死というものは、実際に体験してみると、嫌なものだった。何千年も前に私を目覚めさせたはずの結界を、アラズニストが台無しにしたことは、まあ許そう。やつが私の所有物のほとんどが取ってしまったことも、まあ許そうじゃないか。我慢ができないのは、アラズニストが私の研究を利用して 「時のセプター」を探し出し、 私に不利になるように使っただろうということだ。やつは私の研究の成果を、私に使ったのだ。あいつが自分で、これらすべてを見つけられるはずがない!
アラズニストは何か過去を変えたのではないか...と思う。証拠はないが。歴史の流れを変えるために、時のセプターを使ったのではないか?しかしそうなら、私の記憶はそれに合わせて変わっているだろうし、歴史書も新しい時間軸に合うように変更されているだろう。タイム・パラドックスを避けるため、何かを変えたとしても、微妙なものにとどめているだろうが...何かが変わっているような気がする。目覚めてすぐに忘れていく夢を思い出そうとしているような気分だ。
シン・エダッセリルに答えがあるかもしれない。ベリマリアスはカーズーグにまんまと騙されて、大厄災が起こる前に、そこに閉じ込められてしまった。信者たちの報告によれば、シン・エダッセリルの中心部は、今でも世界の終わりの前日を繰り返しているらしい。「クリスティラン」と呼ばれる、力場のドームに囲われ、外側の時の流れから完全に隔離されているとのことだ。
もしアラズニストが何か過去を改ざんしたとしても、クリスティランの壁の中には影響がないはずで、実際に起こった歴史の記録はまだそこに残っているはずだ。それさえ手に入れることができれば、クリスティランの外にある改変された歴史書と比較して、アラズニストが干渉した歴史上のイベントを見つけることができるだろう。
その上で、もし時間を行き来する手段を確保できたら...過去に戻って、アラズニスト襲撃し、私の盗まれた力を取り戻すことができるかもしれない...仮にそれができなくても、殺される前の私に、アラズニストに注意するように警告することができるはずだ。
クリスティランの中に入ることは難しい。しかし、私の開発した儀式を使えば、シャドー・プレーンを抜け穴として使うことができるだろう。インカリアックスが支配する「凍り付いた涙」にある「白死の王冠」で儀式を行えば、次元間の移動により、クリスティランの中に入ることができるだろう。
そして時間移動だが...おそらくカーズーグの奴がカギとなる情報を持っているだろう。奴が作ったサイファーゲートは、ただの大きな飾りではない。上手くすれば、時のセプターがなくても、過去に戻ることはできるかもしれない。しかし、カーズーグに教えを請うなど、私には決してできない。やつから情報を引き出す、なにか別の手を考えなくては。