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第2話

 第2話「廃墟の中で」



地上に向かって


ニースホルムで一晩を明かした一行はチーフ・スールーの助言通りに地上を目指すことにした。
ただ、その途上にはバフォメットのカルトに転向したと思われるモングレルマン達の部族が存在するという。サールディンペンテシレイアは可能なら彼らを改心させ協力したいと考えているようだったが、ほとんどの面子は望み薄だと考えていた。
怪我を押してついてくることに決めたアラヴァシュニアル達4人も加えて教わった場所に向かう。はたして斥候として先行していたペンテシレイアは粗末なバリケードとそこを守るモングレルマン2人を発見した。
とにもかくにもまずは地上の窮状を訴えようとしたが、彼らはサールディンの盾に書かれていたアイオメディの紋章を見ると激昂し襲い掛かってきた。どうやらパラディンが自分たちを討伐しに来たと考えたようだった。
いまだ力も地位もない一行に彼らの疑念をはらすだけの根拠を示すことなどできず、結局は増援で現れたモングレルマン2人と指揮官らしきレンジャー、飼いならされていたフィーンディッシュ・ジャイアント・リザード2匹も含めて皆殺しにするしかなかった。
降伏を呼びかけながらも、先頭で次々とモングレルマン達を切り倒したサールディンを見るアネヴィアの目には、隠しきれない恐れが見え隠れしていた。

物言わぬ襲撃者

治療などを施した後、地上への通路を目指してさらに探索を続ける一行。
隣の部屋で下層に降りる縄梯子を発見したものの、地上への帰還を主目的とする一行は後回しにして別の場所を調査することにした。
同じ部屋にあった扉を開けたところ、その先はゴミ捨て場のようで異臭が漂ってくる。先に続く扉も通路もなさそうなので別の場所に行こうとした時に、部屋をのぞき込んでいたペンテシレイアの視界に動くものが映った。
なんと天井にウィップ・ジェリーと呼ばれる危険なウーズが潜んでいたのだ。ウィップ・ジェリーはウーズとは思えない素早い動きで接近してくると、一行を捕食しようと擬足を長く伸ばして攻撃してきた。
その攻撃回数と広大な攻撃範囲に苦しめられたものの、1匹しかいなかったのが幸いして何とか勝利することができた。
しかし、かなり消耗してしまい、今後の邪教徒との戦いに一抹の不安を感じたのだった。

邪教徒との戦い

他の場所を探索していると、向こうから物音がする扉があった。おそらく扉の向こうにはモングレルマン達が待ち構えているのだろう。
覚悟を決めて扉を開けると予想通り待ち構えている人影がある。予想と違ったのは待っていたのがモングレルマンではなく、黒いチェインシャツとホーンドヘルム、そしてグレイブで武装した人間だったことだ。おそらくはこいつらがバフォメット信者であろう。バフォメットの好む武器はグレイブなのだ。
ここでも降伏勧告も虚しく戦いになり、ラオツェンの会心の一射などもあり、ほどなく邪教徒たちは殲滅されたのだった。

出口にて

この部屋には上層に続く梯子があったので、そこを登ることにする。
先頭のペンテシレイアが梯子を登りきるとその先には通路がつながっており、バリケードと3人のモングレルマンがいた。ここでモングレルマン達の領土が終わるのだろうか?
モングレルマンは突然現れたペンテシレイアを不審そうに見ると「お前は何者だ?ホシラ様の部下か?」と尋ねてきた。よく分からないがホシラというのがここのボスなのだろうか?
ペンテシレイアは下の仲間に上がってこないように合図すると適当に話を合わせることにした。
「え、ああ、そうそう。ホシラ様の部下よ」
しかし、うまく誤魔化せなかったようでモングレルマン達は明らかに疑いの目で見ている。実践ではなかなかドーレスタに教わっていた通りにはいかないようだ。慌てたペンテシレイアはいちかばちか相手を脅しつけて言う事を聞かせようとしたが、これもうまくいかなかった。
ここにいたりどうも状況がまずそうとみたサールディンが登ってきたことでモングレルマン達は再び激昂して戦端が開かれた。バフォメット信者によほど刷り込まれているのか、パラディンを相当嫌っているようだ。
モングレルマン達は飼いならしたダイアラットをけしかけた後に突撃してきたが、通路の先で待ち構えていた一行に次々と討ち取られた。
最後の一人は抵抗をあきらめて降伏したため、捕虜にすることにした。名前を聞くとエリスマスというらしい。エリスマスは捕虜として連れていくことにした。ペンテシレイアサールディンはエリスマスを改心させるつもりらしく、いろいろと説得しているが先は長そうだった。
エリスマスに聞いたところ、思った通りここから先はモングレルマン達の縄張りではなく、地上につながっているという事らしい。
ここで、この先の行動方針について少々議論が湧き上がる。
要するにこの周辺にまだいると思われるバフォメット信者を完全に掃討してから地上に向かうか、彼らはとりあえず捨て置き一刻も早く地上に向かうかどっちにするか?という議論である。
これについては結局後者を選択することになった。地上の状況が良く分からない以上、今この瞬間にも助けを必要とする人がいるかもしれない。多数の戦力を失い、危険度がかなり下がったと思われるバフォメット信者の優先度は下げても仕方ない、という判断ではあったが、もしかしたら少々モングレルマン達と殺し合いをするのに疲れたという気持ちもあったのかもしれない。

迷宮に潜む悪魔

バリケードを越えて進んでいくと、壁が入り組んでおり狭くなっているところに出た。バフォメット信者が好む、いわゆる迷路というやつである。
いかにも罠が仕掛けられていそうなので、スラッシュから罠について学んでいたオーディーを先頭に慎重に進んでいくことにする。しかし、警戒も虚しく途中まで進んだところで敵の襲撃を受ける。何もないところからイキナリ灰色でオオカミ頭で翼を持つデーモンが出現し、オーディーを攻撃してきたのだ。奴らは魔法で透明になって潜んでいたのだ。
奇襲にどうにか耐えたオーディーが逃げ出すと代わりにシロップとサールディンが突撃するが、迷路のせいで動きが阻害され、数的優位を活かせない。しかも敵デーモンは疑似呪文能力を使って透明化を繰り返し、こちらを翻弄しつつ急所を狙ってくる。
途中でサールディンが倒れた時にはヒヤリとしたが、気合で立ち上がって戦いを継続し、苦しい戦いの末、どうにか敵を葬り去ることに成功したのだった。

廃墟の中で

しばしの休息の後さらに進んでいく一行。幸いにもこれ以上危険な目に遭うことはなく、一行の前に懐かしい日の光が映る。ケナブレスを襲った惨劇から約1日。ようやく帰ってくることができたのだった。
しかし、喜びと安堵を胸に地上に出た一行を待っていたのは予想以上に悲惨な光景だった。
彼らが出たのはケナブレスの南のはずれと思われた。近くの建物はほとんどが崩れ、火災が続いているのか空には幾筋も黒い煙がたなびいている。少し離れたところには、大地の傷跡にも見える巨大なクレバスが見え、城壁を真っ二つに引裂いていた。
周囲にはいくつもの死体が転がっているが、生きている人の気配はなく、生存者が残っているのかもわからない。ケナブレスは完全に廃墟と化していた。
あまりの惨状に唖然とする一行だったが、いつまでも呆けていても仕方がない。同行者たちとも相談したところ、ホルガス=グウェルムは自宅がどうなったか気になるし、アネヴィアはイーグルウォッチの詰所がどうなったか確認するのが希望と言う。イーグルウォッチの詰所に向かう途中でホルガスの館によれそうだったので、とりあえずの指針として生存者を探しながらグウェルム家に向かうことにした。

跋扈する邪悪

グウェルム家を目指して北上する一行だったが、街はそこかしこに瓦礫が散乱し、遅々として歩みは進まない。生存者も見る限りはいないようだ。ケナブレスは完全に滅んでしまったのだろうか。
その時、前方から何者かの声が聞こえてきた。生存者だろうか。しかし、その声は何かを嘲弄する響きを帯びている。何が起こっているのか。
急いで駆け付けると、そこでは邪悪な儀式が行われていた。地下で見たバフォメット信者たちと同じ格好をした連中が数人で非武装の市民を取り囲みグレイブを突き付けている。周りにはすでにいくつも血を流した死体が転がっており、邪教徒どもの犠牲となったのは明らかだ。その時、取り囲まれている市民の顔を見たペンテシレイアははっとした。彼の顔には見覚えがある。2日前に初めてケナブレスに来た時、少し話をした男だ。男の方もペンテシレイアに気が付いたのか、すがるような目を向けてくる。
一行の接近に気付いた邪教徒どもはこちらを見ると警告の声を上げた。
「おい、それ以上近づくとこいつを殺すぞ。大人しく尻尾を巻いて立ち去れ」
この状況では突進したところで市民を助けることはできない。足を止めたサールディンは邪教徒に問いただす。
「我々が大人しく立ち去れば、その人を無事に逃がしてくれるのか?」
邪教徒たちは顔を見合せた後、ニヤニヤしながら言った。
「ああ、いいだろう。逃がしてやるよ」
ケリアンオーディーは明らかに嘘だと感じたが、かと言ってそれを指摘したところで男を助けることはできないだろう。結局、お互い武器を構えたまま睨み合いになる。
その時、ペンテシレイアが思い切った行動に出た。武器を投げ捨てるとこう言い放ちながら前進したのだ。他の者がとめる暇もなかった。
「私が代わりに人質になるからその人を離しなさい」
バフォメット信者たちは一瞬驚いた顔をしたが、興がのったのかその提案を受け入れた。何人かが前進してペンテシレイアを取り囲むとともに、それまで囲んでいた男を追い立てる。男はよろめく足取りで一行の方に逃げてくる。
とにかく男の無事さえ確保できれば、後は何とかしてペンテシレイアを救出するだけだ。武器は捨てたとはいえ、戦闘訓練を受け、鎧も着込んだペンテシレイアならば容易くやられはしないだろう。
固唾をのんで見守る一行だったが、現実は非情だった。僅かに希望を取り戻した表情でこちらに駆け寄ってこようとする男を、邪教徒は嗤いながら背後から切り倒したのだ。
「逃げてもいいとは言ったが、逃げるところを攻撃しないとは言ってねぇよなぁ」
なんと卑劣な連中だろうか。
怒りに燃える一行は邪教徒どもに攻撃を開始。取り囲まれていたペンテシレイアも辛うじて危機を脱することに成功する。ケリアンが放ったオブスキュアリング・ミストで分断された邪教徒たちは、ラオツェンの正確な射撃やサールディン、シロップの攻撃を受けて程なく倒された。しかし斬られた男はすでに手遅れだった。
葬ってやりたいところだったが、今朝から繰り返された戦いで一行は消耗しきっており、逃がした邪教徒が援軍を呼んでくる可能性も考えられたため、ポーションなどで最低限の治療を施した後、急ぎその場を離れることにした。

ヴィッタとの遭遇

邪教徒との戦いの場を離れて先を急ぐと、今度は前方からちょっと変わった格好のハーフリングがやってきた。彼女はこちらを見かけると特に警戒した様子もなく近寄ってくる。そしてガドを目にすると「よう、ガドじゃないか。何してたんだい?」と挨拶してきた。彼女はガドの知り合いでヴィッタという商人とのことだった。
勿怪の幸いとヴィッタに状況について尋ねると、予想はしていたことだが、やはりケナブレスは壊滅状態にあるらしい。テレンデルヴもロード・ハルランも殺され、多数あった騎士団もほぼすべてが壊滅。生き延びた市民がどれだけいるかも分からないらしい。
既にデーモンのほとんどはネロシャン方面に進軍していっており、この街にはほとんど残っていないというのが良いニュースと言えなくもないか。ただ、何度か見かけるバフォメット教団のカルト員たちはまだ残っており、街の中心部で何かの作業を行っているらしい。気が滅入るものばかりではあったが、状況が少し見えたのはありがたい。
また、ヴィッタの話ではグウェルムの館はあまり傷ついておらず、倉庫にはまだ立派な鍵がかかっていたとのことだった。デーモンは人間ほど金銀財宝に関心が無いので、略奪行為などはあまり行われていないのかもしれない。
単独行動は危険なので一緒に来ないか?とヴィッタを誘ったが、集団行動は苦手とのことで断られた。また、ガドもここで別れてヴィッタと一緒に行くと言う。ここまで連れてきてくれたお礼にキュア・シリアス・ウーンズのポーションを4本くれたのでありがたく受け取り、お互いの無事を祈りつつ別れたのだった。

グウェルム家にて

グウェルム家につくと運よく巨大クレヴァスから少し外れており、建物はほとんど無傷で残っていた。ただ、流石に人影はなく使用人達はどこに行ってしまったのだとホルガスは怒っていたが、死体がない事に逆に少し安堵しているようでもあった。
ホルガスは一行を大きくて頑丈そうな倉庫に案内した。入り口にはヴィッタの言っていた立派な錠前がかかっている。ホルガスが鍵を開けると中には広々とした空間と沢山の財宝、そしてそれ以上に多数の物資が蓄えられていた。
ホルガスは財宝の山を漁るとその中から白金貨のつまった袋を取り出して一行に100枚ずつ手渡した。そしてぶっきらぼうな口調で一行に助けてくれた礼を言った。
ホルガスはこの館にこもって事態が良くなるのを待つという。なんでもこういう時に備えて食料や水も備蓄していたとのことだった。確かに頑強な倉庫の中のほうが、下手に街をうろつくより生き延びられるかもしれない。一行はホルガスの幸運を祈りつつ、イーグルウォッチの詰所へと向かうことにした。

サールディンの死

あと少しで目的地に着くと言うところで再び前方から声が聞こえてきた。
様子を伺うと、何やら数人の男が粗末な武器を持って戦っているようだった。ただ、それは自分の意志ではなく、空中を飛び回りつつ囃し立てる2匹のクアジットに強要されてのことだった。
彼らを救おうと一行が接近すると、それに気づいたクアジットは卑劣にも彼らに命令した。すなわち一行を殺せばお前たちは見逃してやると。そして呪文で姿を消してしまった。男たちは最初躊躇していたようだったが、一行の大半がティーフリングであることに気が付くと覚悟を決めたようだった。
一行がどう戦うか決めかねていると、更に状況をややこしくすることが起きた。近くの服飾店の中から助けを求める声が聞こえてきたのだ。中がどうなっているのかはわからないが、助けを求める人がいるなら無視するわけにはいかない。
最も手近にいたサールディンが服飾店に駆け込むと、そこではネズミのような顔をしたデーモンが2体、なぜか店の中の洋服をビリビリと引裂いていた。その向こうでは店の持ち主らしき夫婦が怯えて震えている。サールディンが挑戦の声を上げると2体のデーモン、アグリカンデルはギロリとサールディンを睨みつけた。
こうして戦いが始まった。路上ではペンテシレイアメイプルの呪文によって巨大化したシロップがクアジットと闘うが、透明化能力やダメージ減少に阻まれ、なかなか有効打が与えられない。逆にクアジットのコーズ・フィアーを受けてケリアンがパニックに陥ってしまう。
一方、ラオツェンは戸口越しにアグリカンデルを射撃してサールディンを援護する。しかし、これまでの戦いでの傷が残っていたサールディンは奮戦虚しく倒れてしまった。慌ててオーディーメイプルが援護に向かうが、サールディンを倒したデーモンが戸口に立ち塞がり近寄ることができない。
ようやくデーモンを排除した時には時すでに遅く、サールディンは息絶えており、店の主人夫婦も夫が殺されてしまっていた。
サールディンの死に一行は衝撃を受けたが、戦いをやめるわけにはいかない。歯を食いしばって苦しい戦いを続ける。サールディンの遺体の前で呆然としていたメイプルも怒りに突き動かされ、サールディンの形見の剣でアグリカンデルに痛撃を与えた。
最終的に一行の怒りが勝ったのか、メイプルオーディーの連携でアグリカンデルは倒され、ペンテシレイアとシロップによりクアジットのうち1体は死に、1体は逃げ出したのだった。いつもであれば勝利の喜びが湧き上がるところだが、今は喪失感しかなかった。

シロップの提案

一時的な怒りも尽き果て、サールディンの遺体の前で呆然とするメイプルにシロップが近づき、厳かな声で尋ねた。
メイプル。君がサールディンの死を悼む気持ちが伝わってくる。ひょっとしたら私の力で彼を復活させることができるかもしれない。私が本来持っていた力は生命と深く関わるものだからだ。ただ、今の私は完全な力を発揮できる状態ではない。上手くいくかは私にもわからない。だが、君が望むなら私は試してみようと思う」
メイプルは突然差し込んだ希望に飛びつきそうになったがその前に確認しなくてはいけないことがあった。
「シロップ、それを試みるのはあなたにとって危険ではないの?」
シロップは冷静に答えた。
「それもまた分からない」
メイプルは悩んだが、やはりサールディンが生き返る可能性があるのであれば賭けてみようと思った。
「シロップ、お願い」
シロップはやはり冷静に答えた。
「わかった。私を送還してくれ」
メイプルがうなずいて祈りをささげると、シロップは光になって消えた。少しだけ笑っていたかもしれない。残った者は奇跡を願いつつ見守るしかなかった。

サールディンと死後の世界

気が付くとサールディンは空中を上昇していた。足下にケナブレスが見える。更に上昇は続き、ワールドウーンズやその先の世界も一望に見渡せるようになる。サールディンは自分が死んだこと、今からアイオメディの待つ天上世界へと向かう事が直感的に分かった。志半ばで倒れたことは無念であったが、神のもとへ向かうのは光栄なことでもあった。
だがしかし、その時サールディンはどこか後ろ暗く汚らわしい場所へと自分が引き寄せられているのを感じた。必死でその力に抵抗するとどうにか留まることができたが、このままでは天上へ向かうことができない。
ふと見るとケナブレスから立ち上る沢山の死者の魂がワールドウーンズの中心部に向かって吸い寄せられていくのが見える。おそらくあの魂たちの行きつく先はアビスであろう。そしてその大量の魂がデーモンたちにさらなる力を与えているのであろう。
あまりに恐ろしい光景にサールディンが慄然としていると、どこか見覚えのある巨大な光る獣が近づいてくるのが見えた。獣はかわす間もなくサールディンを呑み込んでしまい、サールディンの意識は薄れていった。

……
………
気が付くとサールディンの目の前には心配そうに見守る仲間達の姿があった。確か最後の記憶は自分を引き裂くアグリカンデルの鋭い爪だ。どうやら自分が気を失っている間に戦いは終わってしまったようだ。面目ない事だ。何故だか非常に喜んでいる仲間たちを見ながらそんなことを考えていた。

イーグルウォッチの砦

先ほどの戦いで救った市民達から色々と話を聞く。どうやらかなり状況が混乱しているようで、ひどいものになるとクイーン・ガルフリーの正体はサキュバスだったなどと噂されているほどだ。ただ、コーラムゼイダがテレンデルヴの死体を持ち去った事は複数の市民が見ており、かなりの信憑性があるようだ。また、ワードストーンのあった場所にアビスにつながるゲートが作られたとか、狂ったクルセイダーが徘徊しているなど気になる噂を聞いた。
一行はかなり傷ついており、特に一度死んだサールディンは本調子ではなかったが、イーグルウォッチの詰所まであとわずか10分ほどのところまで来ていたので、とにかく様子だけ伺おうという事になった。市民達は今の街をうろつくより近くの建物に隠れていたい様子だったが、一行において行かれるのも不安らしく、結局ついてきた。
イーグルウォッチの詰所にやってくると損害はあまり受けていないようだったが人の気配はない。誰もいないなら訪ねても無駄かとも思ったが、アネヴィアが中がどうなっているか確認したいと言うので中を調べることにした。
しかし、入り口の扉を開けると突然虚空からフィーンディッシュ・ウルフが現れて襲い掛かってきた。これは難なく倒されたのだが、すぐに次のウルフが現れる。切りがないので扉を閉めて撤退することにした。
ただ逃げるのも何なので逃げる前にペンテシレイアが中の様子に聞き耳を立てると、中から衣擦れの音が聞こえた。誰もいないように見えたが何者かが隠れていたのかもしれない。あるいはメイプルのようなサモナーが隠れていたのかもしれない。
ともかく、これ以上の無理は不可能と判断し、知る限り最も安全と思われるグウェルム家に向かう。グウェルム家にたどり着くとホルガスは快く市民達を受け入れてくれた。食料や水も十分にあると言う。ただ、一行が捕虜として連れていたモングレルマンのエリスマスを受け入れることはできないという事なので、エリスマスはここで開放することにした。最後に説得を試みたがエリスマスは怒りと呪いの言葉を吐き捨てて走り去った。

図書館にて

翌日、メイプルが呼びかけると再びシロップが現れた。一行は喜んだがどうも様子がおかしい。今のシロップは会話もできず、行動も普通の獣のようになってしまっていた。メイプルと責任を感じたサールディンは特に落胆し、なんとかシロップを元に戻そうと密かに決意した。
それはさておき、再びイーグルウォッチの詰所に向かおうかと話をしていると、アラヴァシュニアルがやってきて珍しく申し訳なさそうに言った。なんでも昨日は言いそびれたが図書館に行きたいらしい。
そこなら逃げ延びた騎士団のメンバーが隠れている可能性が高いと言うので、敵がいる可能性の高いイーグルウォッチの詰所より先に向かうことにした。
図書館に到着すると、かなりの被害を受けてほとんどの建物が崩れてしまっているがメインホールは辛うじて原形をとどめていた。メインホールだけでも調べようと近づいていくと、中から怒鳴り声が聞こえてくる。どうも本を運び出そうとしているようだ。
中に踏み込むと司書らしき服装をした怯えきった様子の男たちに鎧を着た男が乱暴に命令している。命令している男の鎧は返り血にまみれ、血に染まったヘビーメイスを振り回す姿は狂気に満ちていた。更にその取り巻きと思われるティーフリング達が数人、手持無沙汰に立っていた。
中に入ってきた一行を見ると男は叫んだ。
「おお、お前たちもティーフリングか。よし、お前たちも俺に従え。俺はこの機会にデーモンに取り入り、力を手に入れてやる」
これが噂されていた狂ったクルセイダーなのだろうか。もちろんそんな提案に従えるはずもない。サールディンは答えた。
「馬鹿なことを言うな。この未曽有の危機に立ち向かうのに力を合わせなければならないというのに恥を知れ!」
それを聞いた男は吠えた。
「生意気な奴め。こいつは俺の獲物だ。お前たちは手を出すな!」
臆せず立ち向かったサールディンと男が激しくぶつかり合う。男は恐るべき手練れでサールディンを圧倒するが、ケリアンの回復呪文による援護を受けたサールディンはどうにか持ちこたえて反撃を繰り返す。その間にラオツェンオーディー、シロップ、ペンテシレイアが次々と取り巻きのティーフリング達を倒し、形勢が不利になってくると、男は武器を投げ出して降参した
一行は男を武装解除し事情を聴いてみた。男はシャレブと名乗り、デーモンの恐ろしさのあまり錯乱していたのだという。今はすっかり後悔し罪滅ぼしに悪魔ともう一度戦いたいとのことだ。その態度は真に迫っており一行は男の悔悛を受け入れることにした。とは言えしばらく様子を見ようと言う事で武器は取り上げたままとした。仲間を殺された司書たちは不満のようだったが、強く反対することはなかった。
 
司書たちに話を聞くがあまり目新しい情報は得られなかった。唯一分かったのはアラヴァシュニアルがリフトワーデンという組織に所属していることだけだった。
しかし、この組織について詳しいことは教えられないらしい。また、アラヴァシュニアルはオーディーの両親と面識があるらしい。ひょっとしたらオーディーの両親もリフトワーデンに所属していたのかもしれない。ただ、オーディーの両親の行方はアラヴァシュニアルも知らないようだった。
司書たちはこのまま図書館に籠城するつもりらしい。難民がいれば可能な範囲で受け入れてくれるとのこと。アラヴァシュニアルもとりあえずここに残るという事なので別れを告げた。

ホシラとの戦い

一行は再び相談し、この街でバフォメット信者たちが何をしようとしているのか何とか調べようという事になった。そこで地下のモングレルマン達を扇動していたバフォメット信者のアジトを探り手がかりを得ることにする。もし、まだバフォメット信者が残っていれば情報を聞き出すこともできるだろう。
再び洞窟に戻り、前回は無視した下層への縄梯子を下りることにする。敵が待ち構えているとまずいので、テレンデルヴの鱗の力を使ってレビテートしたサールディンが先行する。
するとそこにはまたバリケードが設置されており2人のモングレルマンが守っていた。武器を構えるモングレルマン達に向けてサールディンは地上の窮状を訴え、クルセイダーの誇りを思い出すように懇願した。しかし、モングレルマン達はクルセイダーとして戦った自分たちの先祖が受けた仕打ちを考えれば当然の報いと答えた。
その上、背後の扉から現れたエリスマスが憎しみに満ちた目で地上の連中が死に絶えていい気味だと嘲笑った。彼らの憎しみは相当に深いようだ。
その間に他の仲間も梯子を下りて来て戦いが始まった。すると奥の扉が開いてグレイブを構えたバフォメット信者が3人出てきた。そのうち一人は明らかに豪華な装備をしている。これがおそらくホシラという敵の指導者だろう。
ホシラはインクィジターでジャッジメントやベインを使って攻撃してきた。特にベインによる追加ダメージがきつい。しかし、最終的には隅に追い詰められて最期を遂げた。信者たちは死ぬまで戦ったので残念ながら尋問はできなかったが、ホシラが隠れていた部屋を調べると怪しい手紙を発見した。

ホシラへ

今はケナブレスに残って欲しいが、その街に残された時間は数えられるほどしかない。

安全な場所を探せ。…お前の地下人の召使い共の住処であれば、来る大破壊から難を逃れるに十分だろう。

俺はすぐにドレゼンの指揮を任されることになる。ヴォーリシュがWardstoneに最後の仕上げをすれば、ケナブレスは我々にとって何の意味も無い街となるだろうから、そうなったら私の元に戻ってくるがいい。

そういえば、ヤニエルの武器をミュージアムから盗み出したらしいな、よくやった。聖女の武器が堕落する姿を見るのが待ちきれないぜ。

ケナブレスを離れる前に、アルバークロフトの屋敷、トパーズソリューション、そしてエストロッドの塔に寄って、念のため何の証拠も残らぬように掃除しておけ。合い言葉は、「書庫への新しい資料を持ってきた」のままだ。

では、デスカリ様とバフォメット様の導きがあらんことを。

S.V.


どうやらホシラはかなり前からケナブレスに潜入して色々と工作をしていたようだ。聖なる剣を盗み出したり、他にもいろんな場所で活動していたようで、今はデーモンのケナブレス襲撃に巻き込まれないように地下に隠れていたらしい。とりあえず、手紙に書かれていた場所を調査して連中がどんな活動をしていたか調べることにした。
また、部屋からはホシラが盗み出した聖剣も発見されたので、これも大事に持っていくことにした。

(続く)