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第12回セッションログ

  Ordu-Aganhei初日:異国の宴のこと(Rosettaの手記より)


 長かった氷原も終わり,ところどころに緑が見えるようになってしばらく,ようやっと街らしい街にたどり着くことが出来た.遠くから硫黄の匂いがかすかに漂っていた.

 蹄に踏み固められた道を通り,街,Ordu-Aganheiに立ち入ろうとしたところ,制止の声がかかった.私らがOrdu-Aganheiを歓迎するほどには私らはOrdu-Aganheiに歓迎されていないようだ.

 私らを立たせたまま,声の主(衛兵だ)は季節外れなのになぜ極点を超えてやってくるのか,と訝しげな様子で,持ち物を改めようとしてきた.賄賂をたかる豚であればまだ楽なものを,この手の犬はなまじ熱意があって清廉なぶん誤魔化しが効かず厄介で仕方ない.

 実際のところ私らにやましいことなどは何もないのだ,Ameikoの正体とそれに連なるAmatatsuゆかりの品をのぞいては,であるが.いくつかあるAmatatsuゆかりの品のうち,Suishenは名品といえる剣であり,Kiriのような武人が身につける分には不自然はあるまい.しかし,Amatatsu Sealは1feet四方はあろうかというジュウバコ(Tien地方の積み重ね可能な器)なので,怪しい上に隠しようもなかった.幸いにもKiriがHoldPortalのScrollを持っていたので,これをかけ,開かない箱は怪しいのでHalfwolにMinor Imageを使わせ,他のものに見せかけることにした.とはいえ,一抱えもある大物で,隠しおおすには呪文だけでなく頭をつかう必要があった.

 石材に見せかけよう,とDianが言ったが,それにしては軽すぎる.Risakaが珍しく,香木にしてはどうか,と気の利いたことを言ったので,ありがたくそれにした.

 衛兵は立場相応の目利きであったため,Sealについてはごまかすことが出来た.私らは城門をくぐって久方ぶりに人間らしい街に足を踏み入れることが出来た.

 その後も衛兵は未練がましくも何かでやしないかと馬車に顔を突っ込んで探っていた.
邪魔をして蛇を出すのも何であったので,私は道の脇に腰を下ろし,何をするともなしに大通りを眺めていた.

 やおら,身なりのいい男が街の大通りを通ってやってきた.男は衛兵を呼びつけると,耳元でなにごとかささやいた.その時の衛兵の表情の変わり方と言えば,身を伏せる犬,犬らしさの面目躍如であった.

 様子から察するに身なりのいい男は相応の権力者らしく,Dianの見立てによると,この都市の支配者の側近であるということであった.

 男はChuaと名乗り,ハーン(この街の支配者)の相談役をやっている,とTaldanで述べた.続けて,このような季節に極点を超えてくる者は珍しいとのことで,歓待したいという旨を述べた(彼のTaldanには不自然な訛りは残るものの,文語的で硬い言い回しもあって,知性が感じられた)

 Chuaは「あなたのような美しい方をお招き出来るとは光栄です」とかなんとか,本で読んだような世辞とともに私に黒い薔薇を渡してきた.Dian博士に聞くも,この行為に特に含意はないらしい.黒薔薇を贈ることが「お前を殺す」や「結婚してくれ」を表す文化でなかったことにわずかばかりの安堵を覚えた.

 Chuaは異文化に対する理解と教養が感じられる人間であったし,不意打ちで無礼を働くこともないように思える.花を贈られることには慣れていないが,礼には礼,恭しくも受け取っておく.
こういったところは流れ者の処世術.無頼ゆえに仁義を切らねばならんというところもあるし,無闇に点数を下げてよい相手でもないということだ.

 ただ,それでも,警戒だけはしておかねばならない.私らは,追われているのだ.




 私らはChuaのあとに従い,ハーンの宮殿へと足を向けた.道すがらDianにハーンの特徴を聞いた.逆らうものに対しては容赦せず,常に笑顔を絶やさぬとか.また,異国の女が好みで多数囲っているとか.

 聞くんじゃなかった.

 守りを考慮して曲がりくねった道,硫黄の香りの中を抜けると,金色の湖の側に盛大な宮殿があった.

 私らは100y四方の部屋に通された.あまたの女官に囲まれ,玉座で肘をつく薄ら笑いを浮かべた男.この男がハーンある.

 ハーンは薄ら笑いを仮面のように貼り付けたまま,こちらをチラッチラッ見てくる.色目を使われるのは気持ちのよいものではない.はぐれ者が貴族に見初められて妾になるというのは,それはそれで幸せでひとつの上がりなのであろう.ただ,うつろう寵愛とやらに己の生を委ねるなどぞっとしないし,第一斯様な狒狒爺など,ありえぬ.こいつは以降「愚鈍マン」と呼称することにする.

 愚鈍マンはこの季節に極点を超えてきた勇者たちを贅を尽くした「五日間の宴」にて歓待するという.先を急ぎたいところではあるが,逆らうものに対して容赦しないという噂もあるし,あまり無礼は働けない.これから五日間も宴の場でこの視線にさらされるかと思うと気が滅入る.なんとか途中で街を出ることはかなわないだろうか.

 Kiriが「斯様な素晴らしい場にお招きいただき有難き幸せ,出来れば我々の仲間にもこの場を許していただけないでしょうか」といったところ聞き入れられたので,Shaleluを連れてこようと誓った.愚鈍マンがいいよったりもするだろうが,長く生きたElfならそれを退ける世間知もあるだろう,何より,彼女にはナイトがついている.



■■■本日のメニュー■■■

  • アヒルの頭
  • 牛の頭
  • 亀の煮物
  • 鳩の脳みそ
  • 鳥の足
  • Tiger Dragon Phoenix Soup(猫と蛇と鶏のスープ)


 その夜になされた饗宴(Feast of Three)は素晴らしいものだった.惜しむらくは席が愚鈍マンの近くにセッティングされていたことだ.愚鈍マンは早速思惑通りにShaleluに食いついていたから私の被害は少なかったが.これでは山海の珍味も砂を噛むに等しい.

 愚鈍マンはRisakaに武器を譲ってくれといっていたが,Risakaは「えっ,ちょっと,これは……(以下脈絡のない原則論)」といつもの調子で断っており,馬子にも衣装といっても馬子は馬子だという当たり前の事実が明らかになっただけであった.愚鈍マンは笑顔を一切崩さなかったようで,噂に違わぬ人物であった.

 余興としては武術競争ということで,肉体労働はKiriに任せることにした.単純な殴る蹴るの暴行を加える事に対しては腕に覚えがあるが,戦技となればそれは戦士の領分だ.

 相手はHukという筋肉質の男だった.どうやら彼はこの宮廷のChampionらしい.この男を相手に,騎射,乗馬,レスリングの3種目で競えと,そういうことらしい.

 Hukはさすがに馬上の民の中でも選りすぐりというだけあって,恐ろしく馬の扱いが上手かった.

……馬の扱いが上手かった.

 騎射ではKiriは的に当てたがHukは図星を射抜いての勝利,乗馬でもHukが逃げ切り勝利,ただレスリングではKiriがHukの両肩をつかせて勝利.客人としての見栄を保ちつつ花
を持たせる,理想的な接待勝利に愚鈍マンも気を良くしたようで,弓と矢筒を賜れた.

 宴終わってどうにかこうにかその場を辞した.客人用のロビーに皆も一応集まりはしたが気疲れしたのもあってか皆言葉少なげであった.部屋に引き上げて枕に頭を横たえると,廊下から「どうしてAmeikoと一緒じゃないんだそっちに行かせろ」とKiriが興奮して騒ぐ声,ひたすらに困惑した色の召使の声が聞こえた.

狂乱の夜は更けてゆく……

  Ordu-Aganhei二日目:愚鈍マン,購入制限をするのこと(Rosettaの手記より)


 長らくぶりの柔らかな寝床から身を起こすと日は高く登っていた.

 スパイスと乳の入った粥を朝食として流し込み,この街で久方ぶりの補給ということで,冒険に必要な品を買い出しに行くこととした.まだ先は長いのだ.

 外に出ようとすると困った顔で呼び止められてしまった.あまり何人かで出ると「もてなしの質」を問われてしまうということで,あまり大人数で宮殿の外に出ないようにということであった.

 客人の自由を奪うことが果たしてもてなしとしてどうなのか,というようなことを言いそうな面子に心当たりはあるが,饗宴は誰かをもてなすものではない,「もてなしている」「もてなされている」という認識を共有する場なのだ.窮屈な話だが,貴族というのはそういう戦場に生きている生き物であるということだ.

 閑話休題.冒険用の資材については誰かが買えばいいからいいのだ,と代表して私とUlfで買い出しに行った.久しぶりの都市,いや,生きている都市の空気だ.Ulfも随分と街慣れした様子だった.

 魔法の商品を扱っている商店に足を踏み入れたが,どうにも店員がよそよそしい.「へぇ,ええと,今日は品切れでして……」みたいな態度をとる.他の店に行ってもそんな様子であった.なにかしらの意図が後ろで動いている模様.

 そういう機微には疎いので,Ulfとぶらぶら食べ歩くことにした.幸いにも食べ物や靴は買えたので,Ulfに靴を贈った.この街を出れば,また街道を長く歩むことになる.

 宮殿に戻って皆に様子を話すと,ほらーRisakaが愚鈍マンのご機嫌を損ねることを言うから,というようないつものバッシングが始まった.

 愚鈍マンが悪い.


■■■本日のメニュー■■■

  • 蛙の蒸し焼き
  • ガチョウの胃
  • 山羊の脚の腱のヌードル
  • 魚の唇のセロリ添え
  • アヒルの血
  • エビのカクテル

 愚鈍マンの最寄り席はShaleluになっていた.悪いことをした.Qurroが愚鈍マンをすごい目で見ていた.そのままの目でたまにこっちも見てきた.

 愚鈍マンが悪い.

 Kiriは道中のことを執拗に聞かれてTachianaのことを出さないように必死に取り繕っていた.Risakaは相変わらず武器を要求され,その場の勢いで「ハハハ,ハーンのためにこの銃鍛冶めが名品を作って差し上げますよ」とか言っていた.大丈夫かその安請け合い.

 本日の余興は影絵の人形劇.人形を操るのはHarfwol,語るはDian,馬頭琴を奏でるのはAmeiko.異国の劇ではあるものの巧みな人形捌きと語りもあってまずまずの好評を得ることができた.

 愚鈍マンは馬頭琴をくれたが,これはどうするんだ.

 宴のあとにはそろそろ愚鈍マンが鬱陶しくなってきたねぇ,ということで,Harfwolが交神よんよんして当たりをつける.しかし,予想に反して愚鈍マンもChuaも,我々の「敵」との繋がりはないらしい.それだけでも一つの収穫ではあったが,他にもいくつかの項目について啓示を受けることが出来た.どうやら街道沿いにはONIが出るらしい.

 だとすると,危険を承知でSpiritが出るという森を進むしかない.先行きは明るくない,今までどおりに.

 Ordu-Aganhei三日目:Kiri,乳首券なるTienの奇習について語るのこと(Rosettaの手記より)


 遅めの朝食をとる.外出が制限されてしまったので,私は宮殿にとどまることにする.Risakaは愚鈍マンに献上するための銃を作り始めていた.拵え自体はRisakaの古い銃を元にしているのでかなり良い物になりそうだ.

 Kiriはというと朝から鬱陶しいくらいの勢いで温泉温泉と騒ぎまわっている.確かに硫黄の湖ということは火山があるわけで,温泉があってもおかしくはない.Dianもこの地域では温泉が云々と言っていたな.KiriAmeikoは温泉に行くそうで,仲の良いことだ.Kiriの一方的な献身に見えなくもない.姉妹のようで微笑ましい.

 日も傾きかけた頃になってKiriが戻ってきたので,話を聞いたが,神秘的な光線が飛び交い,湯気と葉っぱが仕事をするという,たいそう幻想的な空間だったらしい.食事におかしなものでも入っていたかな.ある地方では狂った料理人が料理勝負に勝つために阿片をスープにいれたという話もあったと聞く.

 私が話を聞き終わった後もKiriの調子の良さは止まらず,Alderがなんだよ,私が忘れさせてやるグヘヘヘ,とパラディンがしてはいけない顔になって呟いていた.

 Kiriが悪い.


■■■本日のメニュー■■■

  • 千年卵(ピータン)
  • 牛の肺のチリソース漬け
  • 豚の顔
  • 蛇の毒のスープ
  • 蜂の子炒め
  • アヒルの足,血のマリネ

 今日の愚鈍マンは花束を抱えていた.猛烈に嫌な予感が走った.愚鈍マンはShaleluに近づくと花束を差し出し,あろうことか求婚をした.神速のお手つきである.Curroの放つ剣士独特の殺気が鋭く感じ取れた,ただ,Curroはクレバーだった.エルフと人間の時の流れが違うため,人に寄り添う妻としてエルフはふさわしくないのだ,と,愚鈍マンに滔々と説いていた.この辺りの頭の回転の速さは魔術師ならではか.Shaleluの顔に一瞬よぎった陰りを見るに,女心はあまりわかっていないようであったが.

 Kiriは相変わらず愚鈍マンから質問攻めであった.ご機嫌伺いをするのが辛くなってきたのもあって,明日にすべてを話すということになった.もちろん,前日に受けた啓示の裏付けがある故だ.

 Risakaは銃の催促をされて,「材料とか色々大変なんですよ」とまたいっときの言い逃れをしていた.自分を追い込むくせがあるようだ.

 本日の余興は「麒麟の手懐け」という火渡りの芸であった.HarfwolKiriの火渡り,演舞は素晴らしいものであったが,Ameikoが凄みかたが足りず,若干迫力にかけるものになった.

 褒美に指輪を賜れたのでよしとする.

 宴の後の交神の時間,Harfwolは「毒に気をつけろ」との啓示を得た.思えば我々は毒に苦い思い出がありっぱなしだ.KalsgardでHemrockを盛られたり,あとはニンジャとニンジャとニンジャだ.ただ,毒は不意打ちの武器,毒が来るとわかっていれば対策はどうとにもなる.情報は,占術は,毒に優るのだ.

 それ以降の手際の良さは冒険者流,というもので,記すほどのこともないだろう.

 Ordu-Aganhei四日目:Risaka,市販の花火をドヤ顔で打ち上げるのこと(Rosettaの手記より)


 潜入から監視までを完璧な連携でこなす我々を恐れたのか,賊は現れず,安全な朝食をとることが出来た.

 午前中は愚鈍マンにこの街に至った経緯を話した.司祭を呼んでZone of Truth事態の正しさを証明してから話す,そういう慎重なプロトコルに則った上で,Kiriはすべてを話した.Ameikoの出自,使命,そして敵.愚鈍マンはすべてを聞き届け,街道に賊が出てTienとは緊張関係にあること,政治的な支援はしないが,Tienが「変わった」暁には良い関係を築くことを望むこと,残りの歓待も最後まで受け続けて欲しいむねを告げた.どうにも我々は愚鈍マンの愚鈍さではなく野卑さに随分と振り回されてしまったといたようだ

 また,この日の宴はゲストの側が自国の料理・風習を使ってもてなすというものであり,Ameikoが厨房で存分に腕をふるっていた.


■■■本日のメニュー■■■

  • 生ゴミ



この日の宴のことはあまり思い出したくない.


  Ordu-Aganhei 最終日:お祭り忍者のこと(Rosettaの手記より)


 なすべきことも終わり,消化試合となった最終日.
Risakaが買い物に行っていた.ついに人間との交流を諦めたらしく,妖精さん(Spivey)にご執心のようだ.何か装飾品を買ってきていたが,Spiveyに軽くあしらわれていた.悪いやつではないんだが,不器用ではある.


■■■本日のメニュー■■■


  • 屋台
  • 馬の蹄の粥
  • 自家製鹿
  • 揚げネズミ
  • 魚の臭がする豚(豚,シシトウ,キクラゲ)の炒めもの
  • ツバメの焼き鳥
  • 蛇の頭のスープ
  • サソリ酒


 最後の宴は祭りの中で行うということで,昼過ぎには街は祭りの様相を呈していた.大通りには屋台が立ち並び,多くの人々が行き交う.

 愚鈍マンが祭りの開始を告げると多くの花火が打ち上げられた.Sky Rocketと呼ばれるこの地域の特産品で祭りの際にはこのように大量に打ち上げられるらしい.皆がRisakaに気を使っていた.

 屋台を回っていると,樽に腰掛けて揚げネズミを肴にサソリ酒やら馬乳酒やらをガンガン流しこむSandruDianの姿が見えた.HarfwolKoyaの手を引っ張って通りを駆けまわる様は実の孫と祖母のようだ.

 私はUlfと街を回っていたが,どうにも子どもたちが私を触りたがる.飛び出してきてはぺたりと触って去っていく.母親に礼を言われたので聞けばこの街には祭りの間に外国人に触れると一年の間,口づけをされれば一生の間息災になると,そういう言い伝えがあるそうだ.ある子供などは勇敢にも私の前に飛び出し,大胆にも口づけを要求した.子供のすることなので,もちろん応えてやった.Ulfの機嫌が悪い方に変わったりすると面白かったのだが,変わらなかった.むしろ,どことなく穏やかでさえあった.

 Ulfに穏やかそうな表情の理由を聞くと,自分はHalf Elfとして,あまり人間と深く関わらない生き方をしてきた,人間もまたHalf Elfと距離をおく.ただ,子供はそんなことなどお構いなしでそれがかえって救いになることもある.訥々とそう語った.

 大道芸人の周りには人だかりができていた.背が高いので人混みの後ろから大道芸人を見られるShaleluと,Shaleluに合わせるように背伸びをしてなんとか大道芸人を見ようとするCurroの姿が微笑ましい.棒の刺さった飴を片手に笑顔で話しながら往来を歩くKiriAmeikoは騎士と姫のようでもあり,姉妹のようでもあり,仲の良い友人のようでもある.

 そうこうするうち,出し物として龍の大人形をかぶった舞が始まった.龍というといわゆるDragonという有翼強欲の長虫となるが,こちらの地方では翼がなく胴が長く短い手足を持った吉祥の獣(Ronというらしい)のことも指すらしい.太鼓のリズム,スパイスの香り,極彩色の飾りと奇妙な動き.どうにも白昼夢のようで思わず見入ってしまった.

 だが,次の瞬間,大人形の衣が脱ぎ捨てられると,やおら抜刀した黒ずくめの男たちが現れた,ニンジャである.ニンジャ・リアリティ・ショックの影響で悲鳴と怒号が飛び交い,誰もが我先にとその場から駆け出す.

 特に上背のある二人のニンジャが,メンポ越しのくぐもった声で名乗りを上げた.

「ドーモ,ポルターガイストです」
「ドーモ,フラワーイーターです」
「「Amatatsu死すべし!」」

 そして名も無きニンジャが立ち並んだその背越しに,Suishenの柄に右手をかけ,左手を制するように突き出したKiriとその袖に捕まるAmeikoの姿が見えた.

 我々は宴で愚鈍マンに謁見する客である以上,武器を封印していた.普段は宮殿の中だけだが,今回は宴の会場が街全体である.Kiriが何事か唱えるとSuishenの封印は自ら焼け落ちたが,他のものは丸腰である(私の場合は柄を握りさえすれば武器の一つは使えるのだが).

「助太刀いたす」

 悲鳴と罵声の中,突如として凛とした声が響き,一陣の風が吹き抜けた.吹き飛ばされたニンジャが屋台に突っ込み.肉を焼いていた串に刺さって絶命した.逃げ惑う群衆の中から目の据わった男女がすっと現れ,武器を差し出した.使えということだろうか.

 めいめいが差し出された武器を手に取り,ニンジャと相対した.名も無きニンジャはてらてらと光った手裏剣を投げつけてきた.かわそうとして思わずたたらを踏んでしまったが,乾いた音とともに手裏剣は地に落ちた.Ulfが盾を構えていた.

 グエーッ,と聞き慣れた悲鳴が聞こえ,Risakaがフラワーイーターの掌打を受けて膝をつくのが見えた.同時に,Risakaがまさに込めようとしていた紙巻弾が灰のように風に崩れていく.そして腹パンからの流れるような肘打ちが崩折れたRisakaの首に打ち込まれた.Risakaが地に伏せるとフラワーイーターは何事か唱えて掻き消えてしまった.

 騒がしいと思うと串や箸が宙に浮き,奔流となってKiriに猛然とうちかかっていた.ポルターガイストが印を結ぶのが見えたので,何かのジツであろう.Telekinesisに近いが,もっと直接的だ.Kiriは血まみれになっていたが,なかなか倒れない.

 Curroは電撃を吐いてニンジャを掃討し,私はGritter Dustで消えようとするニンジャをあぶり出す.Gritter Dustで盲目になったニンジャは一言苦悶の声を発すると糸が切れたようにその場にくずおれた.ニンジャの首の後に生えていた短剣を引きぬき,見知らぬ女が指示を飛ばした,その声で,私は女が助太刀の声の主だと知った.

 治癒の光が乱れ飛ぶ中,Kiriは何度目ともしれず立ち上がると決断的にSuishenをポルターガイストに打ち込んだ.ポルターガイストは天を仰ぐとそのまま

「サヨナラ!」

 爆発四散した.

 呪文詠唱後の呼吸を整えながら,喧騒が去ってめちゃくちゃになった屋台村で私は立ち尽くした.


 助太刀をしてきた女はMiyoroと名乗った.どうにもこちらの事情を知っているようだったので何者かと問うと,Miyoroはあなた達には正体を見せたほうがいい,と言って自分の顔に扇をかざした.一瞬の後,扇を逸らしたときには,そこには長い口吻をもった肉食獣の顔があった.

 人狼の仲間かと思ったが,Dian曰く「狐」らしい.Miyoroは自分が森の住人であること,カミの支持を受けてAmatatsuゆかりのものを助けるべく動いていること,そしてTienに向かう際には街道でなく森を通るべきことを述べた.

 旅は道連れ,渡りに船,Miyoroとはしばらくは共闘関係が築けそうではあった.

 なお,本件について愚鈍マンからは警備の不備ということで一応の謝罪の言葉はあったが,こっちも迷惑しているんだよねというような態度であった.あと,馬をくれた.愚鈍マンはなんだかんだ言って金払いは良かったので,あの好奇心と勘気にさえ気をつければなんとかなるのではなかろうか.もう顔を見なくて済むから言えることではあるが.


日程

Ordu-Aganhei到着:4月26日(151日)
Ordu-Aganhei最終日:5月2日(155日)

ボーナスポイント

Risaka 0.6
Rosetta 0.6
Kiri 1.2
Dian 0.4
Harfwol 0.3
Curro 0