第八話
英雄たち、ヤマソスを知る
マグニマーに戻った後、すぐにヘイドマーチ邸を訪れた。アラズニストが復活して活動を開始したようだと伝えると、ヘイドマーチは表情を曇らせた。現在パスファインダー・ロッジに所属する最強の冒険者の一団と、連絡が取れなくなっているとのこと。ひょっとしたら、アラズニストの活動となにか関係があるのかもしれない。
ところで、ヘイドマーチはヤマソス教団について調査した内容を知らせてくれた。それによると、ヤマソスはアビスにある「Kingdom of new flesh」という領域にいるクリッポスの王なのだそうだ。クリッポスとは、デーモンと異なる異形の悪魔で、デーモンとは敵対しているとのこと。「現世で罪を犯した人間が来世でデーモンになる」ことを知ったヤマソスは、デーモンとの戦いを有利にするために「人間を人外の異形に変身させる」ことを始めた。こうすることにより、人を輪廻の枠から切り離し、結果的にデーモンに転生する人の数を減らそうと考えているのだ。
マガ・スズールが「マグニマーにも教団のアジトがある」と言っていたが、実際にあるとのこと。イレスパンの巨大な橋の内部には、太古の遺跡がいくつも残っている。それらは今は立ち入り禁止になっているのだが、教団はそれら遺跡の一部「ゲッコー」と言われる場所に住み着いているようだった。
ヘイドマーチからヤマソス教団の壊滅を正式に依頼され、英雄たちはヘイドマーチ邸を去った。
英雄たち、アヤヴァと会う
ヘイドマーチ邸から出たところで、一人のみすぼらしい姿をした女と出会った。貧困街のアンダーブリッジに住んでいるのだろう、ヘイドマーチ邸があるアラバスター区ではあまり見ない服装だった。また、彼女の頭には羊のような角が生えており、両腕にはうろこが生えていた。彼女はアヤヴァと名乗り、英雄たちに協力を求めてきた。
彼女の話によると、彼女の育ての親があやしいカルト集団に誘拐されてしまったらしい。パスファインダー・ロッジに出入りする冒険者なら力になってくれると思って、ヘイドマーチ邸の前で待っていたらしい。よくよく話を聞くと、このカルト集団はヤマソス教団のようだ。アヤヴァは、ゲッコーのことや、ゲッコーの入り口を守っているラミアの幽霊について教えてくれた。父親がさらわれてから、教団員の出入りを見張っていたとのこと。
どのみちヤマソス教団は倒す予定だったから、アヤヴァの父親を取り戻すことに問題はなかった。なお、ユタはアヤヴァの両腕についているうろこが気に入ったのか「嫁になりませんか?」といきなり口説いていた。私は彼女が気を悪くするのではないかと一瞬不安になったが、彼女は上手にユタが言ったことを聞き流していた。
念のためアヤヴァの父親(カリン)の様子を魔法で調べてみた。それによると、彼は机の上に縛り付けられていて、何やら口の中に黒い液体を流し込まれている様子だった。どうも、怪しい儀式に使われているようだ。
英雄たち、ゲッコーに侵入する
アヤヴァの話だと、ゲッコーを守っている幽霊は「時計塔の幽霊」と言われる強敵で、以前はマグニマーの時計塔に住み着いていたらしい。ところが最近、なぜか時計塔からゲッコーに出没する場所を移したとのこと。ここで英雄たちは一計を案じ、透明化の呪文をかけてから侵入することとした。ゲッコーの入り口は地上220ftの場所にあるため、空中浮揚の呪文も合わせてかけていった。幸いなことに、幽霊は透明なものが見えないらしく、襲ってくることはなかった。
ゲッコーの正面入り口は石の壁で封印されていた。壁を破壊すると幽霊に気が付かれることになる。ミリアルが出入り用の隠し扉を発見し、こっそりと中に侵入した。ひんやりと湿った空気は、かすかな腐敗臭がした。部屋の中は暗くて良く見えない。ミリアルが明かりの呪文を唱えると、部屋の中にいた骸骨が動いてこちらを攻撃してきた。骸骨男は手ごわかったが、なんとか倒すことができた。
すると戦闘音を聞きつけたのか、奥の部屋から男が入ってきた。見覚えがある。マガ・スズールだ。マガ・スズールは、何か話しかけようとしたが、以前と違ってヤマソス教団のことを良く知っている英雄たちは、問答無用で攻撃を開始した。マガ・スズールは、これはたまらんと奥の部屋に引っ込む。追っていくと、奥は大きく開いた巨大な空間だった。部屋の北側に底なしの巨大な穴が開いており、その上に鎖でミノムシのようにぶら下げられた人間が4人いた。天井には、壁に手足をついてクモのようにへばりついている人型が4人いて、「この人間たちを落とされたくなかったら降参しろ」と脅迫してきた。
英雄たちは基本的にこの手の交渉はしない。即座に攻撃をしかけて人型を二人倒した。しかし、その間に人質が二人穴の中に落ちてしまった。それでも二人の人間を救うことができた。この日は、救った二人を安全なところに逃がすため、一旦ゲッコーから撤退することとした。
英雄たち、マガ・スズールを捕らえて、アヤヴァの父親を取り返す
数日後、再びゲッコーにやってきた。前回と同じように姿を隠して隠し扉から遺跡の中に侵入する。今回は、隠し扉のすぐ先の部屋で、マガ・スズールとヴァンパイア・ガーゴイル、そしてその手下二人が待ち受けていた。ヴァンパイア・ガーゴイルはミリアルにPolyporphe Plagueにひたした籠手で掴みかかるなどいやらしい攻撃を仕掛けてきたが、炎の壁の呪文などで行動を制限させてうまく退治した。最後は、マガ・スズールが降参して戦闘は終わった。
マガ・スズールによると、ヤマソス教団は彼を除いて全員リドル・ポートに向かったそうだ。教団の団長は、レプトニアという女性らしい。レプトニアは、ルーン・ロードのクルーンを復活させて、彼の力によってPolymorphe Plagueを空気感染できるように改良したいと考えている。そのために、リドル・ポートのクライム・ロードの一人、クレッグ・ジンチャーが持っているTrue resurrectionの巻物を奪おうとしているらしい。
ゲッコーには、レプトニアが組んでいたエリガンタスという男が残したアンデッドが留守番として残されているだけだそうだ。このエリガンタスという男は、Wispering Wayという別のカルトの一員とのこと。レプトニアが持っていた「骨のグリモア」を提供することを条件に、様々な便宜を図っていたらしい。グリモアを手に入れた後は、ヤマソス教団と別れてキーエ・マーガに帰っていったらしい。
マガ・スズールが言っていることが本当かは分からないが、とりあえずアヤヴァの父親について聞いてみた。すると、「変身後の部屋にいる」という。案内された部屋を開けると、異臭が鼻をついた。腐った肉のにおいがする。部屋の中には、体の半分が化け物に変化した人間の男がいた。男の周りには、たくさんのごみが落ちていた。血の付いた服や、靴、なんだかわからない生き物の骨などだった。男は「食べ物をくれ...。腹がすいた...。助けてくれ...。殺してくれ...。」といいながら襲ってきた。
英雄たちは父親を殺さないように気絶させた。この後父親は、シードロン評議会の計らいによって破邪の呪文をかけてもらい、人間に戻ることができた。ついでにマガ・スズールはヘイドマーチに預けた。
英雄たち、ゴンゴリナンを倒す
数日後、ゲッコーの中を調べていくと、レプトニアの個室だったとこに行き当たった。テーブルの上の書面を調べてみると、マガ・スズールが言っていたことは本当のようだということが分かった。調達した船、ジンチャーを襲う日取りなどが分かった。
さらにゲッコーの奥には、魔法陣の中にとらわれていたクリッポスの悪魔が一体いた。この悪魔はカニのような見た目をしているが、人間の手、カニのはさみ、カマキリのカマ、サソリのしっぽを持っている異形だった。Polymorph Plagueの材料の一つに、この悪魔の卵が入っていることを聞いていたので、英雄たちはこれを退治した。その過程でロスが殺され、しかも卵を体内に産み付けられてしまったが、それは後で何とかした。魔法陣の中から外に出れない敵だったのでなんとかなったが、自由に動ける状態で戦ったら危なかったかもしれない。
英雄たち、アヤヴァの神託を聞く
翌日、ヘイドマーチ邸を訪れてことの顛末を話した。「ヤマソス教団の壊滅」はできてないので最初に話した報酬の全額はもらえなかったが、「クルーンの復活の阻止」をする条件で報酬の増額と、一部前払いで金銭を受け取ることができた。
アヤヴァは父親が帰ってきたことを大変喜び、「やっぱりあなたたちが神託の勇者だったんですね!」と話をしてきた。彼女によると、夢の中に山より大きな怪物が現れて街をおそっている様子が見えたとのこと。町には、天をつくような女性の像があったが、彼女はその町がどこなのかわからないようだった。怪物が向かう先には魔法のゲートが開いていて、そのゲートの前にいた勇者たちが、我々の姿に似ていたのだそうだ。
これは、我々が将来「山より大きな怪物」と戦うことになるという予言なのだろうか...。一抹の不安を抱えながら、リドル・ポートへの船旅を行うこととした。
(つづく)