!!第4話「異端審問」   !前回のあらすじ Wordstoneを破壊され、デーモンに蹂躙されたケナブレスでカルティスト達が邪悪な儀式を行おうとしていることを知ったサールディン等Order of the Righteous Might(以下OotRM)は生き残ったクルセイダー達にこの事を知らせるとともに自分たちも儀式の行われる場所、Gray Garrisonへと突入した。 砦の最上階でWordstoneの欠片がナインドリアンクリスタルの檻の中に囚われ、紫に染まりゆくのをどうにか阻止したOotRMだったが、伝説の魔女エイリール・ボーレシュの出現により窮地に。 しかし、魔女の手には渡さないと決意したサールディンの一撃がWordstoneの欠片を砕くとそこから強力な光があふれ魔女を撃退し、サールディン達は安堵の中意識を失うのだった。    !拷問 日の当たらない薄暗い空間に苦痛に耐える叫び声が響いていた。声の主はサールディンで彼はティーフリングとしての特徴である鱗や羽毛を一つ一つ剥され、むしられていた。サールディンを攻めたてているのはビグルスという男で後ろに控え指示を出すリーダー格のリオトールという人物の忠実な部下という感じだった。さらにその場にはもう一人ハーフリングの女性レダーもいたがこちらは目の前で行われている陰惨な行為に抵抗があるようだった。    Gray Garrisonでの戦いの後、OotRMの一行が目を覚ますとそこは牢獄だった。そしてそこへやってきたのがリオトール等であった。伝説的なインクィジターである彼は問答無用でOotRMをデーモンの手先と決めつけ、今回のデーモンの襲撃に関与したとして拷問し、自白を強要してきたのである。 サールディンがレイオンハンズを使いパラディンであることを示す等してもリオトールは全く聞く耳を持た無かった。さらにどうやら一行には強力なマインドブランクがかかっているらしく呪文による取り調べもできないという状態であったため拷問は連日行われた。 その間水も食料も一切与えられなかったが不思議なことに一行は誰一人不調をきたさなかった。    どうにか正当な手段でこの状況を打破しようと努力するサールディンやペンテシレイアだったが、取り付く島もないリオトールの態度に考えを変えようとしていた。しかし、脱出しようにも装備もなくまた鍵開けの技術を持つオーディーが閉所恐怖症のため役に立たないとあって一行は困り果てていた。 ようやく救いの手が差し伸べられたのは目を覚ましてからおよそ一週間後のことだった。    !弁護士 OotRMを牢獄から救い出してくれたのはイーグルウォッチ騎士団の分隊長から団長へと昇進したイラベスだった。拷問の最中に現れた彼はリオトールを激しく糾弾し、傷つき疲れた一行を外へと連れ出してくれた。    久しぶりにまともな休息をとって落ち着いたOotRMはイラベスからいろいろと聞くことができた。 それによるとあの戦いからすでに16日も経過していた。あの日サールディンがWordstoneの欠片を砕いたとき、同時に他のWordstoneからも光が放たれデーモンたちは撃退されたらしい。そしてそれ以降デーモン側に目立った動きは今のところ無いとのことだった。 それから今後のこととして一行には依然デーモンの手先という容疑がかけられており、数日後にケナブレスを訪れる予定の女王ガルフリー直々に異端審問が執り行われる予定だということも聞かされた。    審問の日までOotRMの面々はそれぞれ身の潔白を証明する術を求めて精力的に動き回った。謎のマインドブランクを解除しようと試みたり、あの日起きた出来事について詳しく知るためにWordstoneの成り立ちを調べたり、儀式を行っていたハーフエルフのウィッチにスピークウィズデッドしたり。 結局これらのことについて特に成果は無かったが、デーモン襲撃の際に助けた人々が証言することを約束してくれた。また、呪いにかかっていたガドが再び現れ、一行の弁護を申し出てくれた。謎の多い人物だが(いつの間にか呪いも解けているし)、弁護士のスキルも持っているらしい。 一行はこの申し出をありがたく受け、審問の日を迎えるのだった。     !異端審問 女王ガルフリーは噂通り、とても100年以上生きているとは思えない若い容姿をしていた。彼女を裁判長として異端審問は始まった。まず、リオトールがOotRMにかけられたデーモンの手先だという嫌疑について説明し処罰を求めた。一方OotRM側の弁護士ガトはOotRMによって救われた人々を証人として喚び、一行の潔白を印象付けた。するとリオトールは一行にマインドブランクがかかっていることを指摘し、後ろ暗い秘密があるためだと主張した。 ここで女王は後ろに控えていたアアシマールのウィザードにマインドブランクの確認及び解除を命じた。名をアリティアンというそのウィザードは女王とともに長きに渡ってデーモンと戦って来た強力な魔法の使い手で何とディスジャンクションを唱えたが、驚くべきことにそれでも解呪は成功しなかった。    互いに決定打に欠ける議論の後、OotRM側は最後の手段としてアイオメディのヘラルドを招請してほしいと女王に頼んだ。サールディンは召命を受けパラディンになる際アイオメディのヘラルドに会っており、彼(彼女?)にアイオメディのパラディンであることを確認してもらえればこれ以上ないOotRMの潔白の証明になるだろうと言う考えである。しかし、女王はこの願いを拒否し代わりに剣を抜いて言った、ヘラルドではなく女王自身が神より授かった悪を討つ必殺剣でサールディンを攻撃すると。彼女の必殺の剣Sword against injusticeは悪のみ傷つけるのでこれで無傷なら無実ということらしい。かなりの無茶苦茶な沙汰にペンテシレイアは反対したが、当のサールディンがこの提案を呑んだため女王の剣は振るわれた。    硬質な金属音が響き渡り、首を切り落とす勢いで薙ぎ払われた女王の剣はまるで見えない壁でもあるかのようにサールディンを傷つける事無く弾き返された。 この結果を受けて女王はなお不服そうなリオトールに念を押しつつ、OotRMに対して無罪の判決を言い渡した。    !秘密会談 異端審問のあった日の夜、無罪を勝ち取ったことを喜ぶOotRMの許を密かに訪ねる者があった。それはアリティアンだった。彼は女王がOotRMと内密に会いたがっている旨を一行に伝え、一緒に来て欲しいと言った。同意した一行がグレーターテレポートで跳んだ先には女王と二人の風変わりな人物がいた。 一人はリリーと言って本体はどこか別の場所に居て霊体だけをこの場に送っていた。もう一人は悪臭を放つ人物でファロンといった。実はラオツェンは異端審問の準備に奔走していた時にこのファロンという人物がデーモンの残党を一撃で屠る姿を目にしており、その魔法と剣を組み合わせた技について彼から軽く手ほどきを受けていた。    女王はまずOotRMがWordstoneの欠片を砕きデーモンを撃退したことを英雄的行為だとして一行に感謝の言葉を述べた上でリオトール達に拷問された際の損傷をリジェネレーションの呪文で治癒してくれた。そして一行にデーモン襲撃時に体験したことを話すよう求めてきた。 話を聞き終わると女王はWordstoneはその力をOotRMに託したのだと言った。光の放出を受け湧き上がる力、謎のマインドブランク、囚われていた際に飲食不要だった事等はアーティファクトであるWordstoneから力をもらった事でOotRM自体がアーティファクトの様なものになっているためだと言うのだ。 さらに女王は一行に共にデーモンと戦って欲しいと言ってきた。この申し出はサールディンやペンテシレイア等クルセイダーに加わることを夢見てきた者たちには願ってもない話であり当然承諾した。    より実務的な話に入る前に女王は会談にもう二人参加者を呼んだ。現れたのはデーモンハンターのエルファスと能力はあるが空気は読めない魔法使いアラバシュニアルだった。エルファスはまだ呪われていたが、女王が解呪し会議が始まった。その内容はSword of Valorを取り戻すというものだった。 Sword of Valorは剣という名ではあるが実際の形状は旗で広範囲にフォービダンスのような効果を及ぼす強力なアーティファクトらしい。かつて城塞都市ドレゼンという街がこのアーティファクトによって守られていたが卑劣な裏切りによりドレゼンは陥落し、今はあのアポナヴィシャスの支配下にあるという。女王はSword of Valorを取り戻し、失われたWordstoneのせめてもの代わりにと考えているようだった。そして、女王はOotRMに真の英雄になって欲しいと言った。 OotRMはWordstoneに力を託された存在だが今はまだ多くの人々にとって怪しいティーフリングの集団でしかない。しかし、デーモンの支配下からSword of Valorの奪還に成功すれば人々に真に英雄として認められる。そのような英雄の存在を以てすればクルセイダーの士気を高め、この難局を乗り越える事が出来ると女王は考えているようだった。    他にも女王との会談でいくつかのことが分かった。ケリアンの持つ謎の本がアズラント時代の神と戦うためのアーティファクトであることやかつてのアルシェイルの働き、ラオツェンの見たヴィジョンに出てきたデーモンロードキラーの異名を持つデーモンロード、ノティクラ、さらにはケリアンの師と同じ名を持つ行方不明のサーレンレイのヘラルド等。はっきりとしたものではない情報が多かったがそれでもOotRMにとって実り多い会談であったことは間違いなかった。    !進軍 ドレゼンはケナブレスの北に位置している。強力なマリリス、アポナヴィシャスの支配領域だが、今現在デーモンの主力は南のネロシャンに向けられており残ったデーモンの数はそれほど多くないと予想される。それに対しクルセイダー側はエルファスを総大将とする全部で五つの部隊からなる軍隊をSword of Valorの奪還のため差し向けた。 その中でOotRMはイラベスを隊長とする一番隊に配属されていた。一番隊には他に地下で会ったモングレルマンや女王とともにケナブレスに来たバードのヌーラなどが配属されていた。 OotRMを拷問したリオトールもアラバシュニアル率いる五番隊に参加しており、ペンテシレイアは出陣前に彼との関係を改善しようと試みたが全く話にならなかった。かろうじてレダーが少し話を聞いてくれたが、何故かペンテシレイアはオーディーとラオツェンの内偵を引き受けることになってしまった。    ケナブレスを出たドレゼン奪回軍は西セレン川に沿って北へ向かった。一日目は村落跡に泊まり、二日目のビラレスの渡しにてドレゼン奪回軍は初めての戦闘となった。 ビラレスの渡しにはクルセイダーの拠点があったが今回のデーモンの襲撃で落とされたらしく、ティーフリングとデスカリのカルトによって支配されていた。 相手にデーモンがいないため露骨にやる気のない総大将エルファスに若干不安を感じたが、そのほとんどがそれなりの腕のパラディンで構成される奪回軍は実際かなり強くこの戦闘に大した被害もなく勝利した。拠点にはクルセイダーの生き残りが捕虜にされていて助けた彼らから情報も得ることができた。 それによるとこの拠点にいた敵はキーパーズキャニオンにいる部隊の先遣隊との事だった。    とりあえずその日はビラレスの渡しで休むことにした奪回軍だったが、その夜ちょっとした事件が起きていた。気づいたのは目敏いペンテシレイアだった。 何やら同じ一番隊の仲間アーロンの様子がおかしい。最初は警戒していたアーロンを説き伏せ話を聞くと彼は元薬物中毒で今はやめたはずのクスリShadowbloodが彼の荷物の中に入れられていたのだと言った。誰が何のためにそんなことをしたのかは不明だがほうってはおけないのでエルファスに報告し、OotRMは警戒を強めたのだった。    翌日、オーディーは一番隊の仲間カリアードと共に本隊に先んじてキーパーズキャニオンの偵察に来ていた。終始無言な二人の目前にはティーフリングとドレッチからなるデーモン側の部隊が駐留していた。偵察から戻った二人の報告を受けたエルファスは昨日とは違いやる気を出して全軍に出陣を命じた。 ドレッチは低級なデーモンだがスティンキングクラウドが非常に厄介で奪回軍は特に序盤の内これに苦しめられた。しかし、やがては地力で勝るクルセイダー側に形勢は傾いていき、敵リーダーのインキュバスを打ち取ると戦いはクルセイダーの勝利に終わった。だが、昨日とは違い大した損害なしとはいかなかった。この戦いで奪回軍は四番隊の隊長タークスを失ったのだ。 その結果イラベスが一番隊の隊長から四番隊の隊長へ異動になり、空いた一番隊隊長にはサールディンが選ばれた。 また、敵のリーダーは指令書を所持しておりそこから裏切り者のアンチパラディン、サウントン・ヴェインがドレゼンを守っていることが判明した。    !Worldwound 西セレン川を渡りWorldwoundへ侵入して以降ドレゼン奪回軍の足取りは重くなっていた。単に地形が悪いだけでなく、日の光が弱くなり時折凍った目玉や結晶化したイナゴが降ってくるなどの通常では考えられない天候がその原因である。夜も普通なら道標となるはずの星空が全く一定せず、むしろ不安を掻き立てていた。なおWorldwound内部で育ったOotRMだけは当たり前だが特に気にしていなかった。    そんな行軍をしていた四日目の夕方、奪回軍の進行方向に古びた教会が現れた。エルファスの指示でOotRMとヌーラが調査に向かうと入り口でガーゴイルに襲われた。一行は魔法の武器を持っていないためかなり苦労しつつこれを撃退し中へと足を踏み入れたのだった。    続く {{ref_image 行軍ルート.png}}