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第11回

 ルーン・シーカーズの受難 第11話:どっきり!温泉遺跡で白い竜

作:ケルダ・ラタリオン

ルーン・シーカーズのメンバー
  • ミリヒ:ショアンティのバーバリアンで、優しくも気丈で勇敢な娘。棍棒を折るほどの怪力の持ち主。
  • ファロン:エルフの魔法戦士。華麗な剣捌きと魔術で敵を圧倒する。死線から生還するのが得意。
  • リリーデズナの熱心な信徒で回復の技にも長けているが、今は判断力が鈍っており使えない。魔法の方は使える。
  • ハワード:パーティーの二枚目。助けた女性は数知れず。今回、めでたくその一人と式を挙げることになるが…。
  • ガム:クールなドルイド。お供のピンク・パンサーはヘタレ。
  • ケルダ:生存能力の高い魔法使い。死ぬのは他の人が死んでから、と心に決めている。

〜前回までのおさらい〜

巨人の城塞に侵入し、鼠のように隠れ潜みながらも、ついに恐るべき巨人の魔法使い、モクムリアンを倒したルーン・シーカーズ。とりあえずは女巨人、コンナに報告に行かなければならないが、まずはモクムリアンの宝箱から見つけた鍵を持って、タッシロンの図書館へと入ってみることに。そこで…。

1.タッシロンの大図書館

恐ろしい化け物がいると言うことで行きはスルーした図書館に我々は戻ってきたい。透明な化け物を見通す私の目には、その入り口を守る幽霊のような生き物の姿も見えている。鼻をこすったら、手に血がついた。ああ、本当に幽霊のようだ。
しかし、鍵を持っているものには襲いかかってこないらしく、やり過ごすことが出来た。
図書館の中には、信じられないくらいたくさんの本が置かれていた。しかも、何かの魔法がかかっているのか、床にはチリ一つ落ちていない。
と、その暗がりから、ゴーレムのような人型の影が近づいてきた。
「私はこの図書館の管理人です。書名、著者名、キーワードで書籍を検索します」
どうやら敵対的ではないようだ。私が思わず
「キーワード:財宝」
と言うと、管理人はFrozen Mawというドラゴンに関する書物を持ってきた。ドラゴンを倒せば財宝が手にはいるという訳か。そんなリスキーな仕事はまっぴらごめんだ。
様々な情報がありそうなので、モクムリアンの目的などを調べることになった。しかし、タッシロンが読めるのは私だけであり、また、そもそも皆は歴史や魔術の知識がないため、調べ物の役には立たない。結局、リリーと私が図書館に残り、他
のメンバーはコンナのところへモクムリアンを倒した旨を伝えに行くことになった。

2.ツルハシ巨人の恐怖

ファロンハワードガムミリヒの4人がてくてくと道を歩いていると、通路の暗がりの中から突然、ニュッと巨大な姿が現れた。ストーンジャイアントだ。
モクムリアンを倒したのに、まだ襲ってくると言うのか。とはいえ、相手は一人、なんとかなる。皆、そう思ったという。
しかし、雄叫びを上げて襲いかかってきた巨人のツルハシが一振りされると、ガムは一撃で吹き飛ばされた。その恐るべきツルハシはかすっただけでも危険な代物。二十に一(注:Golarionでの「万が一」に相当する慣用句)急所にでも当たったら…考えるだけでも恐ろしい。しかも、巨人の攻撃は非情なまでに正確であり、二十に一どころか十に一にも悪夢が起きそうな具合だ。
実際、ハワードファロンは肺や心の臓を突かれあわや絶命というところだったが、奇跡的に急所をはずれたらしい。数秒でぼろぼろにされた4人は、撤退を考える。
しかし、死線をさまよっていたファロンはもはや逃げることすらままならなかった。やぶれかぶれに取った戦術は、最近訓練していた必殺技、武器破壊。ロングソードを振り周し、なんとかツルハシの破壊に成功する。攻撃を素手に切り替えた巨人はそれほど痛い相手でもない。結局、ボロボロになりながらも巨人を打ち倒すことに成功した。
もちろんその後、4人は図書館に逃げ帰ってきた。

3.ルーンロードの伝説

一方リリーと私は、調べ物に夢中になっていた。モクムリアンのメモにあったヘルファイヤーフューム、ルーンフォージ、そして、裏切り者のザリヤサとは一体何なのであろうか。
調べていくうちに、全ては太古の昔、タッシロンの国とその主、ルーンロードへとつながる話だと言うことが分かってきた。
始まりの王、シンがタッシロン国を作ったと言われている。シンのもと国は栄えたが、彼の死後、その下で国の各部分を治めていたルーンロードは次第にその本分を忘れ、それぞれが持っていた7つの徳は7つの罪へと変化していった。
西のバクラカーンを治めていた力術師アラツニストは怒りを、
北西のエダーセリルを治めていた守護術師ベリマリアスは妬みを、
中部のシャラストを治めていた変成術師カーゾーグは強欲を、
東南のハルカを治めていた召喚術師クルーンは怠惰を、
南のユーリスニアを治めていた心術師ソーシェンは情欲を、
北のカイラシアンを治めていた幻術師のザンダーガルは高慢を、
東のガスタシュを治めていた死霊術師のズサは大食を、
それぞれ現すようになっていった。また、彼らルーンロード同士の争いも激化し、結果としてバクラカーンは大地ごと引き裂かれ巨大な湾を形成した。
結局、争いに決着はつかず、もはや世界も終わりかと思われたため、ルーンロード達は大地が落ち着くまで眠りにつくことにした。しかし、彼らの僕達も息絶えてしまったため、ルーンロード達を眠りからさますものがいなくなってしまったという。
ヘルファイヤーフュームは、アラツニストがカーゾーグと戦う際に利用した兵器であった。見た目は塔のようであるが、その上部は自由に折れ曲がり、口から炎を吹き出すという。実は、サンドポイントにあるオールドライトはこのヘルファイヤーフュームの残骸であった。
一方カーゾーグの方は岩で出来た巨大な兵士を送り込んだらしい。その描写はどうにも我々が行ったことのあるアザミ岩に似ている。もしかしたら、昔オールドライトとアザミ岩が戦ったことがあるのかもしれない。
また、裏切り者のザリヤサとは、アラツニストとカーゾーグのダブルスパイである、ラマシュトゥの神官であるようである。高い地位にあったらしく、ヘルファイヤーフュームの一つを任されていたらしい。
ルーンフォージに関しても分かった。ここは、ルーンロードを倒すための武器を研究していた、デミプレーンにある研究所で、ルーンロード全員の出資の元作られたものらしい。一体なぜ、全員で一つの研究所を作ったのだろうか?
このあたりまで調べたところで、ぼろぼろの4人が戻ってきた。仕方がないので、私が透明になってコンナのところまで報告に行った。
モクムリアンが死んだことを私と一緒に確認したコンナは、他の巨人族を連れて帰っていった。
我々はしらばくの間さらなる調査を重ねたが、特にわかったことは増えず、数日の後、助かった村人を伴って帰途へとついた。

4.戦士の休息

サンドポイントで、我々は村の英雄として迎え入れられた。今後は村のどの店でも飲食がただになるそうだ。
しかし、それはたいした問題ではない。我々はクインクさんのところに急いだ。
「我々はタッシロンの巨大な魔法図書館を見つけました。ここに入るための鍵には我々の借金にそうとする価値があると思うのですが、どうでしょうか」
と私が切り出すと、クインクさんは、必要なときにそこまで護衛することを条件に、借金を棒引きしてくれた。こうして、ハワードや私が冒険に出る理由は無くなった。手持ちの金もあることだし、これでいつでも引退して、カタギの暮らしに戻ることも出来る。しかし、モクムリアンの最後の言葉も気になる。まだ冒険を止めるわけにはいかないだろう。とは言っても、ルーンフォージに関する手がかりが無い以上、どうすることも出来ない。我々はしばらくの間休息をとることになった。
こうして、数十日が経過した。リリーや私は、魔法の道具作りに精を出していた。そしてハワードは、意中の彼女と結婚することを決意するのだった。我々はこのニュースを喜び、パーティ資金で豪華な結婚式を開くことにしたのだった。
私は、いなくなった師匠捜しもかねて、結婚式で必要な品をマグニマーまで調達しに行くことにした。まずはパスファインダーロッジを訪ねたが、そこで奇妙な噂を聞く。なんでも、最近魔法や魔物に遭遇する一般人が増えているというのだ。また、ルーンロードの復活という噂もまことしやかにささやかれているらしい。師匠は街の人混みの中で見つかった。頼まれたダイヤモンドを買ってきた、と言うと、「代金はもう払ったわよね?」と平気な顔で嘘をついてくる。私が嘘だと看破すると、「なかなか成長した」と誉めてくれた。…何の師匠かって?そりゃあ、ほら、あれだよ…魔法とか。

5.妨害された結婚式

ついに、ハワードの結婚式の日がやってきた。エルフ故空気が読めないファロン以外は、正装して参加していた。式は滞りなく進むと思われたが、突然、不気味な犬の鳴き声が響いてきた!しかも、この声を聞くと人々はパニックに陥ってしまうようだ。あわてて私は音を消す呪文を唱え、鳴き声を無効化する。そして、苦虫をかみつぶしたような顔をしたハワードを置いてパーティーは声の方へと駆けだした。こういう時、空気を読まず武装していたファロンが頼りになる。ハワードも、花婿衣装を脱ぎ捨て、武具をひっつかんで追いかけてきた。
声に近づくにつれ、地中から聞こえてくるようにも思える。そして我々が見たのは、タワーストリートの真ん中にあいた大きな穴。当然、以前は存在しなかった。そして、声はこの中から響いてくる。
とりあえず下に降りてみると、穴は人口の洞窟につながっている。もしやここは、オールドライト、いや、ヘルファイヤーフュームの地下なのだろうか?
あたりを探索し、壁を見てみると、ラマシュトゥへの祈りの言葉が見つかった。

偉大なるもの
天の娘
彼女は
幼児を虐待する
彼女の手は
捉える網
彼女の抱擁は死
彼女は激怒する
彼女はいつも不満
そして彼女は獲物を逃さない
誰よりも素早くは知るもの
それは天の娘
彼女は妊娠した女のおなかを触り
その子供を引きずり出す
彼女の頭はジャッカル
彼女の体は母の体
ライオンのように吠え
悪魔の犬のように遠吠えする

…ここは、ラマシュトゥの神殿なのかもしれない。それを裏付けるかのように、我々は大きな礼拝堂にたどり着いた。
そこには、異形の彫像が飾ってあった。カニのはさみのような手と人間の手を持った大きな化け物の像だ。ファロンが言う。「これは、魔人グラブレズゥの像…」いや、それは像でない。いまや生気を持って動き出した魔人は、石の色から見る間に赤い色に変化した。そして吼えると、その隣に同じ形をした魔人がもう一人…!
魔人達はコンフュージョンやパワーワード・スタン、そしてリヴァース・グラヴィティを使って我々を無力化する作戦に出た。そして、ファロンと私は朦朧としたまま混乱し、行動を阻害される。
ここで活躍したのは、ガムとその召喚するダイアー・ウルフ達だった。十体弱の狼たちが、まさに狼らしく悪魔を取り囲み、転ばせる。狼たちが戦っている間に他のメンバーは体勢を立て直し、グラブレズゥは撃退された。

温泉の遺跡へ

その奥に進むと、巨大な犬を従えた神官らしい人影が立ちふさがった。私がタッシロンで会話を試みると、そいつはザリヤサと名乗った。こいつが例の裏切り者、ザリヤサか。
ザリヤサは、ルーンロードの復活は阻止せねばならないと言う。そして、そのための武器がルーンフォージにあると。しかし、彼はラマシュトゥの加護でこのダンジョンの中でのみ生きながらえているため、外に出ることは出来ないそうだ。
交渉の末、我々が代わりにルーンフォージに出向き、武器を得ることとなった。ザリヤサは、ルーンフォージに入るための秘密を教えてくれる。

魔法の力を手に入れたくば
ルーンフォージが終の棲家に
魔法使いの技が扉を開ける
煙はく鏡面の東
一日の終わり夕暮れが迫る頃
七つの顔がルーンフォージの門を守る
それぞれの石像はそれぞれのルーンロード
それぞれのルーンロードに鍵をもらうためには正しき呪文と祈り
鍵を集めて階段を上れ
凍り付いた山にシンが待つ
彼が認めれば扉は開くだろう
シードロンの形の鍵穴に鍵を入れ二回転
さすればゲートは開かれん

具体的な場所を聞くと、煙吐く鏡面とは、ストームゲイザーという温泉であることが分かる。高山にある温泉らしい。
そこまで聞けば後は山に向かうだけだ。今はザリヤサとことを構える必要性も無いため、私は必要最低限を皆に伝えて神殿を出ることにした。ミリヒなど、ラマシュトゥの神官と聞いただけでナリアの事件の怨みを爆発させないとも限らない。
クインクさんに聞くと、ストームアンダーという温泉があるらしく、どうやらここが昔ストームゲイザーと呼ばれていた地であるようだ。その場所はサンドポイントのはるか北、リドルポートよりも北にある。
翌日、気を取り直してハワードの結婚式を執り行った我々は、即座にリドルポートに向けて出発した。ハワードは新婚旅行と称して盛んに南の国へ逃げたがったが、結局折れてついてきた。…気持ちは分かるぞ、ハワード
海路でリドルポートまで数日、リドルポートから船で川を遡って数日、山歩きを1日。こうして、我々はストームゲイザーの遺跡にたどり着いた(途中で温泉も入った)。

7つの石像と白い竜

遺跡には、7人のルーンロードを模した7つの巨像が円上に置かれていた。ザリヤサに教わったとおり、ルーンロードに祈りを捧げ、それぞれが得意とするスクールの呪文を唱えると、呪文の力が吸収され、像の口がわずかに開いた。そこまで登ってみると、その口の中に半透明の鍵が見える。これが必要な鍵なのだろうか。しかし、開いた口は小さく、手は入りそうにない。おまけに罠がかかっているようで、無理にこじ開けたり壊したりすれば、像が連鎖的に爆発して我々は消し炭になってしまう。私は魔法の道具を騙す技術を用いて、像に鍵をはき出させることにした。その作業は困難を極めたが、大きな失敗はなく、7つの鍵を手に入れることができた。
7つめの鍵を手中に収めたその時、山陰から巨大な影が飛来してきた。あれは…この前図書館で読んだFrozen Mawだ!
突然襲い来るFrozen Mawへの恐怖に、我々は敵の姿が巨大に見えていたが、我々の近くに着陸したドラゴンは思ったより大きくなく、その氷の息も絶望的なまでの威力ではなかった。
ドラゴンはやはり強く、二度目のブレスでリリーが死にそうにもなったが、前衛にDisplacementやStoneskinなどの防御術が飛び、ドラゴンの体力は徐々に奪われていった。
これはもう勝てないと悟ったのか、Frozen Mawは空へと逃げ去る。私の雷土のワンドは呪文抵抗にはじかれ、ドラゴンは飛び去った。また急襲されるのはいやなので、ドラゴンが向かった先にリリーとテレポートすると、そこにあったのはさらなる高みへと続く階段。これが、ザリヤサが言っていた階段か。Frozen Mawは、その階段の先にある洞窟へと逃げ込んだようだった。
一度合流し、階段を登る。途中まで進むと、グレーターアースエレメンタルが出てきて襲いかかってきた。こいつらとまともに戦うのは分が悪い。透明になれば抜けられることに気がついた我々は、インヴィジスフィアでアースエレメンタルを迂回し、ドラゴンの洞窟へと入っていった。

ドラゴンの財宝

洞窟の床は滑りやすかったが、像の幻影に隠された安全のためのロープを見つけ、どんどんと下っていく。その先には深い、大きな穴が空いており、そこにはFrozen Mawのものと思われる金銀財宝が。もっとも、肝心のドラゴンの姿はどこにも見えない。みんな喜び勇んで降りていき、宝を調べる。それは6万gpは下らなさそうな莫大な宝であった。ドラゴンのことも忘れ、我々が宝を手に歓声を上げていると、自分の宝が盗まれることに我慢が出来なかったのか、隠れていたFrozen Mawが、怒りの咆吼をあげて突撃してきた。しかし、今度は我々は冷気への耐性を呪文で得ていたので、大きな犠牲を払うこともなく手負いの竜を倒すことに成功した。
ドラゴンの住処から、いくつかの通路が延びていた。この先に、ルーンフォージへと続くゲートがあるのだろうか。そこで我々を待ち受けるのは、ルーンフォージの特殊な力によって今なお生きながらえる研究者達か、それともその亡霊か。ルーンシーカーズの受難は続く。