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20191006

第三話

  雨のチャールウッド

 ドワーフたちをゴブリンから救い出した英雄たちは、町で数日疲れをいやしていた。しかし、ゴブリンの洞窟の奥にあった魔法陣が気になるミリアルは、できるだけ早くもう一度洞窟に行くことを主張。それに付き合う形で三度チャールウッドに出発することとなった。
 季節は夏の終わり。あいにく天気が悪く、キャバル川の渡しまで来た時には雨が降っていた。渡し船の老婆は川の水位が上がっていたため渡河を拒否。仕方がないのでその日は雨の中野宿することとなった。翌日は川を渡ることができたが、湿った空気と雨の中の野宿のために何名か体調を崩すこととなった。幸い、アラモスユタの呪文で体力回復ができたため、大事に至ることはなかった。

  ゴブリンの洞窟へ

 チャールウッドを抜けたところでもう一泊し、3日目の夕方にゴブリンの洞窟へたどり着いた。入口に見張りのゴブリンが2匹いた。ミリアルが慎重に近づこうとしていたところ、ロスがずんずんと近づいていって「やあ今日は!」と声をかけてしまった。先週血まみれの戦闘をした人間たちがもう一度やってきたとあって、見張りのゴブリンは大慌てで仲間を呼びに行った。すると、洞窟の奥や、周りの木々の間からわらわらとゴブリンが30匹も出てきた。前回逃げたチーフ・ゴブリンと、逃がしてやったナイト・アイもいる。さらに、肩にカエルのファミリアを乗せた、ウィッチ・ゴブリンもでてきた。ウィッチ・ゴブリンによると、トゲグチ族の代表者はこのカエルで、カエルは人間のやったことにとても憤慨しているとのこと。
 ロスはすかさず、交渉を始める。交渉相手はカエル。通訳はウィッチ・ゴブリン。なんともシュール。交渉は難航したが、最終的に前回の戦闘時にチーフ・ゴブリンから奪った魔法のドッグ・スライサーを返すことと、10GPをゴブリンたちに支払えば洞窟の中に入っていくことを許してくれるそうだ。

  魔法陣へ

 ゴブリンの洞窟の中は、相変わらず糞と残飯で汚かった。そのうえ前回の戦闘時の死骸がそのまま放置されていたので、腐敗臭が強烈に鼻を突いた。ゴブリンには掃除という概念がないらしい。
 前回みつけた魔法陣に、こんどはバルスラクが足を踏み入れ、しばらくすると戻ってきた。彼によると、魔法陣で転移された先には透明な薄い壁で仕切られた部屋があって、壁のこちら側とあちら側にそれぞれ転送元の魔法陣へ帰還するための魔法陣が描かれていたそうだ。今回はこの透明の壁の向こう側に行ってみたかったため、バルスラクは壁を斧で殴って粉砕したとのこと。
 こうして、英雄の一行は、ゴブリンの洞窟から壊れた透明な壁のある部屋へ転移し、そこからまた円形の部屋に転移して、そこで落ち合った。この円形の部屋は、あきらかにゴブリンの洞窟にあった円形の部屋と異なっていた。こっそりと部屋をでると、そこには人工的な通路が。部屋の扉にはタッシロン語で何か書いてあり、ミリアルが言うには「外交官の交渉部屋」という意味らしい。
 私が想像するに、タッシロン時代には争いがおこっても即殺し合いにならないように、魔法の壁(おそらく音声はとおるような仕組みがあったはず)ごしに交渉を行っていたのではないか。そのような魔法が1万年も残っていたのは驚きである。バルスラクが破壊してしまったのは、仕方がなかったとはいえ、残念だった。

  地下の遺跡へ

 ミリアルが斥候となって通路に出た。最寄りの扉で聞き耳を立てると、中から機嫌の悪そうな男の声が聞こえた。なにやら、うまくいかないことがあるようだ。ミリアルが扉をこっそり開けてなかに侵入しようとしたところ、またロスがすっと背後から現れて、いきなり扉を2度ほど叩いた。ロスの行動に、驚くとともに、あきれたミリアルは、そのまま扉から見えないところに身を隠した。扉がほんの1インチ開くと、中から野太い声で誰何された。ロスはなんとかとりなして中に入れてもらうとしたが、部屋の主は黙って扉を閉めると、中から部屋に閂をかけてしまった。
 仕方がないので、通路を別の方向に移動したところ、大きなダブルドアを発見した。構造的に先ほどの部屋と同じ部屋に通じていると思われるため、一旦ここは保留にして通路をさらに奥に行った。すると、別の人間の声がもれ聞こえる扉があった。今度もミリアルが中をうかがおうとするのだが、またロスが割り込んで部屋の中にかってに入ってしまった。
 部屋の中にいたのはロード・キーパーの下っ端3人だった。遺跡の奥からとつぜん知らない美女が一人で部屋に入ってきたので最初は面食らったようだった。が、警戒心が薄いのか話を聞いてくれた。ロスがいろいろと話すうちに、以下のようなことが分かってきた。

  • ここはタッシロン時代の地下の遺跡で、ダブルドアの向こうに宝物庫がある
  • ドーランドというドワーフが、その宝物庫を開けようと試みているが、時間がかかっている
  • 遺跡から地上に出ると、ロード・キーパーのアジトがある
  • ロード・キーパーに参加すれば、食うに困らないだろうと思っていたが、そうでもないのでがっかりしている

 そこでロスが「ロデリック・コーブの自警団の職を紹介しますよ?週給15GPで」と提案すると、ロード・キーパー達は話に乗ってきた。ダメ押しをしようとしたロスが「宝物庫の宝は山分けで」と言い出したあたりでミリアルバルスラクユタが止めに入って行った。ロード・キーパーは、ロス以外に6人の冒険者がいるのを確認すると、「金目のものがあったら、おこぼれもらうくらいでいいよ」と妥協してきた。

  The vaultへ

 ロード・キーパーを加えて10人になった一行は、宝物庫へ向かった。しかし、これまでロード・キーパーとの交渉で音を立てすぎていたのだろう、ロード・キーパーの裏切りを察知していたドーランドが、少し開いたダブルドアの向こうから爆発物入りのフラスコをほうり投げてきた。ミリアルはこれが仕組まれたワナだと思い、ロード・キーパー3人の様子を見るが、呼応して襲ってくる様子はなかった。
 ドーランドはかなり手ごわかったが、やはり多勢に無勢。やがて取り押さえられて、ロープで拘束さえた。所持品を検分すると、羊皮紙に書かれた手紙を持っていることが分かった。

Dolland,

I look forward to your return, and to the wonders you've gathered for me from the vault. Again, you need not fear

reprisals from your fellow Roadkeepers once you return, for the defenses here at Peacock Manor will protect you well.

The magic bag is yours to keep, my gift to you. Best of luck on cracking the code on that door—in the meantime; I'll

continue to seek alternate methods among my contacts in Magnimar for magical solutions. And I’ve a line on

an adamantine pick that will help, if my contact in Riddleport can follow through on her promises. In any event,

we shall talk again soon, I pray!

—C.


 「C」とは誰だろう?ダブルドアの向こうは大きな部屋になっていて、部屋の中央に石で作った小さな建造物があった。見ようによっては誰かの墓のようにも見えるが、これが宝物庫なのだろう。扉は一つだけで、そこにはシードロンを模した鍵がついていた。時計の針のように、長い三角形の金属片が7つ。それぞれの針の先には、タッシロンのルーンが記されている。それぞれのルーンを正しい位置に動かせば、鍵が開く仕組みだろう。組み合わせは、何通りなのだ?
 「こんなの分かるわけない。諦めよう」と、即断したのはミリアルだった。残りもそれに同調して、地下遺跡の行ってない場所をもう少し調べることとした。

  再びThe vaultへ

 ...が、遺跡の他の場所には、ワナしかなかった。ミリアルが器用にワナを発見・解除するものの、無傷ではすまない。また「シャーリーズの墓」と書いてあった部屋では、「仕掛けていたワナを稼働させて攻撃してくる」アンデッドに遭遇し、倒せなくて逃走することになった。やられ損である。
 そんな停滞した状態を打開したのは、なんとこの私、サンディオンだった。ロデリックの家にかかっていた地図をよく見てみると、「SH」の文字の横に、シードロンのマークが書いており、それぞれのルーンの位置も記されていた。この通りにカギを動かせば、扉があるのではないか?バルスラクも「そういえば、『My map. It holds the key.』っていっていたな」と賛同してくれた。
 …果たして、扉は空いた。宝物庫の中は、半透明の靄がかかった空気が充満している。壁にはルーン文字が帯のように書き込まれていて、一定間隔で明るく点滅していた。宝物庫の中には石造りのテーブルがあるだけで、宝箱のようなものはなかった。テーブルの上には「バラケット」と書かれた、剣を飾るのにつかっていただろう木製の置物と、「ルーン破りの籠手」と書かれた箱に入っていた1組の籠手だけがあった。
 金目のものがなかったのは残念だが、この籠手こそロデリックが言っていた「I should have taken the gauntlets」のことに違いない。ここに来た目的は果たせた。
 ドーランドは、縛ったまま遺跡に放置して、彼の運命はロード・キーパーたちにゆだねることにした。せっかくなので、裏切りの証拠の手紙を、目立つところに置いておく。
 そしてそのまま魔法陣の部屋を通り、ゴブリンの洞窟からチャールウッドへ抜け、数日後にはロデリックス・コーヴに無事戻ることができた。

  広場の井戸の下へ

 連れてきた元ロード・キーパー3人をガード・キャプテンのジュリットに紹介した後、次に何をするか相談することとなった。明らかに怪しいのはピーコック・スピリットを信仰している「素晴らしき家」の連中だった。しかし、本拠地であるクジャク屋敷を直接訪問するのはあまり気が進まない。怪しいだけで、疑いをかける証拠は何もないのだ。するとミリアルが「あてずっぽうだけど、井戸の地下に行ってみよう!なんかきっと、ピーコック・スピリットと関係ある気がする」と主張し、全員それに従うこととなった。
 井戸にロープを垂らして下に降りていくと、そこには腰の高さくらいの水が張っていた。ぬるぬるする床に足を取られないように注意していると、水の中から怪物が襲ってきた。この怪物は、ウツボのような体系をした魚型のモンスターだった。特徴的なのは長い舌で、途中から3つに割れている。そしてそのうち2本がそれぞれショート・ソードとトライデントを持って、武器攻撃してくるのだ。強敵であったが、なんとか倒した。

  地下の遺跡

 しばらく水たまりの中を歩いていると、地下の遺跡のような場所にたどり着いた。いろいろ調べてみると「浴場」や「トイレ」などが見つかった。遺跡のはずなのに、我々の技術よりも進歩したもので作られているように見える。ここで我々は、ホーンド・ファングの頭目「ゴールド」と出会った。
 ゴールドは、本名をジャナ・ギルダースリーヴスといった。ロデリックス・コーヴの元ポート・ガバナーの娘で、親が横領の罪に問われたあと、町にいられなくなって、親子ともどもリドル・ポートに逃げていたらしい。最近両親がなくなったことをきっかけに、ロデリックス・コーヴに戻ってきた。宿屋の地下の貯蔵庫に隠し扉があることに気づき、地下の古代遺跡を発見した。そしてその遺跡を根城に、ロデリックス・コーヴのチンピラ達を集めて、今のポート・ガバナーに対抗する組織を「ホーンド・ファング」として立ち上げていた。
 ところが、ある日、地下遺跡の魔法陣を通って、モザマーが現れてから事態は一変した。モザマーは、白い肌、赤い目、割れた牙だらけの口蓋、3本指の手、2本指の足を持った化け物で、ゴールドとその手下を簡単に制圧してしまった。いまでは、ホーンド・ファングはモザマー配下の犯罪集団になり下がっている。
 ゴールドは、2か月前に仲間が6人変死したこと、その犯人が「素晴らしき家」のコーステラではないかと考えていた。モザマーも、「素晴らしき家」が目障りらしく、取り除きたいと考えているらしい。そこで、英雄たちが「素晴らしき家」とことを構えるなら、(モザマーの意向にも沿うので)協力することを約束してくれた。

サンディオン・メモ)

ここは、嘘である。本当は、ホーンド・ファングの真の支配者、モザマーと戦闘になり、敗北した。

魔法は何も効果がなかったし、武器の攻撃は一度も傷を負わせることができなかった。完敗だった。

アラモスユタ、そして私の3人は逃げおおせたが、他は倒されて捕まってしまった。

そのあとは、ミリアルがモザマーに取り入るなどして命だけは助けてもらったらしい。

ホーンド・ファングの一員であることを示す、焼き印までいれられてしまったとか。

しかし、私の英雄譚にそのようなエピソードは不要である。


  クジャク屋敷の調査

 ゴールドからのアドバイスに従い、クジャク屋敷の見取り図を取り寄せた。また、「素晴らしき家」についての情報収集をすると、以下のようなことが分かった。

  • 「素晴らしき家」の修行僧は、武術の鍛錬をしており、頭を丸めている
  • 初心者僧侶と、上級僧侶がいる。上級のほうが強い
  • 教義は、「日々の生活と恵に感謝」するものであり、とくにアクの強い宗教ではなさそうだ
  • 夜間、猫くらいのサイズのクモのような化け物が、館の屋根や壁をうろつくところが目撃されている
  • ホーンド・ファングの6人を殺したのは、コーステラだと思われる。使ったのは、「柄だけで刃のない」レイピアだった。これが、「バラケット」なのか?

 というわけで、クジャク屋敷へ忍び込んで、保管されているだろうバラケットを奪取することとした。

  クジャク屋敷へ

 見取り図を見ると、館へは2階の窓から直接忍び込めることが分かった。高価な魔法の品であることだし、保管するなら2階だろうと推測した。作戦は以下。

  • デテクト・マジックで強力な魔力がある場所を見定める
  • もし魔力を感じられなかったら(鉛などで包んでバラケットを隠していたら)2階に忍び込み、各部屋を探索
  • かってに扉をノックするのは禁止

 デテクト・マジックでは残念ながらバラケットの場所は分からなかった。仕方がないので2階に忍び込むが、途中、クモの化け物に襲われてしまった。バルスラクが噛みつかれて若干怪我をしたが、特に大きな音を立てることもなく退治できた。その後、2階で見張りに立っていた僧侶2人を気絶させ、部屋を片っ端から調べることにした。
 最初に開けたのは、どうやらコーステラの部屋だったらしい。寝間着を着た中年女性が、「何事ですか!」と詰め寄ってきた。ここでミリアルが機転を利かし、「バラケットはいただきましたよ」とカマをかけた。「バラ. . .何のことですか!」とシラを切るコーステラだったが、そのとき彼女の視線がちらと横に動いたのを見逃すミリアルではなかった。「隣の部屋だ!」とあたりを付けると、ユタに頼んでコーステラの部屋の扉を押さえつけてもらう。扉から出られないコーステラは、そのあと何もできず。最後は泣きだすしかなかった。
 隣の部屋の鍵は頑強で、ミリアルでも開けることはできなかった。仕方がないのでバルスラクが斧で扉ごと破壊した。扉を壊している間、音を聞きつけて新たに僧侶2人がやってきたが、こちらも殺さずに無力化させた。また、赤い顔をした悪魔のような男が一度現れたが、カラースプレイの呪文をかけた後、誰も呪文にかからなかったので、かなわないと悟ったのか透明化の呪文をかけて逃げて行ってしまった。
 扉を開けた後、バルスラクは鉛でできた小箱をひっつかむ。と同時にかかっていたワナが発動するのだが、それに耐えて、一同は館から逃げ出すことに成功した。地下の遺跡に隠れて入れば、しばらく見つかることはあるまい。

(つづく)

  ロデリックス・コーヴの皆さんに聞いてみました。

  • Aさん、人間:「え?ミリアル?クジャク屋敷に泥棒に入ったらしいね」
  • Bさん、人間:「ロス?泥棒だったんだってね!人は見かけによらないねぇ」
  • Cさん、エルフ:「...そういうことですか...。これはちょっと、私考えますね」
  • Dさん、人間:「リーリア?あ、ホーンド・ファングのミリアルの一味だったんだってね」
  • Eさん、ドワーフ:「バルスラク?ええ、命の恩人です」
  • Fさん、人間:「アラモス?泥棒には見えなかったんだけどね」
  • Gさん、人間:「ホーンド・ファング?もう、どうでもいい。早くモザマーと縁を切りたいよ」
  • Jさん、人間:「タウン・ガード修行中です。がんばるぞ!」