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第9回セッションログの変更点

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!!謎の手記
 精神病棟から脱走したヤバイ連中が街を闊歩している。
 要注意人物は6人。伝え聞いている特徴を記しておく。
 
 ・ペットに馬乗りになるやつ
 コウモリが苦しそうに鳴くので見ていて辛い
 
 ・頭の中に6人いるやつ
 7人目が居るとかいないとか
 
 ・突然歌いだすやつ
 居なくなったイマジナリーフレンドを探してるらしい
 
 ・描いた絵が本物になると思ってるやつ
 どこにでも落書きするので移動ルートがわかりやすい
 
 ・手斧を振り回すやつ
 シンプルに危ない
 
 ・意味の分からないことを呟き続けるやつ
 自作の新言語らしい
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 この日連中は衛兵の詰め所に押し入り不意を突いて1階に詰めていた人員を皆殺しにすると、最上階にある衛兵隊長の部屋に突入してきた。
 私は気配を察知した隊長に促され隠れていたお陰で難を逃れたが、隙間からずっと、そう、私を隠してくれた隊長が頭をカチ割られるところもずっと、一部始終をただ震えて見ていたんだ。
 
 一人が隊長と戦っている間、他の奴は壁にかかった姿見を見て「またお前か!今度こそ殺してやる!」と喚いたかと思うと叩き割ったり、水がめを覗き込んだと思ったら蹴り倒してから、「偽スカムめ!スライムが化けてやがった!」などと喚いていた。
 
 一通り暴れ終わると連中は下の書庫からもってきた資料と、隊長のデスクから書類を漁り始めて何かしら調べているようだった。
 連中が特に反応を示したのは4回、まずは本屋The Revelations of Haliの債権書類。
 経営がうまく行っておらず税の支払いを大分滞納していたらしく、財産差し押さえの仕事が来ていたようだ。連中はそれを見て「...権力者による言論の弾圧...圧政から解放をしなくては…」と話していた。
 
 次に先代市長の診療記録と思われるもので、投薬の記録を熱心に読んでいたかと思うと「Dr.Clymes Prett......先代領主に毒を盛っていたのか......そういえば地下に幽霊がいたな......死んで当然だ...」といったつぶやきが聞こえてきた。
 以前ここに診療所が併設されていたころDr.Prettにはお世話になったことがあるが、人のいい町医者だった。遠方の親類に乞われて転居していったはずだが、彼の身に何か何かあったりはしまいだろうか。
 
 3つ目は連中自体の捕縛記録だろう。Silverwagonという地名が漏れ聞こえてきた。
 
 それから市長の亡き母Nemiriaのカルテ。
 急な病で亡くなったそうでアイリスヒルの地下墓地に埋葬されたはずだ。
 読みながら連中はしきりに怪しい、怪しいと呻いていた。
 
 最後に隊長に宛てたと思われる手紙。
 「......メリゼン......またこいつか...ころさねば......」
 メリゼン氏といえば市長の秘書の名前だったはず。有能だと聞いている。
連中は金目の物を懐にしまいながら市長の館に乗り込んで印章指輪を奪う算段を始めたようだった。
 連中は金目の物を懐にしまいながら市長の館に乗り込んで印章指輪を奪う算段を始めたようだった。
 
 危険を知らせなければならない。私は未だ震える脚を押さえつけ詰め所を後にした。
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 途中危うく連中と鉢合わせしそうになったが、広場の銅像に向かって「Nemiria!お前は死んだはずでは!」と喚いていたのでかち合う前に察知できた。
 
 市長の館アイリスヒルに先回りした私は市長の留守を守るメリゼンに連中の襲撃計画を伝えた。
あわただしく迎撃体制を整えていると正面玄関を激しく叩く音が響く。
 あわただしく迎撃体制を整えていると正面玄関を激しく叩く音が響く。
 数秒の沈黙ののち屈強な警備員のクル氏が小窓を開けて凄んだ。
 「お引き取りください」
 「いいから開けろ......ぶち殺すぞ......」
 クル氏は首を振りながら小窓を閉じると武器を構え次の行動を待つ。
 一同かたずをのんで扉を注視していると外からバキバキと生垣を踏み越える音がしたので警備員たちは外に出て番犬と戦ってる下手人に向かっていった。
 
 私は奥の部屋にいる  メリゼン氏のところに連中が来たことを伝えに走った。
 後ろでクル氏の頭が斧でカチ割られている様子が視界の端に映った。
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 間もなく連中が乗り込んできた。
 メリゼン氏と私は顔を見合わせた後、若干引きつった顔でにこやかに対応する。
 「ようこそいらっしゃいました。ワインはいかがでしょうか?」
 連中は怪訝な顔をしたのち、何人かはテーブルのグラスを取った。
 これが最後の策だ。このワインには睡眠薬を盛っている。たのむ全員飲んでくれ。
 結果、3人しか飲まなかった。もうだめだ、覚悟を決めるしかない。
 私は懐に忍ばせたナイフを強く握った。
 
 ワインを飲んだ3人のうち、絵を描くやつがぐらりと崩れ落ちた。
 それを合図に連中は一斉に襲い掛かってきた。
 斧を持ったやつも幸い飲んでくれたと希望を持ったのも束の間、どうも利きが弱い。
 少しふらついたかと思ったらつぎの瞬間、メリゼン氏の肩の上にはもう潰れたスイカしか乗っていない。
 「ヒィッ」
 私は短く悲鳴を上げ、その先に逃げ道が無いことを知っていながらも連中に背を向けた。
 が、次の瞬間後ろから衝撃を受け、見下ろすと腹から槍が突き抜けている。
 槍は引き抜かれ、私が倒れると連中は背後で勝鬨を上げた。
 
 次は隣の倉庫に行くのだろう。連中が行く先々で略奪を繰り返していることは知っている。
 あそこには一つ罠を仕掛けた。私はもうすぐ死ぬだろうがせめて連中に一矢報いたい。
 
 爆発音がする。うまく罠に引っ掛かってくれたようだ。ざまあみろ。
 なるべく大きく被害が出ているといい。もう目がかすんできた。私はここまでのようだ。
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手記はここで途切れている。

以前この地であった出来事だろうか?
他の資料で窺える事情とはどこか違うようにも思えるが。
歴史というものはいつも勝者が作るものだ。
あるいはこの手記は……?
いや、憶測で物を言うことはやめよう。
その判断をするのは私の仕事ではない。