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第20回セッションログ

大陸は東の果てに、ミンカイと呼ばれる半島がある。
縦に長く突き出した、歪な手甲のようにも見えるその国は今、異形のものどもに支配されていた。
数千年に渡ってその地を守護していた天皇家の末裔、アメイコ姫が一風変わった仲間達と共に北極圏を超えてやって来たのは、人々がその支配から立ち上がろうとし、鬼と人との戦が始まろうとしていた、そんな最中だったのである……


 沿岸丘の夜


ミンカイを支配するには三つの物を支配すれば良いと言われている。
ゲイシャ、ニンジャ、ダイミョウである。
その内の一つ、政治を司る芸者を手中に収めた一行は、次は情報を司る忍者に渡りを付けるべく、沿岸丘の街へとやって来ていた。


「昨日は大変だったわ…」
アメイコがそう呟くのもその筈で、昨日は忍者達の情報を得るべく黒い屋根マーケットへ行ったはいいが、警吏に紛れ込んでいた鬼と一悶着あったのだった。
「さすがに私も武器の持ち込めない場所での戦闘は苦労しました」
そう答えたキリは、ガスバーナーブレードを商談用の錬金術アイテムだからと、こっそり持ち込もうとした事はどこ吹く風である。

武器を預けた状態での鬼達との対峙から命からがら逃げ帰って来た翌日の一行は、三々五々と羽を伸ばしていた。クーロは喜び勇んでシャレルとデートに行ったし、ハルフォルやロゼッタもそれぞれコヤやウルフと市場に出かけたらしい。どこへも出かけていないのは、暗殺の危険の付き纏うアメイコと、その護衛のキリ位なものである。
それでも折角の沿岸丘なのだからと、キリはアメイコをディナーへと連れ出していた。


「やっぱり二人で危なくない?」
「大丈夫ですよ。宿からはあまり離れていない場所ですし、ディアン達もきっと近くで飲んでます」
それに、とキリは笑顔で続けようとしたが、それは叶わなかった。
突然キリの体に飛来した手裏剣が、その言葉を奪ったのだ。
笑顔を凍らせたままゆっくりとキリは倒れ、その後ろには黒衣を纏う面頬の男。
「ドーモ、アメイコさん。ブルームです。アマタツ死すべし!」

(アイエエエ!ニンジャナンデ!?)
不意のニンジャの出現に、店にいた客や店員は次々と逃げ出したが、アメイコは冷静だった。手裏剣の突き立ったままピクリとも動かないキリの元に寄ると、脈がある事を確認し、手当を始めたのである。
ブルームは手裏剣をアメイコにも向けるが、アメイコは態度を崩さなかった。自らも血を流しながらも、キリにキュアをかけ続ける。
「何故だ。何故そんなに落ち着いていられる?私はお前を殺しに来たのだぞ?」
「大丈夫よ」
アメイコは言い切った。
「すぐに仲間が来るわ」

「その通りだよ。一先ずスパイビー様の到着さ」
真夏の夜の開け放たれた小窓から、治癒のエナジーを降り注ぎつつ現れたのは妖精のスパイビーだった。
「何故こんなに早い…!?」
「ディアンが丁度斜め向かいの店にいてね。通りかかった僕を移動させてくれたのさ。後は僕の瞬間移動術との合わせ技だよ。どうして飲んでるのにあんな的確な連携が出来るのかは、僕には分からないけどね」
スパイビーはキリの止血を完了させると、アメイコを促して店の外へと瞬間移動した。
しかしブルームも、起き上がろうとしているキリや、遅れて入り口に駆けつけたクーロやリサカには目もくれず、アメイコを追いかけて店の外へと出る。

「よくもアメイコを…」
同じく窓から入って来たハルフォルに回復されて、キリは完全復活しつつあった。
「アメイコは…私が、守る…!」
キリはブリンクすると壁を抜けて、再びアメイコに狙いを定めたブルームへ一息に斬り掛かった。
「そのようななまくら武器でこのブルームを倒そうとするとは、笑止千万…!」
当たったかに見えたキリの攻撃は霞のようにかき消され、返すヌンチャクでその手からスイセンは打ち落とされた。そのままスイセンはキリの周囲を回り、ダメージを与える。
「それなら!」
キリは仕方なく目を輝かせながらガスバーナーブレードを抜いた。ガスバーナーブレードの攻撃はスイセンとは違ってかき消される事なく、ブルームを打撃してゆく。
ブルームはアメイコからキリへと標的を変えるが、ブリンクに阻まれ、ガスバーナーブレードを振るうキリとトゥルー・シーイングのかかったクーロによって倒された。


ブルームが爆発四散すると、その後には一枚の硬貨が落ちていた。
拾い上げると、表には「登・勘・疑・残」、裏には「逃」の文字が書かれていて、中央に四角い穴が空いている。
「これは忍者富本銭だな」
杯片手に飲み屋からのそりと出て来たディアンが言う。
「ミンカイに伝わる忍者のアーティファクトに違いない」
「うーん、レジェンド・ローアしてみると、忍者以外が持ってても、新月の晩に次の持ち主の忍者の元へ行ってしまうみたいだから、僕達には使えないね」
新月の晩と言えば、奇しくも明日、ミンカイを代表する忍者集団と面会の約束をした日であった。


 軒猿〜Three Monkeys on the Roof〜


ミンカイを代表する忍者集団、軒猿はその実は更に三つの集団に分かれている。
女性が首領を務める<緑玉の小枝>、一番金本位だと言われる<黒蓮>、ミステリアスな<竜の影>である。

夕刻に示された場所へ行くと、数人の忍者がやって来て、料亭へと案内された。
裏談判という事になると、料亭を使うのがミンカイの伝統らしい。


最初に面会したのは<緑玉の小枝>を率いる近藤・余里という、体格の良い女性だった。
どうやら<緑玉の小枝>は今ミンカイの実権を握っている翡翠の宰相の事はあまり快く思っていないらしく、
前金代わりに昨日手に入れた忍者富本銭を渡す事で、一行に味方する事を引き受けてくれた。


次に面会した<黒蓮>の首領、禿頭の石芭蕉は翡翠の宰相側に雇われた事はあるが、金次第では協力もやぶさかではないとの事で、
不要なマジック・アイテムを二つ程積んで首を縦に振ってもらった。


最後、<竜の影>の首領は細萱・数という、若い男性だった。
<緑玉の小枝>をの近藤余里によると、<竜の影>は元々は翡翠の宰相側に協力していたが、海部・人将という忍者が<竜の影>を裏切って、翡翠の宰相の重用している平安京という異界から来たニンジャ・ソウルを持つ忍者集団についたため、その忍者集団と敵対しているらしい。
更には海部は翡翠の宰相側から天達家の子孫―つまりアメイコを暗殺する依頼を受けたらしいとの噂もあるので、昨日倒した忍者の得物を渡せば協力してくれるのではないかと、一行は腹積もりしていた。

しかしそれと思しきヌンチャクを目の前に出しても、細萱はさも当然という顔をしており、ヌンチャクと同じく海部の持っていた大量のデス・ブレードを渡して協力を取り付ける事が出来た。


 シクツ・イツル


無事、軒猿の全ての忍者集団と協力関係を結ぶ事の出来た一行は、再び坂壁へと戻った。
坂壁の京舞茶屋で、ミンカイ一の大名である四宮都・仙中の弟である四宮都・伊鶴との会合の約束を、
紗弓太夫に取り付けてもらっていたのである。


伊鶴曰く、仙中の配下には翡翠の宰相による支配を快く思っていない大名もいるが、侍である以上主君の命に背く事は出来ないのだそうだ。
それは弟である自分も同じであり、幾ら兄のやっている事が非道であったとしても、手を下す事は出来ない。

「それはこちらで暗殺してくれという事でしょうか?」
「そう取ってもらっても構わない」

そう前置きした上で伊鶴は、仙中は近い内に温泉旅行に行くのだと話してくれた。

「仙中の元部下に、村の焼き討ちなどの悪行に耐えられず、浪人になった者達がいる。今は<九歩>と名乗っている彼らは既に暗殺の準備をしているので、協力したければするといいだろう」


 終了温泉の変


10日後、アメイコとその一行は坂壁から北東に160km程離れた終了温泉にいた。
温泉とは言っても温泉街になっている訳ではなく、四宮都・仙中の別荘の他は10km以上離れた場所に小さな村落がある程度で、温泉デートを楽しみにしていた幾人かは肩を落としたりしていた。



一行は仙中の別荘から少し離れた森の中に潜み、別荘の様子を窺っていた。
昨日別荘へ大名行列が仰々しくやって来たが、その中には仙中はいないらしい事が偵察で分かっている。
翡翠の宰相の配下の、タイフーン・ガードと呼ばれる鬼を何人か護衛としているそうだし、大名行列は囮で仙中本人は移動魔法で来るのではないかと、皆は推測していた。

「そういえば、パラディンとしては暗殺はOKなのか?」
「いつもやってるじゃないですか」
ディアンとキリがそんな会話をしていると、地面からひょっこりと、小型のアースエレメンタルが現れた。
別荘へ偵察へ出していた、ディアンの使い魔である。
アースエレメンタルは昨日よりも人が2人増えたと、報告してくれた。
「やっぱりテレポートで来たか」

念の為その2人が風呂に入っている所をハルフォルがウインド・サイトで覗き、片方が仙中である事を確認する。
そして手筈通りに<九歩>に北から別荘を襲ってもらうと、一行はその隙に南から空を飛んで屋敷に攻め入った。



「南からも討ち入りだ!であえ!」
見張りの叫びと共に、変身を解いたタイフーン・ガードの中型の鬼達や、オーガ・メイジが続々と裏庭に駆けつける。
だがタイフーン・ガードはクーロとリサカが、オーガ・メイジは悪を撃つ一撃をかけたキリがあっという間に屠り、後は順当に通路にすし詰めになった残りの敵を打ち倒して行けば、仙中に辿り着ける。その筈だった。

「次は中だ…!あれ、キリ…!?」
外を片付けて皆が一息をつこうとしていたその時、キリは既に別荘内部に突撃していた。ブリンクで壁を抜けて、単身で。
内部で待ち構えていたソーサラー鬼、アース・ヤイがエレメンタル・ブラストを打つが、レジスト・エナジーをかけていたキリには効かず、キリはどんどん突き進み、風呂から上がった仙中が戦支度を整えている奥の間に、壁を抜けて侵入した。
「ドーモ、仙中=サン。パラディンです。オイノチチョウダイ!」

突如内部に現れた不逞の輩に、仙中の護衛陣は慌てふためくと、外へ向かうのを止めてキリへ一気に殺到した。
ブリンクしているとは言え、囲まれたキリはかなりの手傷を負うが、そこはハルフォルが窓から入ってフライ・バイ・ヒールし、持ちこたえる。
皆も最初はキリの行動に驚いたが、ハルフォルもいる事だしこれはこれで内に入りやすくなって良かったかもしれないと思っていた。
仙中側に魔法使いがいた事を思い出す羽目になるまでは。


「飛んで火に入る…とは斯くの如くなりや」
奥の間にいたもう一人の男が、裏庭側との導線を塞ぐように、ウォール・オブ・フォースを立てた。
「よくやったぞ!ヒロシ!」
「これで奴らは入って来れませぬ。回復しに来る小五月蝿い虫もなし」
「そこの者をやってしまえ!」

廊下から入ろうとしていたクーロ達にも、奥の間との間に力場の壁が張られた光景は目に入った。
「おい、分断されたぞ!」
「上から回ろう!中庭があった筈だ!」
クーロとリサカが空を飛んで中庭に回ると、丁度その渡り廊下にはキリから距離を取ろうとした仙中がいた。
上空から一閃、クーロが斬り掛かるがディスプレイスメントで避けられる。
「ヒ、ヒロシ!こちらからも何が来たぞ!」
ヒロシと呼ばれた呪文使いの侍は中庭側にもウォール・オブ・フォースを張ると、仙中に言った。
「殿、此方へ !移動魔法で逃げますぞ!」


次の6秒間に一行の脳裏をよぎった思考はどれ程の物だったろうか。
瞬時に仙中を逃さない戦略を組み立てると、一行は行動を開始した。
まずディアンがロゼッタを屋敷の反対側の軒まで移動させ、ハルフォルが道すがらロゼッタにトゥルー・シーイングをかける。
「そしてこれで終りだ!」
万全のサポートを受けて、ロゼッタはディメンショナル・アンカーを仙中に放った。
「まさかここまで曲者が回り込んで来るとは!?」
「殿!これでは逃げられませぬ!ここで食い止めますぞ!」


逃げようとする仙中を止めたことで、戦いは乱戦の用を呈した。
クーロは屋敷の反対側から屋内に斬り込み、キリも床下から再び姿を現す。
ヒロシは再び軒にウォールを張るがロゼッタに壊され、放置されていたアース・ヤイはリサカを追ってティロ・フィナーレで倒される。

混戦の中でヒロシはキリに組み付かれ、護衛の侍達もクーロに斬り刻まれ、仙中はついに観念したようだった。
裸一貫ながらも気迫を込めて、キリへと懇親の一撃を打ち込む。
だがその刃は、キリの体に届くことはなかった。


 夢見の予言


討ち入りが終った所へ、紗弓太夫からセンディングが入った。
何やら慌てている様子で、こちらへやって来ると言う。

しばらくして紗弓太夫は、坂壁で待機していたコヤとイローリのクレリックを伴って瞬間移動で現れた。
「大変です!平橋次郎さんが鬼達に囲まれているのが未来視で見えました!
 どうか皆さん、このまま聖なる兵器庫へ向かって下さい!」


続く



日程

沿岸丘:8月23日(260日)
シクツイツルとの会合:8月27日
終了温泉でシクツセンナカを暗殺する:9月9日
聖なる兵器庫へ向かう:9月10日(276日)

RP

Dian 0.8
Curro 0.2
Harfowl 0.3
Kiri 0.3
Rosetta 0.9
Risaka 0.4