)ダブルドア以外の所を探索中に樽に触手が二本、長いのととげがついたのがついたような化け物と戦った。

当然のように長い方(リーチ10ft.)でグラップルを仕掛け、とげのついた方で刺してきた。そしてこれまたやはりとげには毒がありグラップルされて刺されたファロンは体が痩せ細った。その後、この化け物は皆で囲んで袋叩きにしてこの日は街に帰った。
 

 地下二階へ

 街へ帰った私たちが翌日残る一匹を倒さんとダブルドアを開けるとそこには何もいなかった。気を取り直して地下一階の探索を行うとオリックという人物がライリーという人へ宛てた恋文とそれに対するそっけない返事やタッシロン語の教本、そしてマーフェシュネコール、カーゾーグ、ポータルオブグリード等の単語が見て取れる紙片があったようだ。私には文字の読み書きが出来ないがナリアお姉ちゃんから読み書きを教わったハワードがそう教えてくれた。ナリアお姉ちゃん、本当にここにいるのだろうか?
 
 さらに探索を続けた私たちは隠し階段を下りて地下二階へと進んだ。地下二階は何か巨大な生き物がつけたであろう爪跡が無数にあったり、石棺がたくさん安置されていたりととても不吉な感じであった。案の定、石棺のある部屋で隠し扉を捜索していると石棺から影のようなものが三体出てきて襲いかかってきた。リリーのターンアンデッドにより戦闘そのものは簡単に終わったが、後で聞いたところによればシャドウという危険なアンデッドだったらしい。
 
 隠し扉を抜けて進むと下り階段が二つあり、いずれも同じ部屋につながっていた。その部屋は小さく一部水没していてそのまま海へとつながっていた。また、部屋には財宝溢れる街を描いたレリーフがあり、よく見ると水中にはキラキラ光る何かとかなり大きな金の兜が落ちていた。兜の大きさから引き揚げるのは大変だなどと私たちが話していると金の兜が動いて襲ってきた。金の兜の中には大きなカニが入っていた。大きなはさみと部屋の小ささを考えると苦戦が予想されたため私たちは撤退した。

 

 ポータルオブグリード 

 以前盗み食いしていたゴブリンから得た情報によればナリアお姉ちゃんとツトは地下二階にいるはず。再度各部屋を探索するとルーンの刻まれた柱のある部屋で柱の両側にスロットがあることが分かった。ハワードガムがとりあえず金貨を入れてみると柱が下にさがって奥へと進むことができるようになった。どうやらこれがポータルオブグリードのようだ。柱の先には三つの部屋があった。
 
 一つはタッシロン語で何かを言っているイリュージョンがある部屋、もう一つは過去に邪悪な手術をしていたらしい手術室。そして最後が中で炎が燃えているピットがある部屋だった。
ピット部屋だけ魔法のカギで施錠されていたために無理やり扉を壊して中にに入るとケルダがまるで初めから分かっていたかのように隠し扉を二つ見つけた。いずれの先も魔法のキャンドルに照らされて棺がある小さな丸い部屋だった。ファロンが片方の部屋の棺を開けると中には魔法の指輪が二つ入っていた。ファロンが調べている横でキャンドルをバックパックに投げ込んでいたリリーはその時、どこかで呪文を詠唱する声を聞いた。リリーの発した警戒の声にハワードが敵を探すと部屋の隅にゴブリンと狼を混ぜたような大きな獣がいた。
わずかな時間に彼我の力量差を見て取った私たちはまたも撤退を決定した。なんだかいつも逃げてばかりのようだけど、決して私たちが弱過ぎるというわけではない……と思う。この魔獣は本当に強くて一瞬、死者数名の大惨事の未来が見えたような気がした。けれど、ケルダの放ったカラースプレーが効いたため、何とか皆逃げ延びることができた。この魔獣はピット部屋に魔法で縛られているらしく部屋から出られないことも大きな助けになった。
 

 決戦

 回復呪文が尽きてきたため、一旦街へと帰ろうとつり橋まで戻ると対岸に探していたナリアお姉ちゃんの姿があった。ナリアお姉ちゃんとツトを探しに私たちはここへやってきたが、いざ二人を目の前にしてもなんと声をかければいいのか分からなかった。
ナリアお姉ちゃんは左手を除けばそれほど変わっていないように見えた。なぜかまたお腹は大きくなっていたけど。左手は異様で遠目には蜘蛛糸に垂れる蜘蛛のようだった。ナリアお姉ちゃんは左手が重いのか左肩が少し下がっていた。
私は教会の火事やゴブリンの襲撃についてナリアお姉ちゃんのせいなのかと訪ねた。ナリアお姉ちゃんは肯定した。私がその理由を問うとナリアお姉ちゃんはサンドポイントの人々からの迫害やろくでもない男に引っ掛かったこと、必ずしも善良ではなかったトービン神父などいろいろな不幸に対して祈っても祈ってもデズナは何もしてくれなかったが、ラマシュトゥは違うと言った。
どうやらナリアお姉ちゃんは数々の不幸から信仰に絶望しているところをラマシュトゥに付け込まれてっしまったようだ。最後にナリアお姉ちゃんはこれからこの橋を落として私たちを足止めしてからサンドポイントを襲うと宣言した。もう悠長に会話をしている余裕はなかった。
 
 まず問題は橋だった。私たちは傷も満足に癒しきれていないし、ナリアお姉ちゃんはツトの他にも戦士風の男と魔法使い風の女、さらには無数のゴブリンを従えていたので、せめて有利な地形で戦いたかったけれど、橋を落とされては元も子もないので私たちはリリーを除いて皆橋を全速力で駆け抜けた。幸いにしてゴブリン達が日和見を決め、さらにリリーのスリープがツトと魔法使いの女に次々と決まったため数の上では私たちは有利になった。しかし、ラマシュトゥの加護を受けたナリアお姉ちゃんは強く、私はあっさりと倒されてしまった。
 
 そして、誰かの回復呪文で目覚めたとき私が一番い見たものはツトの首だった。ツトの首は体から離れていた。先程はナリアお姉ちゃんとばかり話していて私はツトとは何も話さなかったけれど、出来れば生きたまま捕らえたいと考えていた。しかし、ツトはあっさりと死んでしまっていた。非常に悲しかったけれど戦闘はまだ続いており、私は立ち上がってナリアお姉ちゃんに再度立ち向かった。
ナリアお姉ちゃんはその膨らんだおなかからイースハウンドを産み落とそうとし始めた。万全の状態ですら苦戦するイースハウンドを産み落とされてはたまらないと私たちは必至でそれを阻止しようとした。そしてついにガムの呪文がナリアお姉ちゃんに決定的なダメージを与えた。しかし、時すでに遅く倒れたナリアお姉ちゃんの体からイースハウンドは生まれてしまった。イースハウンドの叫びを聞いてゴブリン達や戦士風の男が逃げだしたのは良かったが、ガムケルダも逃げ出してしまった。私も叫び声こそ耐えたが、続くイースハウンドの攻撃に耐えられずまたも意識を失ってしまった。
 
 次に私が目を覚ました時、すでに戦闘は終わっていた。聞けば、あの後どこからともなく沢山の蝶がやってきてナリアお姉ちゃんとイースハウンドを包み込むと何処かへ飛び去って行き、後には左手とおなかが元に戻ったナリアお姉ちゃんの遺体だけが残っていたという。
蝶と言えばデズナの使い、最後の瞬間にナリアお姉ちゃんは救われたのだろうか?
願わくはナリアお姉ちゃんとツトの魂に安らぎあれ。