トップ 差分 一覧 ソース 検索 ヘルプ PDF RSS ログイン

第2回

燔祭 part2


 黄昏の剣士

サンドポイント地下の迷宮でアドレーを失った一行は大きな衝撃を受けていた。アドレーの敵を討ちたいのはやまやまであるが、正直、クアジットに率いられたシン・スポーンの群れに立ち向かうのは恐ろしい。ましてや今はミリヒと並んで盾となってくれていたアドレーはいなくなってしまったのだ。戦力不足は否めない。
町長のデブリンも同じ危惧を感じたのだろう。一行の元に一人の男を連れてきた。
男の名はファロン。一目見ればちょっと忘れられないような醜い容貌、垢とふけにまみれたざんばら髪に汚れ放題に汚れ異臭を放つ装束、見た瞬間に一行が慌てて距離を置いたのも無理はなかった。この男は何者か?と問えば、自分はエルフより秘伝の魔術と剣技を学んだエリート中のエリートと答える。お前たち惰弱な劣等種族に力を貸してやってくれと切に頼まれた故、力を貸すのだと。
言ってる事はアレな上に大変失礼な態度であるが、その眼差しに宿る光は真剣だ。任務のためならば死をも恐れない、その覚悟が見え隠れする。一行は彼の言葉を信じることにした。とにかくサンドポイントの地下に眠る脅威を取り除くことは絶対に必要なのだ。そのためにこの男の力が役に立つというのならば、多少の問題には目をつむらねばなるまい。
……とはいえ、ファロンの5フィート以内に近寄ろうとする者はいなかったが。
 

 雪辱戦

ファロンを加えた一行は再び地下へと向かった。デブリンに直談判して高価な足止め袋を購入、これをぶつけて厄介なクアジットを仕留める作戦である。途中、1匹でウロウロしていたシン・スポーンを軽く蹴散らし、前回アドレーが倒れた広間に辿り着いた。
入口のダブルドアには閂がかかっていたが、ファロンミリヒが協力して無理やり押しあけて中に入る。中には何の姿も見えないが、虚空より声が聞こえる。魔法で姿を消したクアジットが潜んでいるようだ。
しばし挑発したが姿を見せないのでほっといて魔法の泉をどうにかすることにする。手近な扉を剥いで蓋をしようとすると、流石に我慢できなくなったのか泉の中に潜んでいたシン・スポーンが飛び出してきた。更に姿を消していたクアジットが、一人離れた所にいたリリーに襲い掛かった。
シン・スポーンミリヒハワードが迎撃するも、ミリヒがかなりの手傷を負わされ劣勢。急いで援護に向かう他の面々。一方でリリーは逃げきれず、クアジットの攻撃の前に倒れた。クアジットの攻撃は重要な血管を傷つけていたらしく、床に見る見るうちに血だまりが広がっていく。癒し手であるガムが駆けつけた時には、既にリリーはこと切れていた。
またも出た犠牲者に一行は騒然とするものの、悲しみを怒りに変えクアジットに集中攻撃を加える。シン・スポーン達はケルダのカラースプレーにより朦朧としており、当面はほっといても大丈夫だ。
だが、現実は残酷だ。全員の集中攻撃を浴びながらも、異界の住人たるクアジットは倒れない。邪悪な魔力がその身を守り、超常の生命力が傷つくはしから傷を塞いでいく。クアジットは必死の一行を嘲笑うかのように再び姿を消すと逃走し、またもや魔力の泉からシン・スポーンを呼び出した。朦朧としていた最初の二匹も動き出し、三体のシン・スポーンが迫ってくるに及んで、ついに一行は敗走した。リリーの死体は回収できたものの、度重なる敗北に一行の心は打ちのめされていた。
 

 決戦、三度

失意の一行がサンドポイントに戻ると、リリーの師匠のエルメランがやって来てすごい魔法でリリーを生き返らせてくれた。前回デーブが生き返らなかったので半信半疑だった一行も魔法の力に目を見張った。
こうして三人目の犠牲者を出す羽目にはならなかったものの、同じことを繰り返していても勝ち目は薄い。一行は市長のデブリンやクインクと相談し、倒すのがきわめて困難なクアジットはとりあえず無視し、直接的な脅威度の大きいと思われるシン・スポーンを撃破して敵の戦力をそぐ方針に切り替えた。
泉の力がどれ程のものか分かっていない以上、シン・スポーンは無限に増やせる可能性もある、まずは元凶たるクアジットを倒すべきという意見もあったが、泉の力が分からない以上、逆に有限であるという可能性もある。そもそも無限にスポーンを増やせるのなら、とっくにサンドポイントは蹂躙されているのではないか、という見解からだ。
三度迷宮に向かうと、今度は見張りがいない。やはり敵も戦力が尽きてきたということだろうか。
一行が広間に踏み込むと、流石にクアジットもこちらが脅しや甘言に屈しないことを理解したのか、最初から三体のシン・スポーンが待ち構えていた。更に両脇の扉から退路を断つように二体のシン・スポーンが現れる。厳しい戦闘の予感。
しかし、一行の不屈の意志が幸運を呼び込んだのか、この戦いは終始一行の有利に進んだ。後方から現れた二体のシン・スポーンケルダハワードが足止めしている間にミリヒファロンが順調にシン・スポーンを撃破。過半数のスポーンがやられた時点で逃げ出したクアジットは仕留められなかったものの、五体のスポーンを危なげなく撃破し、ようやく勝利をつかむことができたのだった。
 

 ルーンウェルとルーンロード

どうにかシン・スポーンは殲滅したものの、このルーンウェルがある限り、またいつ何時新たなスポーンが生み出されないとも限らない。だが、ケルダがルーンウェルを調べてみたところ、どうやら魔力を使い果たしているらしく、当面、スポーンを生み出すことはできそうにないということが分かった。これに安心した一行は、他に怪物がいないか迷宮の探索を続けることにした。じつのところ、スポンサーであるクインクからもっと学術的価値のあるものを取って来いと言われているので、手ぶらで帰るわけにはいかないのだ。
この町出身のメンバーは町の危機だと言うのにそんなことを言うなんて、と憤っていたが、クインクにしてみれば一行は傭兵ではなく、あくまで遺跡調査のエージェントとして雇っているので、本来の任務でない戦闘にうつつを抜かして犠牲ばかりを増やしているのではたまったものではないのだろう。
そんなわけで奥に進んでいくと、なにやら美しい顔に激しい怒りを浮かべた女性像が。ここのルーンウェルは怒りを象徴するという話だったし、ひょっとして古の怒りのルーンロードの像だろうか?調べると手にしていたランサーが外れそうだったので持っていくことにする。また、女性像は左手に書物を持っており、そこには意味ありげな紋章が描かれていた。どうも、古のルーンロードの力の源となった7つの感情を表現した模様らしい。
 

 コルバス

それはさておき一行は生首に翼が生えたような姿の奇妙なモンスター(ヴァルグイユ)を撃破しつつ迷宮の奥に進む。すると床に多数の深い穴が開いた奇妙な部屋がある。穴の底からはうめき声と何かがうごめく音が聞こえており、そこに何かモンスターがいるようだ。
また、部屋の中には誰も見たことがない、悪夢のような姿をしたモンスターがいた。肥大した頭、両脇から生えた二対のゆがんだ腕、極めつけは頭頂部から生えた二本の足だ。足と言っても矮小なそれは何の役にも立ちそうにない。
この化け物の名はコルバス。元はゴブリンの族長だったが、邪神の力を得てこのような醜い姿になったらしい。縦穴に閉じ込められているゾンビが逃げ出さないように見張っているのだということ。あまりに気持ち悪い姿だったせいか、一部のメンバーが邪悪許すまじと攻撃を開始したのでなし崩しに戦闘に。まあ、こんなのが故郷の町の地下にいると考えるとたまったものじゃない、というのはよく分かる。
これまたファロンミリヒの集中攻撃を受けてあっさり倒れる。ファロンは大変臭く、こういう非常時でもなければ到底お近づきになりたくない輩ではあるが、その実力は本物だった。
これ以外にはモンスターの姿は見当たらず、外に出る扉なども見つからなかったため、戦利品をかき集めた一行は意気揚々とサンドポイントに凱旋した。
市長のデブリンは一行に感謝し、クインクは持ち帰ったランサーや女性像に刻んであった紋章に興味深々で、一行を見なおしたようだった。クインクはそれ以外の戦利品なども買い取ってくれたが、合計550gpでは、合わせて200000gp近い借金の前には、すずめの涙ほどもなかった。先は遠い。頑張れ。
 

 決着をつけに

翌日一晩休んだ一行は、ツトナリアとの決着をつけるためにアザミ野に向かうことにした。出発の準備をしているとツトの姉、アメイコが訪ねてくる。いまやカイジツ家の唯一の生き残りとなってしまったアメイコは当然のようにカイジツ家の遺産を受け継ぐことになった。しかし、アメイコとしては既に家とは縁を切ったつもりであり、また経営する酒場があれば生活には困らないこともあって、遺産を受け継ぐつもりはないようだ。
そこで、迷惑を掛けたお詫びの意味で屋敷や家財道具を売り払い、クインクへの借金返済に充ててくれたそうだ。その代わりと言っては何だが出来ればツトを殺さずにとらえて欲しいと頼まれる。もともとツトを殺すことに抵抗感のあるメンバーは、約束はできないが努力はすると言った。
途中で遭遇したジャイアントゲッコーをハワードが一撃で殺したりしつつアザミ野に向かう。アザミ野は思ったよりも近く、歩いてわずか2時間ばかりの距離だ。って言うか、こんな近くにゴブリンの集落があるんじゃ危なくて仕方ない。
アザミ野はその名の通りそこら中にアザミが生えており、まるで迷路のようになっている。扉の様に加工されている個所があるところを見ると、ゴブリン達が手を入れて砦代わりにしているようだ。
中を探っているとゴブリン達が隠れているのをファロンが発見したので、攻撃を仕掛けてみる。ゴブリン達は逃げ出したが、上手いこと一体を捕まえる事が出来たので、尋問して情報を聞き出す。このゴブリンが言うには、この近くに海上に突き出した高さ80フィートもある巨大な岩場があり、つり橋を渡っていけるようになっている。ツトナリアはその中にいて、ゴブリン達の親玉をたぶらかしているとのこと。つり橋のこちら側をまとめているのはゴブリン達のドルイドらしい。一行はまずはそのドルイドから片付けることにした。
 

 ドルイド輝く

ゴブリンから聞き出した、ドルイドの居場所に行くと、そこには鎖に繋がれたゴブリンドッグがいた。
ここは遠距離攻撃で倒そうかと相談していると、反対方向から10体ものゴブリン、そしてゴブリンドルイドがやってくる。悠長なことは言っていられなくなったので、ゴブリンドッグ達はケルダのカラースプレーで一網打尽にし、ゴブリン達を迎え討つべく態勢を整える一行。しかし、そこにゴブリン・ドルイドのエンタングルが炸裂。一行の半数が捕えられてしまった。
一行もリリーのグリースで反撃。突撃して来ようとするゴブリン達をすっ転ばせることに成功したところ、その様子はいたくゴブリン達を面白がらせたらしく、ゴブリン達はしばらく戦闘そっちのけで床で滑って遊んでいた。何やってるんだか。
この後は気を取り直したゴブリン達や、ドルイドの森渡り能力を使ってアザミの壁の中をすいすいと行ったり来たりするゴブリン・ドルイドに手こずらされたが、結局はケルダのカラースプレー連発と、ファロンハワードの活躍でゴブリン達は全滅、ドルイドは降参した。
ちなみにシナリオに寄ると、ここではドルイドが大活躍できるよ!みたいなことが書いてあるらしいが、活躍したのはゴブリン・ドルイドだけだった。ガムミリヒのドルイド2人は結局最後までエンタングルから脱出できなかったとさ。
 

 つり橋とくればやっぱり……

降参したドルイドからいろいろ情報を聞いてみたが、特にさっきと違う情報はないようだった。こちら側のゴブリン達はあらかた片付いたようなので、いよいよつり橋を渡って本拠地に乗り込むことにする。
アザミ野と巨岩をつなぐつり橋は長さ約60フィート。下の海面までは80フィートもあり、落ちればまず助かりそうにない。しかも海面はひどく荒れており、運よく助かっても溺れ死ぬのが関の山だ。とにかく慎重に渡ってみることにする。
すると、橋を中程まで渡ったところでファロンが反対側の橋の根元でゴブリン達がロープをほどこうとしているのに気がつく。この低レベルパーティーに対して透明な敵が待ち伏せってどうよと思うのだが、言っても仕方ないので、諦めて運命のイニシアチブを振る。

DM note: ここは、「つり橋のロープが一本切れて、乗っかっているPC全員が落ちちゃうトラップ」だったのですが、見事に全員が同時につり橋をわたり始めちゃったので、変更しました。「Reflexセーブに成功すれば残ったロープにしがみついて落ちない」ことになってたんですが、確率的にパーティの半分以上が海に落ちてしまうもので...。


幸いにもゴブリン達のイニシアチブは非常に遅かったため、橋は落とされてしまったものの、一緒に落下する羽目になった者はいなかった。多少の手傷はおったもののゴブリン達と増援のゴブリン・ドッグを片づけた所で、一行は困った問題に直面した。
例の運命のイニシアチブ。イニシアチブに勝った一行は前のめりにも前方に向かって突撃、橋を落とされる前に渡りきるという荒業に出たのだが、ただ一人リリーだけは後方に下がってしまっていたのだ。
今や、リリーと残りの面々の間には幅60フィート、深さ80フィートの巨大な断層が広がっている。鳥でもなければ到底渡ることはできない絶望的な隔たりだ。準備の良いハワードはロープを持っていたものの、その長さは50フィート。足りない。このままではリリーは一人置き去りである。というか、むしろ渡っちゃった連中はどうやって帰るんだ?
その後、一行は服を裂いて紐を作ったり、何とか橋を引き上げられないか試したりと、試行錯誤を繰り返したが、結局、現状ではどうにもならないということが分かっただけだった。
 

 本拠地突入

仕方ないので、最終的な結論は、リリーが街に戻ってロープを買い足してくるというもの。リリー一人でゴブリンにあったりしたら命の危機だが、この際、他に選択肢がない。
幸いにもリリーは無事にサンドポイントに辿り着いた。ロープを買うという話だったが、それよりも魔法で何とかならないかと師匠に相談したりした結果、どこでどうなったのか、船を雇って海から近付くという事にいつの間にかなっていた。
リリーは足元を見られてぼったくられつつも、どうにか問題の巨岩の下までたどり着き、その後も色々と苦労してどうにか合流することができた。その頃には既に夕方になっていた。もう今日は帰るかという案も出たものの、明日また来た時に、ここまで登ってこれるか正直自信がない。今日行けるとこまでは行こうぜと言うことに。
一行はリリーが雇った船乗りにあと1時間だけその場で待っててもらえるよう頼むと、内部に突入した。
内部はゴブリンで溢れかえっているということもなく、とりあえずシーンとしている。まあ、時間もないことだしザクザクと探索を進めていると、屋上に盗み食いをしたので見つからないように隠れていたというゴブリンがいたので、再び情報を聞き出す。どうやらツトナリアは地下にいるらしい。反対方向だったか。
その後、ゴブリンドッグが放し飼いになっていた中庭は見なかったことにして進むと、唐突にボスっぽいゴブリンがいた。ジャイアントゲッコーにまたがった体格のいいゴブリンである。当然の様に戦闘になるが、このボスゴブリンもお伴のバードゴブリンも結構ACが高く、戦闘は長引いた。しかし、最後には全員打ち倒された。この戦いでもハワードは一撃でジャイアントゲッコーを倒し、ゲッコー殺しの異名で呼ばれるようになった。ボス戦で消耗し、またそろそろ約束の1時間だったので、今日はここまでにして一旦サンドポイントに撤収することにした。まあ、ゴブリン達は15体ぐらい倒したので、ツトナリアが何を企んでいるにせよ、手駒を失って計画に遅れが生じているだろう、と期待しつつ。